【K-POP制作所】BIGBANGのスタイルを作る女性ジウン取締役

OSEN |

写真=YG ENTERTAINMENT、G-DRAGON Instagram
もし合コンに行って、相手の男性がキラキラしたゴールドのジャケットを着てピンク色の長い前髪をなびかせていたら? ぴったりフィットしたスキニージーンズに穴の空いたシャツを着ていたら? 好みによるかもしれないが、ほとんどの女性の反応は「申し訳ありませんが、急用が出来て……」であろう。

しかし、それがBIGBANGなら話は違う。ファッションのFの字も知らなくても、彼らの姿は非常にスタイリッシュでかっこいいということがすぐに分かる。ステージの上、ミュージックビデオやCM、空港でのBIGBANGは、他の芸能人と明らかに何かが違う。自信に満ちた態度や着ている服のブランドの影響もあるだろうが、この人、YG ENTERTAINMENT(以下YG)のコンテンツ制作本部スタイリストチームのジウン取締役の手が加わっていることが重要であろう。

YGのファッション担当者というと、派手な金髪に、高価な衣装を座布団にして座っていそうなイメージだが、実際に会った彼女はファッショングラビア集がいっぱい積まれたアカデミックなオフィスで、クラシック音楽をかけて仕事をする、小柄な女性だった。さらに、部下である従業員たちに髪を染めることも禁じる、保守的な女性だった。2000年にYGに入社し、1TYMからWINNERまで手がけている彼女は「スタイリストが着せたようなスタイル」を第一に避け、自身の仕事よりアーティストがさらに輝く方法を研究していた。また、スタイリストに必要なことは「一に忍耐、二にも忍耐」と語った。


人の魅力が溢れるYG

―YGに入社して14年目になる。実際、普通の人には馴染みのない職業だが、小さい頃からスタイリストになることが夢だったのか?

ジウン:小学校6年生の時、将来の夢にスタイリストと書いてはいましたが、実際どういう仕事をする職業なのかは知りませんでした。YGに来たのもスタイリストをするためではありませんでした。大学で衣装デザイン学科に通っていましたが、学校の先輩に少しだけ仕事を手伝って欲しいと言われました。それが現在まで続いているのです。

―“少し”が14年になったということか。

ジウン:そうです。その時YGにヒップホップの雑誌があったのですが、先輩がその雑誌の記者でした。ちょうど1TYMというグループのアシスタントが空いているので、1週間だけ手伝って欲しいと言われました。先輩が手伝って欲しいと言うので、特に何も考えずに始めました。しかし、1週間が2週間になり、もう一回、もう少しと言われているうちに(笑)

―元々YGのファンではなかったのか?

ジウン:私は浪人したので、高校3年生の生活を2年間送ったことになります。さらに衣装学科は本当に課題が多く、テレビという媒体に近づけなかったので、こちらの分野について全く知らないまま仕事を始めました。

―他の会社は受けなかったのか?

ジウン:フィソンを担当する時だったでしょうか。韓国のメーカーのデザイン室に入りました。安定的な道でしたが、6ヶ月働いた後YGに戻りました。

―周りから心配の声も多かっただろう(笑)

ジウン:家族の雰囲気が大学の合宿も行かせなかったほど保守的で、当然激しく反対されました。本当に苦労して説得しました。

―なぜYGに戻ったのか?

ジウン:この中での生活がとても楽しかったからです。面白い人が多過ぎるので、一日中本当にたくさん笑っています。

―ああ、面白いから?(笑) 音楽関係者が非常に面白いのは事実だ。

ジウン:それまで一度も親に反抗したことはありませんでしたが、家出すると言ってやっと許してもらいました。特にYGは人の魅力が大きいと思います。会社に専門的な衣装の部署がなかったので、私は一番年下だったにもかかわらず、アーティストたちがとても興味を持ってくれました。衣装を専攻していたと言うと色々なことを任せていただき、1TYM(ワンタイム)が「Hot熱い」で活動した時からは、非常に多くの仕事を任せてくださいました。

―ヒップホップファッションについて多く学んだと思う。

ジウン:アーティストがファッションに詳しいので、毎回試験を受ける感じでした。とにかくアーティストが気に入るように準備しなければなりませんが、あの方々は本当に見る目が違いました。教授よりも恐かったからです。私も全く知らない情報にも精通していて。彼らの気に入る衣装を準備すること自体が大きなミッションでした。特にTEDDY兄さんは本当に几帳面で、ひどく怒られたりもしました(笑)

―衣装学科で学んだことと大きく違ったと思うが。

ジウン:そうです。靴のソールは白が良い、そういったことは現場でしか分かりません。

―なぜソールは白がいいのか?

