「応答せよ1994」ユ・ヨンソク“愛する時はチルボンのような純情男になる”

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※この記事にはドラマのストーリーに関する内容が含まれています。

言葉の余韻を残すチルボンの話し方のように、ユ・ヨンソクもゆっくりと話をするタイプだった。投げかける質問ごとに深く考え、特有の気さくな口調で答えを返し続けるユ・ヨンソクの姿には、まだ“ソウルの男性”チルボンの姿が色濃く残っていた。デビュー10年目に出会ったケーブルチャンネルtvNドラマ「応答せよ1994」は、彼をより大衆的なスターへと浮上させたが、その前から彼は映画「私のオオカミ少年」「建築学概論」「短い記憶」、MBCドラマ「九家の書」などで常に「あの俳優、誰だっけ?」という質問と共に注目を浴びていた。

話し方と同様にゆっくりと、あまり大きく欲張らずに積み上げてきた彼の経歴は、現在のユ・ヨンソクを様々な表現が可能な演技の幅が広い俳優へと仲間入りさせた。彼の顔には「応答せよ1994」が残したときめきと興奮がまだ残っていながらも、次の歩みへの期待感が漂っていた。

―ドラマの最後のシーンでチルボンが新しい愛に出会い、余韻を残した。

ユ・ヨンソク:昔の恋にまつわる思い出と新しい出会いに対する期待感を複合的に見せてくれるシーンだった。面白く表現されたようで個人的には気に入っている。

―最近、明洞(ミョンドン)でフリーハグイベントを行おうとしたが、あまりにも多くの人が集まり、急遽場所を変更するというハプニングがあった。

ユ・ヨンソク:あんなに多くの人が集まるのとは想像していなかった。人の力で統制できるような状況ではなかったので、誰かが怪我をするかもしれないと心配になった。そのため、世宗(セジョン)大学に場所を移し、200人ぐらいとハグをしてイベントを終了した。だが、200人ぐらいとハグをした時に胸がぐっと熱くなった。こんな寒い日に僕を見に来てくれたことに対してようやく実感が湧き、感動が押し寄せてきたようだ。

―撮影が進み、チルボンがソン・ナジョン(Ara)の夫ではないことを知った時、寂しくはなかったのか?

ユ・ヨンソク:いつからか、ソン・ナジョンの夫になるかどうかはあまり重要ではないと思うようになった。ソン・ナジョンに対するチルボンの気持ちを本気で伝えることができるのかということだけが重要になった。チルボンがソン・ナジョンの幸せのために思い切って離れるのも男としてかっこいいと思った。エンディングでチルボンにも新しい出会いに対する期待感を与えてくれたので満足している。

―撮影をしながらエンディングに関しては本当に知らなかったのか?

ユ・ヨンソク:俳優たち全員が本当に知らなかった。最後の台本をもらってソン・ナジョンの夫がスレギ(チョンウ)であることを知った。みんな最後まで自分がソン・ナジョンの夫だという気持ちで撮影に臨んだ(笑)

―でも、心の中ではチルボンとソン・ナジョンのハッピーエンドを少しは望んでいただろう?

ユ・ヨンソク:作品は最初からスレギとソン・ナジョンがまるで実の兄妹のように仲が良くて、その二人に集中する構図だった。その中でソウルの男性と慶尚道(キョンサンド)の男性の相反する魅力が浮き彫りになったが、ある瞬間から予想よりチルボンを応援してくれる視聴者が多くなり、僕の立場ではただ感謝するばかりだった。

―チルボンは女性視聴者の理想の男性のタイプを描いたキャラクターだった。片思いする姿が特にそうだったが、実際に片思いをしたことがあるのか?

