Vol.3 ― 「弁護人」ZE:A シワン“初心を忘れず、壁の外に広がる未来”

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写真=映画「弁護人」のワンシーン
毎日のように演技をするアイドル、いわゆる“演技ドル”が誕生している。アイドルそのものの寿命が短いため、アイドル活動と演技を並行しながら自然に俳優へと転向する傾向にある。テレビとスクリーンを通じて雨後の竹の子のように増えている演技ドルは大きく2つに分けることができる。忙しい海外活動の合間に副業のように演技をするアイドルと、新人俳優の姿勢で最善を尽くすアイドル。前者の場合、“演技が下手”という汚名を着せられることが多いが、後者の場合、演技をするアイドルから本物の俳優へと生まれ変わる足がかりとなる。アイドルグループZE:Aのシワン(25)は、幸い後者に当たる。

映画「弁護人」(監督:ヤン・ウソク、制作:ウィダスフィルム)を通じて初めて映画に挑戦したシワン。MBCドラマ「太陽を抱く月」、KBS 2TV「赤道の男」に出演して演技力を証明した彼のスクリーンデビューは成功した。釜林(プリム)事件に巻き込まれ、事件の中心に立ったジヌというキャラクターは、演技を専門に学んだ新人俳優たちでさえも難しい役である。“演技ドル”というハンディキャップを持っているにもかかわらず、シワンは勇気を出して選択し、見せ付けるかのようにやり遂げた。

実際ジヌの役割は何人かのアイドルに提案があった。しかし、様々な理由で出演を断り(今頃、後悔しているアイドルがいるはず)、結局シワンだけが「弁護人」を選択した。最初は懸念も大きかったが、結果的には杞憂となったわけだ。シワンは自身の地元である釜山(プサン)、そして釜山大学出身のジヌという役に愛着を持ち、「弁護人」に参加することになったそうだ。政治的理念は必要なく、ただ地元の先輩たちの物語に心が惹かれた。


シワンは撮影に入る2ヶ月前からヤン・ウソク監督と台本の読み合わせに入った。ジヌのキャラクターを分析して、着実に自身をジヌ化させていった。体重を増やしたり、減らしたりしながら外見上の努力をはじめ、拷問によって受ける物理的な苦痛よりも心理的苦痛を演じるために感情のコントロールに気を配ったという彼は、「弁護人」の撮影の間、うつ病(深刻なレベルではなかったそうだ)を煩ったりもした。

「外出を控え、自分の部屋に閉じこもって徹底的に一人になろうと努力しました。ジヌの感情に支配されていたため、ステージの上では元気のない姿でファンに接したりもしました。孤独になることを決めた僕のせいで、傷ついたファンも多かったと思います。申し訳ない気持ちでいっぱいです。それでも僕の選択を信じて待ってくれたファンがありがたくて、彼らにはいつも勇気をもらっています」

万全の準備の末に「弁護人」の撮影を始めたシワンはソン・ガンホ、キム・ヨンエ、クァク・ドウォンを見守りながら大きく成長した。無料で受けることのできた個人レッスンのおかげで飛躍的に実力を伸ばした。インタビューを通じて自ら跳躍できるきっかけになったと明かした彼は、一生忘れられない名場面として公判シーンを選んだ。自分の目で目撃した5回の公判は、想像もつかないほどの衝撃を抱かせたそうだ。直接見るだけでも、非常に勉強になったという。

「考えてみてください。ソン・ガンホ先輩が僕の目の前で大韓民国憲法の第1条2項『大韓民国の主権は国民にあり、すべての権力は国民から出る』と叫ぶところで、鳥肌が立ちました。それを直接見られるなんて。百聞は一見に如かずです。これ以上に良い経験がどこにあるでしょうか? 観客はスクリーンを通して俳優たちの演技を見ますが、僕はその場で弁護人ソン・ウソク(ソン・ガンホ)に直接会いましたから、その感動は言葉では説明できません」

シワンの演技人生は扉が大きく開かれた。韓国の映画界で面白いとされているシナリオがシワンの前に積みあがっているという噂話が出回るほどだ。演技ドルから俳優への完璧な安定軌道だ。このように平凡ではないシワンの演技人生の第2幕が開かれたが、彼には悩みが一つ出来たそうだ。それは「弁護人」の壁を壊せるのかという不安である。

「『弁護人』での演技が実際に、僕に出来る能力を超えていることをよく知っています。先輩たちとの相乗効果のおかげで100%を越えた120%の演技が出来たのです。『弁護人』では先輩たちの力を受けてこれだけやることが出来ましたが、これからもそれだけの能力が発揮できるかは疑問であり、観客をがっかりさせるのではないかと心配です」

大きな課題を抱えたような気分だというシワン。喜びの祝杯を上げることなく、未来のためにさらに鋭く刀を磨いている。彼が心配するように、ソン・ガンホやクァク・ドウォンがいなくても、キラキラと光を放つシワンになれるだろうか? “竜は一寸にして昇天の気あり”(大成する人は幼いころから非凡なところがあるという意味)という言葉があるように、少なくとも今の気持ちがこれからも変わらずに続くなら、「弁護人」の壁を壊して一歩進むシワンの未来は開かれているはずだ。

記者 : チョ・ジヨン