ジウン:歌手がステップを踏むときにソールが白だと動きがさらに派手に見えるからです。


アーティストに気に入ってもらった時、最高に嬉しい

―それでは、今までで最も満足している仕事は何か?

ジウン:うーん。BIGBANGの「FANTASTIC BABY」のミュージックビデオとジャケットは頭のてっぺんから足の先まで私の仕事でした。G-DRAGONの「COUP D'ETAT」も記憶に残っています。その時は急いでカムバック準備をしたので、事前に十分な衣装提供を受けられませんでした。G-DRAGONは真剣に見たいと言いましたが、ミュージックビデオ撮影当日にその衣装を見ることになりました。撮影の時は黙々と撮影をしましたが、後からオフィスに来て本当に気に入ったと言ってくれました。元々現場では良いとか悪いとかあまり言わず、後からフィードバックをくれるタイプですが、アーティストに気に入ってもらえると本当に嬉しいです。

社長は常に全ての仕事が重要だ、今回が一番重要だとおっしゃいます(笑) 「FANTASTIC BABY」も「COUP D'ETAT」もとても重要な仕事だと言われ、プレッシャーが大きかったです。

―そう言われると衣装の準備がさらに難しくなりそうだ。

ジウン:その時は、その時に私が最も好きな物、一番興味を持っている物にします。衣装は歌や振り付けとは違い、すでに出ている物があるかどうかこまめにチェックする必要はないでしょう? 他の芸能人がすでに出演したものをモニタリングするよりは、その時に最もしたいことをします。作業中に「最近、これ見たことある?」と年下の子たちに確認する程度です。

―衣装が企画され、準備される過程を教えて欲しい。

ジウン:ミキシングが出る前に私に音楽が渡されます。私は機械音痴でMP3プレーヤーは上手く操作できないのでCDに焼いてもらいます(笑)

―YGに勤務しているのにMP3がダメだって?(笑)

ジウン:はい。私はインターネットも信じられず、インターネットバンキングも使えません(笑) とにかく、CDで曲を聞き、レコーディング室や会議室に行ってアーティストの話を聞きます。今回のアルバムの全体的なコンセプトは何か、どういった感じを活かしたいのかと。例えば、かっこ良く見せたいのか、可愛く見せたいのか、など。そのような好みを聞いて、社長の話も聞きます。

―社長もとても細かそうだが。

ジウン:最近は本当に丸くなったほうです。昔は最初の放送が終わると長文のメールが送られてきたりしました(笑)

―そのように意見を集めてから、どのような作業に入るのか?

ジウン:「COUP D'ETAT」は1枚の写真で全てのコンセプトが決まっている状態でした。日頃からファッションブックやフォトグラファーの本をたくさん見ることが重要です。パソコン音痴ではありますが、検索は得意です。色々な検索サイトを使って昔の資料も全部探します。若い子に検索させて見つけられなかったら叱ったり(笑)

―普段からチェックしていたものがパッと思い浮かぶということだ。

ジウン:はい。そうなりますね。博物館もよく行きます。私の特徴のひとつは、人を覚える時、その人が何を着ていたかはあまり忘れないことです。ショッピングに行ってもどこに何があったのかよく覚えているほうです。だから、黄色いブラウスと言われたら「何階のどこのショップの自販機の隣の2番目の白い服をめくるとある」とまで言えます。どの雑誌でどんな写真を見たか記憶を辿り、またサーチすることが重要です。すでに使われたアイテムだとしても、応用次第でおじさんのような感じにもシックにも表現できるからです。

―それは生まれつきのものだろう。ファッションセンスのある人の感覚のようなものなのでは?

