「群盗」ユン・ジョンビン監督“カン・ドンウォン、どこから撮っても全部かっこよかった”

OSEN |

映画「群盗:民乱の時代」(以下「群盗」)の厳しい後半作業で結膜炎を患っているというユン・ジョンビン監督は「思い切って面白い映画を作ってみようと決心したようだ」という言葉にサングラスを外し「面白くて愉快に作ろうとした」と答えた。

朝鮮後期、貪官汚吏(不正を行い私利私欲を貪り、私腹を肥やす役人)が幅を利かせる腐敗した世の中を覆す義賊らのアクション活劇「群盗」。自身の映画の同志である俳優ハ・ジョンウと息を合わせた4番目の作品で、夏の繁忙期に公開される大作だ。関心が集中する中、いわゆる夏の韓国映画4大作の中で一番先にベールを脱いだことにプレッシャーはないのかという質問に帰ってきた答えは「全くない」だった。

自身のことを「帰納的に考える人」と紹介したユン監督は「ハ・ジョンウがスキンヘッドになったらかっこいいだろう、そしてそのビジュアルをストーリーで説明できればいいだろうと思ったし、その人に損害を与える人が悪党になった」と映画の始まりを回想した。彼は映画について「ユン・ジョンビンの『群盗』ではなく、ただ『群盗』として観て頂きたい」と言った。

「『ジャンゴ 繋がれざる者』『グッド・バッド・ウィアード』?ハハハ」

「もともとウエスタンジャンル自体が好きなわけではなかった。群盗を題材に映画を準備したため盗賊の群れが馬に乗るシーンが登場したし、ドルムチ(ハ・ジョンウ)の家も彼が白丁(屠殺を生業とする者)だったため農民と離れて暮らす荒涼として孤立した感じだった。ビジュアル的にウエスタンの感じがあったこうなった以上露骨に見せようと思った。音楽もマカロニ・ウエスタン風が人々に与える興奮のようなものがある。そういうものを最初から騙さず見せようと思った」

公開された映画を観てキム・ジウン監督の「グッド・バッド・ウィアード」、クエンティン・タランティーノ監督の「ジャンゴ 繋がれざる者」「キル・ビル」を思い出した人が多い。そんな比較についての考えを聞くと「必ず出るだろうと思った。古いジャンルで、そういう要素があるので。ところで、それは別に気にしない。撮影直前に『ジャンゴ 繋がれざる者』が公開されて見たが、善悪構図など似たところがあるだろうと思った。別に気にしない。だからといって僕がやりたいことを除けるのはあり得ない話だろう」と淡々と答えた。


「ナレーション、好き嫌いが分かれるだろうと覚悟していた」

映画の中で使われたナレーションも話題になっている。ゆっくり映画を説明してくれる聞き慣れた声。好き嫌いが分かれるが、監督のブラックコメディーの要素のようにも感じられる。これについての解明(?)を要求した。

最初にナレーションを書こうと思った理由は、台本の草稿を書いてみたら、前半が話の密度や緊張が一番乱れる部分で、ドルムチがドチになり、チョ・ユン(カン・ドンウォン)が悪事を働き、後で二人が再会するまでのシーンは観客が見たがる部分ではない思った。速く展開させるべきだったが、あまりにも話が多かった。どうやって効率よく減らそうかと悩んだ。モンタージュで解決するには膨大だった。ナレーションを使おうと思った時に不慣れな感じがあるだろうともちろん予想した。好き嫌いが分かれるだろうとも思った。それでも大きな脈略の中で全ての人に話を迅速に理解して頂きたいと思った」

「カン・ドンウォンにのみ反射板を?そんなはずないでしょう」

「もしかして、他の映画で悪役として出たカン・ドンウォンを見て残念に思ったのだろうか。“完璧なカン・ドンウォン”を実現したと思う」と言った。カン・ドンウォンには特別な照明(?)を使ったのではないかという一部の笑えない疑惑についても話した。

「カン・ドンウォンを映画で見て悪役をしてもとても素敵だろうと思った。悪役としてカン・ドンウォンをきちんと作ってあげたいと思った。それでハ・ジョンウのスキンヘッドから映画を構想した時、台本が出る前にカン・ドンウォンに会ったし『こういう映画だけど、悪役をするととてもかっこいいと思う』と言ったら『後で台本を見せてください』と好奇心を見せた。それで後から台本を渡し、出演することになった」

映画の中でカン・ドンウォンはそれこそ美しい悪役で、これまでのカン・ドンウォンとはまた違った魅力で見る人の視線を引き付ける。女優に劣らない華やかさもある。これに「一部では違う照明を使ったり、反射板をもっと使ったのではないかという話もある」と言うと、ユン監督は「そんなはずないだろう。絶対に違う」と答えながら笑って見せた。

「群盗の方の民は野生的で荒いが、チョ・ユンは両班(ヤンバン:朝鮮時代の貴族)でそう見えたと思う。照明を別のものをつかったり、反射板をもっと使うはずないでしょう。ハハ。もちろん女優に反射板などで気を使うことはあるが、カン・ドンウォンにはそんなことはなかった。テスト撮影する時に感じたが、正直どこから撮っても全部かっこよかった。俳優たちは普通撮る角度によって素敵だったり、そうでなかったりするが、彼は全部かっこよかった。そんなことは避けられないものだ」

