ジョージ・タケイ「日本人だから監禁された私が『スター・トレック』の船長になりました」

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俳優兼人権運動家のジョージ・タケイ「性的マイノリティの人権増進のために韓国を訪問」

1966年アメリカのテレビシリーズ「スター・トレック」で宇宙船エンタープライズ号の船長スールー(ミスター・カトウ)役を演じて世界的に有名になったジョージ・タケイ(George TaKei、77歳)。50年を超える歳月の間、多数のドラマや映画に出演してきた彼は、「スター・トレック」のドラマ3シーズンと6本の映画版で船長役を務め、韓国のファンにとってもお馴染みの俳優だ。

俳優でありながら制作者でもあり、LGBT(女性同性愛者、男性同性愛者、両性愛者、性転換者、異性装同性愛者の人々をまとめて呼称する頭字語)、人権活動家、社会正義運動家、民主党の政治家であるジョージ・タケイが、駐韓アメリカ大使館の招待で韓国を訪問した。彼は5月27日から30日まで韓国に滞在し、アジア系アメリカ人としてハリウッドに進出し、ミュージカル俳優として暮らす第2の人生など、様々なテーマで特別講義を行った。

「OhmyStar」は28日午前、ソウルのウエスティン朝鮮ホテルで彼と会い、単独インタビューを行った。77歳とは思えないほど健康的な外見はもちろん、インタビューで終始見せた集中力のある活気に満ちた眼差しが印象的だった。

―今までに韓国へ来たことは?

ジョージ・タケイ:80年代末に観光で来たことがある。当時と比べるとソウルはかなり変わったようだ。とても現代的な都市だ。

―今回の訪問の目的は?

ジョージ・タケイ:LGBT人権運動を行っている。性的マイノリティの平等な権利のために精力的に運動を展開してきた。軍人権センターのイム・テフン所長にもお会いし、彼とマイノリティの権益保護のための様々な話を交わした。今回訪問した理由は、韓国のLGBTはどのような困難を経験しているのか、また、性的マイノリティの人権増進のためにどのようなことが行われているのかについて話を聞くためだ。

「『スター・トレック』の哲学のお陰で、アジア系俳優としてチャンスを与えられた」

―「スター・トレック」のドラマと映画のお陰で、世界中にたくさんのファンがいるが、韓国人のファンとの交流もあるのか?

ジョージ・タケイ:「スター・トレック」は世界的に有名になったテレビ番組だった。世界中にたくさんのファンがいる。アメリカでは韓国系アメリカ人のコミュニティがたくさん形成されており、「スター・トレック」のファンの彼らと会ったことがある。アメリカで「STAR TREK Convention」が開催され、そこに来た韓国人のファンと会った。「スター・トレック」のお陰で私も人気を享受した。

(記者注:「スター・トレック」はジーン・ロッデンベリーが企画したアメリカの代表的なSFドラマシリーズで、宇宙艦隊エンタープライズ(U.S.S. Enterprise)とその乗務員たちの冒険を描いている)

―昔は今に比べてアジア系アメリカ人の俳優が少なかったが、差別などで苦労したことはなかったのか?

ジョージ・タケイ:日系アメリカ人として子供の頃は実際に多くの問題に直面した。子供の頃、アメリカで鉄のフェンスに囲われた収容所に監禁されたことがあった。真珠湾を爆撃した日本人と似ているという理由だけで監禁されたのだ。子供の頃から差別を受けてきた。

そして、10歳から人種問題以外にも自分が他の人とは違うことに気がついた。私と同じ年頃の男の子たちは綺麗な女の子にとても興味を持っていたが、私は実は男の子の方にもっと興味があった。それは、私にとってまた別の障害だった。学校で人気のある子たちと一緒に遊びたくて女の子に興味のあるふりもしたが、本当はそうでなかった。

大人になってから自分と同じような人たちがいることを知り、ゲイバーで同じような人たちと出会った。しかし、若い頃は俳優として成功したいという欲があり、性的アイデンティティをカミングアウトしたら役者としての夢が水の泡になってしまうと思った。

―どのようにハリウッドに定着し、50年間多数の作品で精力的に活動を展開することができたのか。

ジョージ・タケイ:アジア系アメリカ人俳優として私に与えられるチャンスが限られていたことは事実だ。多くのアジア系アメリカ人は限られた役を演じていた。よく命令に従う使用人だとか、滑稽な悪人など。人気のある役や魅力的な役は少なかった。

