【映画レビュー】「朝鮮美女三銃士」韓国の歴史とハリウッドの素材が融合“忠実に模倣”

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重いストーリーと荒唐無稽なコメディの間で面白さが失われたことが残念

「朝鮮美女三銃士」は最近韓国の映画界で巻き起こっている時代劇ブームと深く関連している。しかし、歴史的事実の再解釈を試みた「王になった男」や、官能的な要素を浮き彫りにした「後宮の秘密」、歴史的事実に意外な素材を融合させた「観相師」などとは方向性が違う。

「朝鮮美女三銃士」は、「シャーロック・ホームズ」を手本にした「朝鮮名探偵 トリカブトの秘密」や韓国版「オーシャンズ11」を掲げた「風と共に去りぬ!?~THE GRAND HEIST」に酷似している。これは、韓国の歴史とハリウッド的な素材とジャンルを結びつけたハリウッド製品の安価な“国産化”戦略である。もちろん、基礎となった映画がハリウッドのアクション映画「チャーリーズ・エンジェル」であることは子供でも分かるだろう。「朝鮮美女三銃士」は「朝鮮にも“チャーリーズ・エンジェル”のような便利屋がいたならば、どうなっていただろう?」という想像力を発揮した。


「朝鮮にもチャーリーズ・エンジェルがいたら?」という想像から

優れた剣術の実力者でリーダーのジノク(ハ・ジウォン)、金になることなら誰よりも先に立ち、宙返りと手裏剣を得意とする主婦の剣客ホンダン(カン・イェウォン)、愛嬌の欠片もないぶっきらぼうな性格で弓と爆発物を得意とするカビ(Brown Eyed Girls ガイン)は、ムミョン(コ・チャンソク)から与えられる様々な情報から賞金のかかった犯罪者を追跡する朝鮮最高の賞金稼ぎである。そして彼女たち「美女三銃士」は、王の密命を受け失われた“十字鏡”探すために乗り出す。

十字鏡に隠された秘密が清の軍事地図という設定からすると、「朝鮮美女三銃士」が舞台にしている時代は朝鮮が北伐計画(中国の歴史上で北に敵国がある場合にそこへ向けて軍を起こすこと)を推進していた孝宗(ヒョジョン)時代だ。実際、密かに進められていた北伐計画が、清と繋がっていた者たちによって密告された事件が孝宗時代にあったとされている。

「朝鮮美女三銃士」は、歴史を基にしているが歴史から何かを抽出して作られた作品ではない。スモーキーメイクの剣客が登場し、ヨーヨーとヌンチャクが武器として使われる「朝鮮美女三銃士」は、ファンタジー武侠映画として見るべきだろう。

「もし朝鮮にも“チャーリーズ・エンジェル”がいたらどうなっただろう?」というパク・ジェヒョン監督の言葉通り、「朝鮮美女三銃士」は朝鮮の歴史に“チャーリーズ・エンジェル”という素材を投げ入れた作品だ。「朝鮮美女三銃士」というタイトル(「チャーリーズ・エンジェル」の韓国でのタイトルは「美女三銃士」)、「チャーリーズ・エンジェル」の“チャーリー”と“ボスレー”を合わせたような役を担うムミョン師匠、画面分割で始まるオープニングからバレエダンスのシーンまで、かなりの面で「チャーリーズ・エンジェル」を忠実に模倣している。

「朝鮮美女三銃士」のB級ギャクスタイルから思い浮かぶ映画は、他でもないパク・ジェヒョン監督の前作「ウララ・シスターズ」だ。“M&A”を「マザーアンドママ」と解釈し、「ママのように気楽に任せなさいという意味」を叫んでいた「ウララ・シスターズ」のギャクスタイルは、「朝鮮美女三銃士」でも有効だ。

賞金稼ぎという本来の設定と、面白いギャグスタイルが力を発揮する「朝鮮美女三銃士」の序盤はB級映画として楽しめる部分が多い。まるで「アイアンマン」をパロディしようとして作られたような真鍮の鎧を着たシーンや、朝鮮時代には絶対なかったキックボードを連想させる乗り物での移動、ヨーヨーを利用したアクション、地形に偽装したソン捕卒(ポジョル:朝鮮時代の官員、ソン・セビョク)などがそうだ。男性ばかりの賞金稼ぎの中、女性たちが力と知恵を働かせて先にターゲットを狩る姿が与える快感も爽快だ。

しかし、サヒョン(チュ・サンウク)が本格的に登場する中盤以降、映画は賞金稼ぎの話ではなくなり、一族の仇と復讐のドラマに切り替わる。問題は深刻なドラマが強調されるほど“金目当ての賞金稼ぎ”という設定の面白さが失われる点である。重いドラマと荒唐無稽なコメディを脈絡なく行き来するせいで物語の一貫性が感じられにくい。深刻なサヒョンの恋人と余裕たっぷりの美女三銃士のメンバーとの行き来で忙殺されるジノクが可哀そうな程だ。

ストーリーにジノク個人の人生が絡み、ホンダンとカビの割合が縮小する点も残念である。ジノクだけに焦点が当てられる後半、ホンダンとカビは活動するが、共に戦う相手は共通の敵ではなく、ジノクの復讐のために美女三銃士一味が動員されたような印象が強い。

「チャーリーズ・エンジェル」や「ワンダー・ガールズ 東方三侠」がどのような形でキャラクターたちを魅力的に見せ、各自の、そして全員の物語を作り上げていくかを参考にしていれば、ホンダンとカビがこれほど冷遇されることもなかっただろう。アレクサンドル・デュマ・ペールの小説「三銃士」の名ゼリフ、「一人は皆のために、皆は一人のために(All for One, One for All)」が「朝鮮美女三銃士」にも必要だった。

最近、忠武路(チュンムロ:韓国の映画界の代名詞)では女優たちの居場所が益々狭くなってきているのが現状だ。ハ・ジョンウ、ソン・ガンホ、リュ・スンリョンなど男性俳優たちは全盛期を謳歌しているが、女性キャラクターを全面に出した映画は稀だ。韓国を代表する女優チョン・ドヨンは、オファーをくれる映画があまりないと訴えた。このような状況の中、女優を全面に出した「朝鮮美女三銃士」は存在自体に意味がある。それだけに、映画がこのような完成度で仕上がったことが悔やまれる。

記者 : イ・ハクフ、写真 : ウェルメイドフィルム、ショーボックス(株)メディアフプレックス