ジウン:父が美術をしていたので、小さい頃から色には敏感でした。


高い服だからと言って全てカッコイイわけではない

―YGと言えばファッションに多く投資するところでもあるだろう?

ジウン:たくさん支援してくれるのは本当です。ですが、BIGBANGも弟たちのようですし、他のアーティストもみんな家族のような概念です。家族のお金だと思うと無駄遣いするわけにはいきません。大胆に使う時は使っても、無駄なお金は使いません。

―高価なブランド物のスカーフを何枚も切ってT-シャツを作った、という噂は音楽業界で非常に有名だが(笑)

ジウン:古着を買うとそこまで高くはありません。100万ウォン(約9万4千円)足らずで上着を作れます。ですが、このような方法を使わず他の会社から公に手配すると500万ウォン(約47万3千円)を超えることもあります。他のブランド物のTシャツもYGでたくさん使いましたが、良い半袖のTシャツでもそれが似合わないメンバーがいます。その時は大胆にカットします。服の価格よりは、ファッショナブルなイメージで得る付加価値のほうが重要だからです。

―高い服を着たからといって、おしゃれに見えたりはしないだろう。

ジウン:それはアーティストによります。例えば、WINNERはBIGBANGと同じ服を着せても、まだ雰囲気が出ません(笑) アーティストのオーラが必要です。

私が一番ダメだと思うのは、スタイリストが着せたようなスタイルです。私が着せた服だとしても、大衆が見てアーティストが選んだと思う必要があるということです。

―やり甲斐を感じられない時もあると思う。

ジウン:最初はやり甲斐がないと思ったこともあります。ですが、考えてみると、アーティストによって受け入れ方が違います。本人の努力も重要なのです。私は出来るだけ歌手たちがファッションに興味を持つように誘導する役割をしています。デザイナーの名前を教え、彼らの特徴を説明して。彼ら自身がどれだけ受け入れるかによって着こなし方も違います。ファッションで話題になる芸能人は、スタイリストチームももちろん苦労しましたが、アーティスト本人の力量も重要なのです。

最近はWINNERと一緒にデザイナーについての話をたくさんしています。自然に吸収して成長すると信じています。ファッションでのみ話題になることは、あまり良いことではありません。アーティストが成長するにつれて自然に注目されるのが良いと思います。たまに、スタイリストたちが独立して頑張っていると、グループに自分のファッションの意欲を押し込む場合もあります。すぐ分かります。

―しかし、実際歌手たちの身体的な条件はそれほど完璧でないではないか(笑) モデルと働くほうがより楽しいのでは?

ジウン:(笑)難しいです。最近SBS「K-POPスター3」も手伝っていますが、本当に難しいです(笑) ですがある瞬間、楽になる時が来ます。出演者たちが、画面に映る自身の姿を冷静に見始める時が来るからです。そうするとどんどん綺麗になります。

―イ・ハイは本当に綺麗になった。

ジウン:綺麗な服を着られない状況になったりすると、言われなくても自らダイエットをします。ミュージックビデオを撮る時でしたが、小道具で使われたチョコレートを食べたかったらしく、鞄にこっそりと入れていました。なのに、スタッフたちはそれを知らず、全部食べてしまったことを思い出します(笑)


綺麗な服を最初に着るその気分

―YGスタイリストチームの取締役としての1日は?

ジウン:活動する時はほとんど家に帰ることができません。普段は午後の3~4時から始まります。実際仕事は夜の11時から明け方4時までが一番効率が良いのですが、一般事務の方々とのミーティングは午後にしなければならないからです。ショップブランドなどとミーティングをして会社に戻り、コーヒーと雑誌との対決が始まります。何を作るべきか、何を買うべきかリストを作ってチームのメンバーに配ります。

―退職率が高そうだ(笑)

ジウン:ほとんど2、3日で辞めます(笑) 一度残った人は長く続けます。有名大学を出た人もトイレ掃除から始めます。この業界は特に下っ端から準備しないとできない場所でもあるじゃないですか。現場のハンドリングから、自分でしてみなければならないことがとても多いです。

―全部でいくつのグループを手がけているのか?

