チン・イハン、脳がセクシーな“時の俳優”になるまで

OSEN |

俳優チン・イハン(36、本名:キム・ヒョンジュン)の演技時計は止まらなかった。昨年末からわずか数日前まで厳しいドラマ撮影、それも連続で2本も出演したが、演技への渇きが強かった。30代の成熟した男の魅力をアピールしながら“脳がセクシーな時の俳優”になったチン・イハンとのおしゃべりは甘く、フレンドリーだった。

チン・イハンはMBC「奇皇后」でキ・スンニャン(ハ・ジウォン)をサポートした策士タルタル役を演じ、知性とカリスマ性溢れる演技を披露した。どこに行ってもタルタルがカッコいいとする女の子たちの告白を聞けた、“チン・イハンの再発見”だった。その後彼は連続で「弁護士の資格」で成功のために弁護士の道を歩き始めるチョン・ジウォン役を演じ、キム・ソクジュ役のキム・ミョンミンと対立した。

相次いで知的な役を演じ、彼が大衆に刻み込んだのは、自身の魅力だけでなく、安定した演技力で役を選ばないとのこと。「愛情万々歳 ~ブラボー!マイ・ラブ~」(以下「愛情万々歳」)で憎みながらも情が移った、みっともないハン・ジョンスが、これだけカッコいい男だったことを、演技という正攻法で見せた。

「『愛情万々歳』の情けない男があの人なの?との反応を見ながら嬉しかったです。実は、『愛情万々歳』の時チュ・ソンウ監督が悪役を楽しもうとアドバイスしてくださり、楽しみながら演じました。しかし、あまりにも演技に入り込み、ある瞬間から視聴者たちに憎まれていました。ハン・ジョンスは、最初はあそこまで“クズ”のキャラクターではありませんでした。多少大げさに演じると視聴者の反応が良かったので、ある瞬間からそのようになりました(笑)」

実際に会ったチン・イハンは、目の色で両極端の性格を表現できる男だった。セクシーで男性的な眼差しの裏には、どこか涼しい感じもあった。眼差しを見ていて、怖い役を演じると本当に怖くなりそうと冗談で言うと、彼は再び甘い笑顔を作って見せた。

「そうでしょう?僕がサイコパスの演技をすると、本当にサイコパスに思われそうで怖いです(笑) そこで、慎重ではありますが、本当に強い役割を演じてみたいとも思っています」

チン・イハンはキャラクターの分析と没入が上手な俳優だ。彼が「愛情万々歳」で主婦たちに集中的に憎まれるハン・ジョンスを表現できたのも、「奇皇后」と「弁護士の資格」で脳がセクシーな男として愛されたのも、そのキャラクターに洞察力を発揮して分析してから没入する、俳優としての長所を存分に発揮できる、鋭敏な演技のおかげだ。

タルタルは序盤の比重は大きくなかったが、後半に入りスンニャンが皇后になる過程で決定的な助力をした。特に、叔父であり、権力欲に囚われたペクアン(キム・ヨンホ)を殺し、スンニャンの命を救うシーンは、チン・イハンの重みのある演技で「奇皇后」の名場面に挙げられた。大儀のために血筋を殺す男の熱い涙は、お茶の間を戦慄させた。しかし、チン・イハンはこのシーンを演じるために、ドラマの序盤から一つ一つレンガを積み上げるように、タルタルという人物に感情を込めて演じた。このひとつのシーンのために、タルタルの言葉ひとつ、眼差しひとつにドラマを通して気を配った。それほどチン・イハンは繊細な俳優だ。

「実は、ドラマの中盤には眼差しと台詞一言がタルタルの役割でした。台詞は少なかったものの、感情を着実に積み上げて行きました。脚本家の先生に言われ、タルタルがペクアンを殺すことを最初から知っていたからです。叔父を殺す気持ちはどうだろうかと悩みながら演じました。悲劇を常に念頭に置いたため、重い気分でした」