ハ・ジョンウ、イ・ソンミン、マ・ドンソク、チョ・ジヌンとカン・ドンウォンの対決。「『演技派軍団 VS スター』の感じも率直に言ってある」という言葉に彼は「僕の観点から俳優を見たとき、一度もカン・ドンウォンをスターだと思ったことはない。非常にいい俳優だが、ビジュアルに長所が隠れた感じというか。俳優としてルックスのせいで過小評価される部分があると思った」と自身が思う俳優カン・ドンウォンについて説明した。ユン監督が一番好きなシーンはカン・ドンウォンが髪を下ろして濃い霧の中で対決するシーンだ。「後でカン・ドンウォンにもしかしたらシャンプーのCMが入ってくるかもしれない」という冗談にユン監督は「映画のシーンを使ってください」と冗談を飛ばした。

「サイコパスの存在は信じられない」

ユン監督は、サイコパスの神話を信じなかった。これは、彼がチョ・ユンという人物をワケありの悪役として描いた理由だ。劇中で両班のチョ・ユンは民を搾取し、群盗と対立する悪役だが、なぜ彼がそんなに悪辣な行動をするしかなかったのかを時間をかけて説明している。観客が彼の悲しい人生を覗きみた時、同情心と切ない気持ちが生じるはずだ。それで運命を変えようと人生をかけてみた人だけが彼に太刀打ちできるというチョ・ユンの名ゼリフには頷ける。

映画「群盗」ポスター
なぜこのようなワケありの悪役になったのだろうか。ストーリーをドチ(ハ・ジョンウ)の視線で追っていけば、劇中でチョ・ユンがそれほど立体的な悪役でなかったとしても観客の共感を得るのに無理はなかったはずだ。

これについて彼は「ワケありの悪役にしたのは、映画の主題と関係がある。『群盗』いう話は娯楽映画だが、絶対に一人の悪人が処断されて世の中が変わるという話ではない」と自ら自身の映画のテーマを説明した。

「個人がいなくなったとしても世の中が変わることはないと思う。世の中を生きていきながら誰かは自身の立場で本人が善で人が悪だと言うだろうし、表面的にはそう見えるかもしれないが、悪も、善も私たちは皆世の中を生きていきながら自分の中の悩みと戦っていると思う。映画にそういう面を活かしたいと思った。そして人によって好みは違うと思うが、僕は一人の人物がサイコパスとして出てくるのが嫌いだ。そんな人間は存在しないと思う。実際に至尊派事件(犯罪組織「至尊派」が約1年間に5人を次々と殺害した事件)の最後の公判まで探してみたが、後で犯人の1人が被害者が逃げられるように助けてあげたこと知ったこともあった。誰でも心の中に人間としての面は残っていると思う。悪党がサイコパスとして登場し、ただ悪党として消費されることが嫌だし、信じたくない。もちろん、善と悪が激突することはあると思う。しかし、その対決の本質が善が悪を完全に処断するとは思わない」

「ワールドカップでメダルを取るわけでもないし、ただ『群島』として観て欲しい」

仕事の仕方が気になるという言葉にユン監督は「とても早く書いてとてもたくさん直す」と話した。「群盗」について彼は「全部書き上げるのに2ヶ月半しかかからなかった。それから1年間直した」とし「1年間大きく変わったが、草稿の良い部分はたくさん生かそうとした」と話した。

一人の息子の父親として彼は「子供が大きくなって、父の映画を見て恥ずかしいと言わないでほしい」と言った。「群盗」の興行成績はどれくらいになると思うかという質問に「本当に分からない。僕は実は『群盗』以前にもそうだったが、観客がどれくらいになるか予想したことがない。『群盗』も同じだが、今夏、僕がまるでW杯にサッカー代表として出場し、メダルを取らなければならないような気がする。職業が変わったようだ。ハハ。一緒に映画を作った人々が満足するほどの観客が入ってほしい」と正直な心境を明かした。

映画を終えてカン・ドンウォンと一緒に泣いたという話を聞いたと言ったら「カン・ドンウォンが軍隊に行ってきて剣術の練習を非常に頑張ったし、何か見せたい気持ちがとても切実だったはずだ。頑張りすぎるとある瞬間涙が出る。僕も普通映画を終えたら必ず泣く。ところで、今回は涙をたくさん流すことはなかった。舞台挨拶に回ると泣くかな?」と笑って見せた。今年までは子育てに集中しながら休むことが彼の目標だ。

最後に監督が思う「群盗」の観戦ポイントを聞いた。

「そのまま『群島』として観て欲しい。『ユン・ジョンビンの群島』ではなくて。僕の前作を考えないで映画『群盗』として面白く観て頂ければと思う。純粋にだ。小学生からおじいさんまで観ながらその場で理解し、楽しめるように作るために努力した」

記者 : チェ・ナヨン、写真 : チ・ヒョンジュン