ジウン:ヘアメイクを除いて6グループです。BIGBANG、WINNER、イ・ハイ、楽童ミュージシャン、EPIK HIGH、そして社長まで担当しています(笑)

―海外活動はどうするのか?

ジウン:海外も全部担当しています。BIGBANGの日本での活動も全部私たちが担当しています。現地に合わせるよりは、私たちの提案通りにすることを好みます。そして日本の方々もBIGBANGのファッションを気に入ってくださいます。外国のアーティストが日本のファッションを揺るがしたことはありませんでしたが、BIGBANGは例外だったそうです。だから日本は衣装提供でより好意的です。本当に誇らしいです。

―韓国では実際歌手のファッションより俳優のファッションが重視される。

ジウン:どうしても俳優のほうが高く評価されるケースがあります。そのため、俳優に提供が偏るケースもあります。そうすると私たちは日本に行って同じメーカーから提供を受けます。それは日本のキャリアとしてパリの本社に報告されるでしょう? そこで日本支社の方がむしろ褒められるケースも見ました。

―うわー。それだけ位置づけが高まったということだ?

ジウン:世界で一番に着るチャンスがあったりします。ファッションショーで見て、私たちの手に入るまで6ヶ月かかっていたものが3ヶ月で来たりします。みんなが着たがる服を、私たちが一番に着るのです。服を依頼すると、ミュージックビデオの撮影現場に、また違うどこかに、服が届きます。「FANTASTIC BABY」をする頃は、とても自由に仕事が出来ました。

―その人気がしっくりくる。

ジウン:本当にグローバル化されたと思います。2年前にG-DARGONと、1年前にSOLとパリにショーを見に行って、今回はG-DRAGONとSOLと一緒に行きました。2年前までは留学生に気づかれる程度でしたが、今回は人種問わずいつもファンが付いてきて、インタビューの依頼も絶えませんでした。特にパーティー会場にいる方々はファッション業界で働くプライドの高い方々です。それにもかかわらず一緒に写真を撮りたいと言われる方もとても多かったです。本当にびっくりしました。

私たちの席も本当にメインの席でした。すぐそばにリリー・アレン、ティルダ・スウィントンが座っていました。本当に嬉しかったです。


自分より他の誰かを輝かせなければいけない職業

―スタイリストとの職業、これからもっとかっこ良くなるに違いない?

ジウン:私が見ても先が明るいと思います。これからの10年がさらに期待される職業です。これだけ人々を楽しませる職業は斜陽産業になれないと思います。ファッションに対する関心は次第に大きくなっています。具体的には言えませんが、本当に様々なオファーがあります。意欲さえあれば本当に楽しく働けると思います。

―もちろん、それだけ大変だろうが?

ジウン:我慢、また我慢です(笑) 眠くても我慢、叱られても我慢(笑) スタイリストという職業自体が自分のために生きる人生ではないかもしれません。他の誰かのために献身的にならなければならない職業なので、たくさんのことを捨てなければなりません。どこで留学をして何が得意で、そういうマインドで来ると「何で私がこんなことをしなければならないの?」と思うようになります。私が良く言うことのひとつですが。「アーティストがステージに上がる前に靴紐が解けている。その時跪いて結び直してあげることが恥ずかしいなら、もうこの仕事は出来ない」名誉と富ではなく、誰かの足元で一生懸命に働かなければならない職業です。

―華やかではない。

ジウン:もちろんです。遅刻も禁止、メイクもしないようにします。スニーカーを履いて、髪を染めることも出来ません。

―ウソ! スタイリストなのに?

ジウン:私たちはアーティストを目立たせる職業です。自分のタレント性をアピールする時は近く来ますから。最初は他を気にせず、一生懸命に働くべきです。

―献身的にする姿勢。では、小さい時から何を準備すれば良いでしょう。

ジウン:私は雑誌を本当に一生懸命読みました。スクラップもたくさんしました。今考えてみると、それが全部作業に反映されました。普通、新入社員は自分身が何を好きなのかも知らないケースが多いです。自分のスタイルを残し、メモする習慣が重要です。そのような人はトイレの掃除をする時も花を飾るセンスから違います。センスはそのような些細なところから見えるものです。普段の習慣が重要です。

記者 : イ・ヘリン