ユ・ヨンソク:チルボンのように長くはないが、20歳の時に9ヶ月間ほど片思いをしたことがある。本当に大好きだった。演じながらあの時の感情がふと蘇った。「ああ、僕にもこんなことがあったな……」と久々に思い出した。

―シン・ウォンホ監督は演技を具体的に指導する代わりに、俳優たちが自由に演じるようにほったらかしだったと聞いた。

ユ・ヨンソク:そうだ。俳優たちを枠に閉じ込めず、気楽に演じられるように配慮してくれた。実は、僕は撮影前にどう演じれば良いかとたくさん悩んでいた。僕は実際には慶尚道出身なのにソウル出身のキャラクターを演じたので、方言が行き来する撮影現場に戸惑うこともあった。そのたびに監督が「台本は君の本来の姿を見て書いた部分が多いから、気楽に考えなさい」という話をたくさんしてくれた。最初はその話を聞いてもっとぎこちなくなったが、ずっと演じているうちにありのままの姿を見せることができたので今は良かったと思っている。

―“ソウルの男性”ではなく、慶尚道出身だったのか?

ユ・ヨンソク:6歳から高校の時まで晋州(チンジュ)で暮らしていた。

―それでは、“ぎこちない方言演技”が違う意味で本当にぎこちなかっただろう。

ユ・ヨンソク:そうだ。僕は(慶尚道)ネイティブだからリアルな方言が自然に出るのに(笑) それで、ソウル出身のスタイリストに台本を読ませてみたら、その人が本当にぎこちない慶尚道方言で台詞を読んでいた。最初はそれを聞いて真似をするように演じた。

―生まれも育ちもソウルであるチルボンを演じながら、ソウル出身の人について新たに発見したことがある?

ユ・ヨンソク:シン・ウォンホ監督がソウル出身なので、監督からヒントを得た。地方の人だけが感じられるソウルの人だけの可愛いところがある。例えば「タルタリ(スリッパの慶尚道方言)」のような単語が聞き取れずに聞き返してきた時、その姿がとても純粋に見える。

―チルボンはゆっくりと話すタイプだった。特にソン・ナジョンに何かを話す時がそうだった。わざとそうしたのか? それとも普段の習慣なのか?

ユ・ヨンソク:うーん……。実際に感情というのは台詞を通じてではなく、台詞と台詞の間の呼吸や間で伝えるものだと思っている。それで所々に一呼吸をおくことが重要だと思った。実際に話す時もそうして話す方なので、少し間が抜けているように見える時がある(笑)

―他のキャラクターたちは自分の素直な感情を比較的多く表すが、チルボンは感情を抑えた演技が多かった。

ユ・ヨンソク:恋愛模様の中心に立っているキャラクターなので、感情を率直に表すシーンがあまり多くなかった。だから、ソン・ドンイル先輩やTiny-Gのドヒが羨ましい時もあった。でも、チルボンなりに与える穏やかな面白さがある。例えば、ホダン(しっかりしているように見えるが、どこか抜けている人)のような姿を見せるのが可愛いと思った。

―チルボンが寂しがりやだということが視聴者たちの心を動かす部分もあった。

ユ・ヨンソク:チルボンがソン・ナジョンや下宿屋の人々を愛するしかなかった理由は、家族がいないからだった。いつも賑やかで言い争いながらも愛情に溢れる友達や、たまに度が過ぎることもあるが母親のように、人の面倒を見てくれるソン・ナジョンにチルボンが惚れたのは、彼が心の中で家族に対する寂しい感情を持っていたからだ。

―撮影現場で可愛い姿を頻繁に見せ、ファンたちの間では「ビーグル」というニックネームで呼ばれていたと聞いた。

ユ・ヨンソク:みんな大変なので、ふざけながら面白く撮影をした方がいいと思った。それに、チルボンは気さくに笑うシーンが多いので、僕自身も気分を盛り上げておいた方が気楽に撮影をすることができる。それで、わざとより明るく振る舞おうと努力した。

―放送後、筋肉質の体が話題になった。

ユ・ヨンソク:キャラクターの特性を生かすために、いつもよりもバーベルを使った筋トレを熱心にやって、体力管理や投球練習も行った。以前は身長だけ高くて貧弱な体格だったが、軍隊から戻ってきたら確かに体格が良くなった。

―所々でチルボンが見せてくれた鋭い目つきも印象的だった。

ユ・ヨンソク:目つきが鋭く見える時は監督と話し合って撮り直したりもした。僕は鋭い感じで演じたわけではなかったのに、そう見える時もあったので。たぶん、前の作品の残像があってそう見えたんだと思う。それで、最初は色々と変えてみた。チルボンは純情派ではあるが職業が運動選手だから男らしい面があり、投手という特性上、ポーカーフェイスが上手で判断力にも優れた人物だ。だから、僕が持つ鋭いイメージもキャラクターを作るのに一役買ったと思う。

―チルボンのように純粋な雰囲気のフンナム(癒し系の男性)を演じたのは初めてだったのか?