チン・イハンは「奇皇后」の前まで、かなり大きな割合のキャラクターを演じたため、一言の台詞もない日もあった「奇皇后」で我慢することが辛くはなかったのだろうか。

「脚本家の先生が、僕の比重が少なかったにも関わらず、本当にたくさんのことを話してくださいました。そこまで言われなくても良かったのですが、比重のないことが申し訳ないとしながら、もう少し待ってほしいと言ってくださって、本当にありがたかったです。ドラマが終わり、脚本家の先生に待ってくれて申し訳なく、うまく待ってくれてありがとうと言われましたが、心にきました。僕はドラマでの比重に関係なく、タルタルを演じることが幸せだったからです。タルタルは脚本家の先生が書いてくださる台本に出ている表現を超えて演じられる部分が多い役割です。台詞や指示文にないことも演じられる部分が多く、俳優として幅広く演じることができました」

チン・イハンは俳優としての「ターニングポイント」を作ってくれたチャン・ヨンチョル、チョン・ギョンスン脚本家に対する感謝の気持ちを忘れなかった。

「『奇皇后』の台本を読みながら、本当に漫画を読んでいるように毎回が面白かったです。全部で50話ですが、毎回を面白くするのは難しいです。本当にたくさんの人物が出ましたが、人物ごとにストーリーがあり、本当にすごいと思います。脚本家の先生は僕が『弁護士の資格』に出演している間もアドバイスをしてくださいました。俳優として見せられる部分を見せるようにと言われました。本当に感謝しました。タルタルがここまで愛されるとは思わなかったです。また、いつこのようなキャラクターを演じられるだろうかと思います」

チン・イハンは「弁護士の資格」で「奇皇后」の良い流れを繋いだ。善と悪が共存するチョン・ジウォンを演じながら、キム・サンジュン、キム・ミョンミンなどの実力派先輩俳優たちの間で、自身の色をはっきりアピールした。「弁護士の資格」は法廷ドラマとして温かい人情と、冷徹な現実への直視で、視聴者たちの間で人気を集めた。ただ、頻繁な放送休止などで出演者たちのスケジュール調整が困難になり、2話を繰り上げて早期放送終了となり、最初に計画していたストーリーが多少仕上がらず、思い残りを残した。

「キム・サンジュン、キム・ミョンミン先輩といつまた共演できるだろうかと思い『弁護士の資格』に出演しました。2人の俳優と一緒に演じること自体が光栄だからです。撮影の環境上、台本を完璧に熟知して演じることはできませんでした。さらに、裁判所でのシーンは、理解できないまま演じるケースもあり、俳優として残念でした」

ドラマが急いで終了となり、チョン・ジウォンとキム・ソクジュの対立が激しく取り上げられなかった。チョン・ジウォンは成功のために判事の座を投げ出し、チャ・ヨンウ法律事務所に入り、キム・ソクジュの空席を埋めた。しかし、チャ・ヨンウ法律事務所の全方位的な権力を目の前で見たチョン・ジウォンの気持ちは、変わったのではないだろうか。説ききれなかった、ドラマには出てこなかった、そして、チン・イハンが求めるチョン・ジウォンのストーリーはどうなのだろうか。もちろん、想像だ。

「僕がキム・ソクジュと裁判所での対決で勝訴し、タイをはずすシーンがあります。それは、僕がチョン・ジウォンの葛藤を表現した行動です。チョン・ジウォンは、実はチャ・ヨンウ法律事務所の操り人形ではなかったのだろうかと考えてみました。論理での戦いで勝ったのではなく、チャ・ヨンウ法律事務所の権力に頼り勝ったことを知ってから、チョン・ジウォンが葛藤したのではないだろうかと考えました。チョン・ジウォンはチャ・ヨンウ法律事務所から出たと思います。キム・ソクジュと同じことを悩み、後輩の育成に力を注いだのではないかと思います(笑)」

チン・イハンは相次いで出演したドラマにより落ちた体力を回復し、次期作を検討している。精力的に走ってきただけに、休んでも良いはずだが、演技を休まないと強く思っている。

「いきなり休むと、慣れませんでした(笑) 2日ほど休むと、また演技がしたくなりました。俳優は精神的にストレスの多い仕事ですが、それでも休むと何か停止した感じがします。体は辛くても、演技をして、現場にいてこそ、生きている感じがします。俳優として見せなければならないことが、そして、見せたいことが本当に多いです。もっとたくさん演技して、重みのある俳優になりたいです」

記者 : ピョ・ジェミン、写真 : チョン・ソンイ