チョ・ジェヒョン「『鄭道傳』というドラマタイトルを恨んだこともあった」

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KBS 1TV大河時代劇「鄭道傳(チョン・ドジョン)」(脚本:チョン・ヒョンミン、演出:カン・ビョンテク、イ・ジェフン)は、デビュー25年目の俳優チョ・ジェヒョン(49)にとっても挑戦のような作品であった。チョ・ジェヒョンは数多くの演劇や映画、ドラマで培った演技力で“名俳優”というタイトルをずっと前から手にしていた。しかし、ドラマのタイトルでもあるチョン・ドジョンという役は、“名俳優”チョ・ジェヒョンにとっても容易いものではなかった。ミスキャストではないかという議論や、演技力不足だという議論まで広がり、気苦労が絶えなかった。主人公でありながらも出番を気にしなければならない境遇にも置かれた。

韓国で「鄭道傳」が終わってから数日後、ソウル大学路(テハンロ)スヒョンジェシアターで出会ったチョ・ジェヒョンは、劇中でチョン・ドジョンが死ぬ前に目の前に現れたチョン・モンジュ(鄭夢周、イム・ホ)の幽霊に嘆いた台詞「私は本当に最善を尽くした」に言及した。「この台詞は自分自身の気持ちでもあった」と話し、彼が感じていた苦労を打ち明けた。

「鄭道傳」の演技は難しく、毎週が緊張の連続

「鄭道傳」はキャスティングの段階から異例という評価を受けた。「KBS 1TVの大河ドラマの主人公=チェ・スジョン」という公式を久々に破ったからだ。その中心にはチョ・ジェヒョンがいた。メイクの時間が長く、撮影地も遠いという様々な理由で時代劇の出演を避けていたというチョ・ジェヒョン。しかし「鄭道傳」はそんなチョ・ジェヒョンの心を一瞬にして掴んでしまうほど魅力的な作品であった。

「『鄭道傳』のシノプシス(ドラマや舞台など作品のあらすじ)はとても厚かった。本を読むのは嫌いだが、『鄭道傳』のシノプシスは本当に面白かった。気づけば明け方の4~5時まで熟読していた。シノプシスを読み終えたら、むしろ目が覚めていた。缶ビールを一本飲んで、この作品は僕がやろうと思った。翌朝、カン・ビョンテク監督に連絡し、他の俳優にはシノプシスを渡さないでほしいと伝えた」

「鄭道傳」がこれまでの時代劇とどのように違っていたのかと質問すると、チョ・ジェヒョンは「チョン・ドジョンという人物が魅力的だ。ここまで素晴らしい人物がまだ世の中に知られていないというのが不思議だったし、表現したいという意欲が沸いてきた」と答えた。檮杌(トオル)先生の名で知られるキム・ヨンオク(金容沃)のチョン・ドジョンに関する講義ビデオを見て演技の参考にしたというチョ・ジェヒョンは「チョン・ドジョンを演じたここ8ヶ月間、一日も緊張していなかった日はない。今は緊張が溶けたからだろうか? 風邪が遅れてやってきた」と話し、肩を落とした。

「何よりチョン・ドジョンは台詞が難しかった。イ・ソンゲ(李成桂、ユ・ドングン)は感情的な台詞が多く、チョン・モンジュの台詞も感情的なものが多いのでそこまで難しくはなかった。しかし、チョン・ドジョンは大業に関する考えが頭を支配している人物だ。大業が常に中心となっているので、口語はほとんどなかった。だから、さらに大変だったのだと思う」

「鄭道傳」は放送開始当時は大きな関心を受けることができなかったが、口コミ効果で大きな反響を得た。日曜日には同じ時間帯に放送される人気バラエティ番組KBS 2TV「ギャグコンサート」を視聴率でおさえ、「龍の涙」以来20年ぶりに正統派時代劇の復活を告げたという好評を受けた。まさに「鄭道傳」ブームを巻き起こした。チョ・ジェヒョンは「『鄭道傳』のように健康的で有益かつ面白い大河ドラマの制作が活発になってほしい」と伝え、胸一杯な気分をうかがわせた。

タイトルロールというプレッシャー、ドラマのタイトルを恨んだことも

「鄭道傳」では歴史的に有名ではない人物であるイ・イニム(パク・ヨンギュ)をはじめ、イ・ソンゲ、チェ・ヨン、チョン・モンジュなど多くの登場人物が均等に再評価された。しかし、それに比例して主人公チョン・ドジョンがドラマで占める出番が減少した。「鄭道傳」というドラマタイトルに顔負けするほど、著しくチョン・ドジョンの出番が減っていた。特にチョン・ドジョンの政治的なライバルと呼ばれた“政治10段”イ・イニムの活躍で、チョン・ドジョンの存在は小さくなった。タイトルを「イ・イニム」に変えるべきだというジョークもあちこちで言われた。