ユ・ヨンソク:今まで演じた人物の中で一番前向きで明るいキャラクターだった。チルボンは純粋な恋をする気持ち自体が前向きな人物だ。心に痛みを抱えながらも、友達の前では笑う姿を見せるチルボンを演じているうちに、僕も前向きな性格に変わっていった。

―チルボンは今どのように暮らしていると思う?

ユ・ヨンソク:誰かと結婚して、幸せに暮らしていると思う。

―友達のお願いなら、5000万ウォン(約500万円)の保証金ももらわずに家を貸したりして?

ユ・ヨンソク:年に数百億ウォン(数十億円)の年棒をもらっているメジャーリーガーだから、20年も付き合った親友のためならそれぐらい容易いことだ(笑)

―今回の作品に先立ち、映画「私のオオカミ少年」「ファイ 悪魔に育てられた少年」などで強烈なイメージの悪役を主に演じてきた。今回の作品でイメージチェンジに確実に成功したと思うのか?

ユ・ヨンソク:悪役ばかり演じてきたわけではないのに、人々の記憶に残る多くの作品が悪役を演じた作品だった。でも、僕の考えではこれまでのキャラクターも悪役ではなかった。ただ、愛の邪魔者だっただけだ(笑) 悪役だけを演じる俳優ではないのに、そのような先入観が知らず知らずのうちに固まってしまったようだ。でも、今回「応答せよ1994」で純粋なキャラクターを演じ、俳優として2つのキャラクターをどちらも演じこなせたようで意味深い。

―「応答せよ1994」で一番印象的だったシーンと台詞は?

ユ・ヨンソク:ターミナルでソン・ナジョンに告白しながら「ハッピーニューイヤー」と言ったシーンが、理由は分からないけどなぜか一番記憶に残っている。

―俳優ユ・ヨンソクにとって1990年代はどんな時代だったのか?

ユ・ヨンソク:どうしても幼い時だったので、大きな悩みを抱えずに楽しく過ごした時期だったと思う。当時の歌を聞いたらその時の思い出が頭に浮かんできて、「色々と楽しみながら過ごしたな」という気がした。振り返っていると、さらに懐かしくなった。僕は歌詞がちゃんと聞こえる歌が好きなので、90年代の歌が気に入っている。

―昨年末にデビュー10周年を迎え、デビュー作だった「オールド・ボーイ」の公開10周年のポスターも撮影した。

ユ・ヨンソク:10年前に公開された日と同じ日に再公開されたからなのか、特別な気がした。ポスターの撮影現場で久しぶりに共演した先輩たちにお会いした。20歳の時に何も知らなかった後輩が大きく成長したとみんなが褒めてくれて胸が一杯だった。

―独立映画やラブストーリー、スリラーなど、ジャンルを問わずに様々な作品に出演してきた。

ユ・ヨンソク:少しでも以前と違う姿を見せようと悩みながら歩んできただけだが、時間が過ぎて作品が積み重なり、良い評価を受けるようになって嬉しい。

―様々な感情を表現できる顔という点も、多様な作品に出演できる強みになったようだ。

ユ・ヨンソク:イケメンだったり独特な個性を持つ俳優が多く、そんな俳優たちが愛されているじゃないか。それで、僕は最初に地味だという話をたくさん聞いた。僕自身もそうだと思った。別にハンサムな顔でもないし、だからといって不細工な顔でもない(笑) でも、そんな地味な顔が人々にポジティブに受け入れられるようになって本当に良かった。演技を始めた最初の頃は、僕の顔からは明確なイメージが浮かんでこないとよく言われて、コンプレックスだった時もあった。でも、ある瞬間からは自分のそんな点を認め、自信を持って演技に臨んだ。そうすると、それが自分の強みになった。今は僕の顔から色んなイメージを描けると話してくれるので、嬉しいばかりだ。

記者 : チャン・ソユン、写真 : ク・ヘジョン、翻訳 : ナ・ウンジョン