ユンホ(東方神起)が新しい扉を開けた!俳優としての成長を感じさせる陰りのある演技 ― 「野王」鑑賞コラム

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姉に愛されて育った財閥御曹司を演じる

『野王~愛と欲望の果て~』でユンホ(東方神起) が演じたのは、巨大財閥の御曹司、ペク・ドフン。母の愛を知らずに生きてきたものの、過保護ともいえる18歳上の姉、ドギョンのあふれんばかりの愛を一身に受けて育った青年だ。ドギョンがときにはお手製のキムチチャーハンを作り、ドフンは姉がいなければ靴下の場所さえもよくわからない。そんな仲のいい姉弟であり、ある複雑な背景を持つふたりの関係が、愛と欲望を描くこのドラマのもうひとつの軸でもある“家族”というテーマを支えている。
グループの会長でもある父親が鬼瓦権造のようなディープ・インパクトを残すルックスのため、DNAの神秘を感じてしまうが、キム・ソンリョン演じるドギョンは同性さえもハッとするようなクール・ビューティ。いくつになっても弟のお尻をポンッと叩いて愛情表現し、あれこれと世話を焼く姉と、「姉さんやめてよ!」と言いながらも何だかんだと甘え、姉を大切にしている弟。劇中ではユンホが「ヌナ(笑)!」「ヌナ(泣)!」「ヌナ(怒)!」「ヌナ(疑)!?」とあらゆるバージョンで呼んでくれるため、年上の女性ファンはアクロバティックに脳内変換するという楽しみ方もできそうだ。


序盤にはアイスホッケー選手としての見せ場も

財閥の御曹司としての仕事や立場にはあまり興味がない大学生のドフンが夢中になっていたのはアイスホッケー。劇場版としても公開された1、2話でのドフンの出演場面はほとんどがホッケーシーンのため、ユニフォームでさらに小顔が際立つユンホの姿と、臨場感あふれる試合シーンをスクリーンで堪能した人も多いかもしれない。汚い手を使う対戦相手のことを許せずカッとなって氷上でケンカをしたり、父親の策略やケガのためにホッケーへの夢を断たれそうになると、泣いて暴れて悔しがったりする若き日のドフンを、ユンホは熱く爽やかに演じた。『野王~愛と欲望の果て~プレミアムメイキングDVD』のメイキング映像には地道な練習を繰り返し、ケガと隣り合わせのハードなシーンも代役に頼らず自ら演じるユンホの姿が収められている。ユンホは2011年にバラエティ番組『キム・ヨナのキスアンドクライ』でフィギュアスケートに挑戦したが、過密スケジュールのなかで臨んだあのときの経験が、このドラマでも生かされている。


運命の愛を信じるまっすぐすぎる男、ドフン

何不自由なく育ったお坊ちゃま育ちのドフンと、孤児院育ちで野心に満ちたダヘ。地下鉄で就職試験に向かうダヘのパンプスが脱げてしまい、それをドフンが拾ったことでふたりは運命的な出会いを果たす。フードに隠したパンプスをヒョイッと差し出し、いたずらっぽい笑顔を見せる二次元としか思えない貴公子ドフン。様々な思惑が入り乱れる復讐をめぐる物語のなかで、彼だけは最後までひとりの女性を愛し抜く純粋な存在として描かれている。野望を叶えるために邪魔な人間を消していくダヘは韓国ドラマのなかでも“最高の悪女”と称されるだけに、そんな彼女に惹かれていくドフンに観る側はやきもきさせられるのだ。
ユンホ自身も「ちょっとアホじゃないかなと思う部分もありました」と語っているが、ドフンは彼女の罠に気づいていないのか、心のどこかではわかったうえで理解者になろうとしているのか――。誰が見ても巧妙な作戦なのに、姉の忠告にも耳を貸さず、すべてが正反対だからこそどうしようもなくダヘを愛してしまうドフン。ユンホは主演ドラマ『No Limit ~地面にヘディング~』のサッカー選手役とはまったく違う新しい顔を見せて俳優としての成長を感じさせたが、誠実で純真な人柄で知られるユンホの人間性がベースにあるからこそ、ここまでひたむきに無条件に人を愛する“ありえない役”を“ありえる役”として成立させることができたのかもしれない。


俳優としての成長を感じさせる陰りのある演技

前髪のスタイリングで変化をつけた髪型や、御曹司らしい上品さと爽やかさのあるカジュアルな普段着の着こなし、長身によく似合うスーツ、回想シーンで見せた制服姿――。ルックス面のバリエーションでも楽しませてくれたユンホだが、特筆すべきなのは愛する人の嘘によって明から暗へと陰りを帯びていく、そのやるせない表情の移り変わりを繊細なグラデーションで演じ切ったことだろう。すべてを与えられて育った青年が、はじめて自ら手に入れたいと願い、命の限り求めた人。「その汚れは僕が流してあげる。幸せすぎてうんざりするくらいに」「君を守れるように強くなる。だからどこにも行くな」という甘いセリフを曇りのない瞳で語っていたドフンは、ひどい裏切りにあってもどこかでダヘを信じようとしていたのかもしれない。

「嘘だけはつくな」と最後まで彼女を受け止めようとし、姉を傷つけたことを責めながらドフンが慟哭するシーンは観る者の心を激しく震わせ、涙腺を崩壊させた。東京ドームのライブで涙を見せたことがニュースになるほど泣かない“東方神起のユンホ”が“俳優、チョン・ユンホ”として流した涙。実力のある俳優たちに囲まれ、表現の幅を広げた経験は「TREE」ツアーにすでにフィードバックされているのだろう。より情感豊かに、より“伝わる”曲として新たな命を吹き込まれた過去曲『With All My Heart~君が踊る、夏~』などをはじめ今回披露されているバラード曲からも、そのことは明らかだ。ドラマ『野王』で新しい扉を開けた時間は、アーティストとしても俳優としても、これからのユンホの可能性の裾野をさらに押し広げていくに違いない。


ライター 細谷美香

「野王」DVDリリース情報
【DVD BOX】
・「野王~愛と欲望の果て~ DVD BOX I」21,000円(本体価格)+税
・「野王~愛と欲望の果て~ DVD BOX II」 24,000円(本体価格)+税
【コンプリートDVD BOX】
・「野王~愛と欲望の果て~ コンプリートDVD BOX(初回限定ハリュバージョン)」
45,000円(本体価格)+税
・「野王~愛と欲望の果て~ コンプリートDVD BOX(初回限定ドフンバージョン)」
45,000円(本体価格)+税
【レンタルDVD】
・Vol.1~6 2014/5/2(金) レンタル開始
・Vol.7~12 2014/6/4(水) レンタル開始

※「野王~愛と欲望の果て~ コンプリートDVD BOX(初回限定ハリュバージョン)」はクォン・サンウ ジャパン オフィシャル ファンクラブ専売商品となります。
※「野王~愛と欲望の果て~ コンプリートDVD BOX(初回限定ドフンバージョン)」はBigeast専売商品となります。

全仕様共通 発売日:5月28日(水)
発売元・販売元:エイベックス・ピクチャーズ
(C)SBS

・「野王」公式サイト:http://yaoh.jp/
・「野王」公式Twitter:@Yaoh_jp

記者 : Kstyle編集部