これはベテラン俳優チョ・ジェヒョンにとって、屈辱的な時間であった。チョ・ジェヒョンは「正直『鄭道傳』というタイトルを恨んだこともあった。表には出せなかったが、とても大変だった。血液型がトリプルA型なので、記事のコメントは全部読んでいるが、最初はミスキャストだとか発声が間違っているという声をよく聞いた」と当時の辛い思いを打ち明けた。チョ・ジェヒョンは「『鄭道傳』の中間記者懇談会で『今は形だけがチョン・ドジョンだが、これからはきちんとしたチョン・ドジョンを見せる』と伝えていたが、その後もチョン・ドジョンの活躍がなかなか見られず辛かった」と打ち明け、大きな声で笑った。

脚本家や監督にプレッシャーを与えることを嫌い、撮影中は電話やメールを一切しないというチョ・ジェヒョンだが、「鄭道傳」が後半に向かっている頃にはさすがに焦ってきた。チョ・ジェヒョンは「(全50話のうち)40話に入ってもまだチョン・ドジョンにチャンスは来ていなかった。イライラして、ようやく勇気を出して脚本家にメールを入れた。『チョン・ドジョンという人は一体何者ですか?』という内容だった」と伝えた。

「すると脚本家は言い訳をすることなく心のうちを明かしてくれた。振り返ると、チョン・ドジョンの出番が少ない時もチョン・ドジョンの視点に関する脚本家の配慮を感じたことがあった。『鄭道傳』の中で20話分の主人公がいたり、5話分の主人公がいたりしたけれど、決して彼らの視点に基づいて話が進むことはなかった。ゴールは彼らが決めたが、ゲーム全体を動かしたのはチョン・ドジョンであった。それでも最後にはチョン・ドジョンにゴールを決めさせてくれた脚本家に感謝している(笑)」

チョ・ジェヒョンが夢見る大業は“世界3大映画祭の俳優”

「鄭道傳」が視聴者に与えたメッセージは、どの時代劇よりも強烈だったという評価を受けた。民本主義の国を作るために自ら化け物になることを恐れなかったチョン・ドジョンの精神、そしてその実践力はエネルギーが溢れていた。チョン・ドジョンとして生きてきたチョ・ジェヒョンが受けた影響は言葉にはできないほどだ。チョ・ジェヒョンは「チョン・ドジョンを演じながら、僕とチョン・ドジョンの似ている点は果たして何だろうと悩んでみたが、それは実践力だった」と話を始めた。

「チョン・ドジョンは理想だけを夢見る学者として残らず、実践をした人だ。思想家であり政治家であった。僕も考えたことは実践する人間だ。約10年前に、僕の10年後の姿について書いたことがあった。10つほどの目標があったが、そのうちの1~2つを除いて、すべて叶えている。その一つが今のこの会場(スヒョンジェシアター)だ。まだ残っている1~2つも進行中だ」

俳優、演劇演出家及び制作者、京畿道(キョンギド)文化の殿堂の理事長など多方面で活躍中のチョ・ジェヒョンはチョン・ドジョンとどこか似ている。チョン・ドジョンも大業のために体が10個あっても物足りないほど忙しく生きた人物であるためだ。やろうと思ったことがあればがむしゃらに行動していたチョン・ドジョンの推進力は、時には味方を敵にすることもあった。劇中、ナム・ウン(イム・デホ)がこれを懸念するとチョン・ドジョンは「私が100年まで生きると思うのか?」と聞き返し、現在の危険性を甘受するしかない理由を語った。チョン・ドジョンのこの台詞にチョ・ジェヒョンも大きく共感した。

最後に俳優として夢見る大業を質問すると、チョ・ジェヒョンは「『鄭道傳』でのチョン・ドジョンの最後の台詞であった『不可能な夢を見ろ』のように、僕も不可能な夢を見ている」とし「個人的な願いは、韓国の俳優としては初めて世界3大映画祭全部で賞を受賞することだ」と答えた。チョ・ジェヒョンがぜひこの大業を叶え、不可能なだけの夢はないという希望を人々に与えるその日が来ることを期待してみよう。

記者 : イ・ウイン、写真 : イ・ソンファ