父は私が学位を取ることを望んでいたのでUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)に入学し、演技を専攻した。学生として演技に取り組んでいる時、ワーナー・ブラザースのキャスティングディレクターの目に留まり、初の長編映画「北海の果て」に初めて出演した。そのような点で私はとても運が良く、その後も複数のテレビシリーズからオファーを受けて出演した。そんな風に知名度も段々高まっていった。そんな中「スター・トレック」に出演することになったが、それは本当に幸運だった。アジア系アメリカ人として新たな役にキャスティングされたことが私にとって一つの突破口となった。

―1960年代にテレビシリーズで放送された「スター・トレック」は、当時としては画期的なビジュアルとあらゆる人種を網羅した大胆な世界観で全世界に衝撃を与えた。

ジョージ・タケイ:「スター・トレック」の哲学について説明すると、まずエンタープライズ号という宇宙船は地球を比喩的に表現したもので、地球はもっと多様性を尊重すべきだということを暗示している。アジアからアフリカ、ヨーロッパ、ラテンアメリカまで、世界中の人々が多様性を尊重し、チームの一員として働く時、私たちの地球もより住み良い場所になるということを物語っている。

当時、制作者であり監督だったジーン・ロッデンベリーは、アメリカ社会のメンバー全員を受け入れなければならないという勇敢で驚くべきビジョンを提示した。多様性を尊重する監督の哲学が映画に盛り込まれている。このような哲学はアジア系俳優たちにもう少し違う環境を提示できる機会になった

「宗教の根幹は『愛』、性的マイノリティ反対は不自然」

―韓国俳優たちのハリウッド進出も持続的に行われている。イ・ビョンホン、RAIN(ピ)、ペ・ドゥナはもちろん、これからハ・ジウォンなどの俳優も進出する予定だ。

ジョージ・タケイ:ハリウッドで私が仕事を始めた時と比べると、今は大きく変わった。アジア系アメリカ人にもたくさんのチャンスがある。才能さえあればハリウッドで必ずチャンスをつかむことが出来る。ハリウッド映画は北米だけでなく、全世界で上映される。ハリウッド映画が成功するためには、アジア、ヨーロッパ、ラテンアメリカなど、全世界の観客から愛されなければならない。観客自体がグローバル化し、キャスティング担当者の考え方も変わった。そんな風に変化しているのでアジア系俳優たちもチャンスを掴めるだろう。

―ハリウッドの有名俳優からミュージカル制作者としても領域を広げている。「忠誠/ALLEGIANCE」(2012年)を制作することになったきっかけは?

ジョージ・タケイ:冒頭でも話したように、何の関係も無かった罪の無い日系アメリカ人たちが、日本が真珠湾を爆撃したという理由で収容所に強制収容された。恥ずべきアメリカの歴史だと思う。そこでこの問題から教訓を得る必要があると思い、全国を巡りながら講演ツアーをしたこともある。

それと同時に、これをもう少し劇的に作って大衆の感情に訴えれば、より効果的に伝えることができると考えた。そこで音楽を利用したミュージカル「忠誠/ALLEGIANCE」を制作することになり、大きな成功を収めた。このミュージカルを制作する時、出演俳優には様々な歴史的背景を持つ人を活用しようと思った。日系アメリカ人の話だが、中国系アメリカ人や韓国系アメリカ人(マイケル・リー)もキャスティングし、様々なアジア系の才能ある俳優たちをキャスティングした。

―6月に大邱(テグ)で第15回クィア文化フェスティバル(Korea Queer Culture Festival)が開かれるが、それに対しキリスト教団体がクィア文化フェスティバル不可論を掲げて反対運動を行っている。同性愛に反対する宗教家たちの非難の声についてどう思うのか。

ジョージ・タケイ:私は宗教というものの根幹は最終的には愛だと思っている。その基本的な事実を宗教団体は直視すべきだ。歴史上最悪の戦争は「宗教」の名の下で行われたケースが多い。しかし、LGBT人権運動の根幹は“愛”だ。私たちは皆、異性愛者の両親から生まれた子供だ。私たちはいずれも両親の愛から生まれた。ここから親と子の間の愛や兄弟同士の愛などが生まれる。

しかし、それらの愛よりも宗教を優先し、性的マイノリティを追い出そうとすることはあまりにも不自然だと思う。人間が人間らしくあることに反することだと思う。性的マイノリティたちも家族であり、親族がいる。血筋であり、肉と骨を分ち合った人たちだ。根本的な愛よりも他のことを優先してはならないと思う。

記者 : イ・ジョンミン、チョ・ギョンイ