「サスペクト」コン・ユ、優しさとセクシーさの代わりに恐ろしく冷徹にイメージチェンジ

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さすがだ。これがコン・ユである。誰がこの男にイメージチェンジを許したのだろうか。甘いラブコメキングとして、映画やドラマでブームを巻き起こした彼が、今度は映画「サスペクト 哀しき容疑者」(監督:ウォン・シンヨン、制作:Green Fish、配給:SHOW BOX)で割れた腹筋と荒涼とした目つきで帰ってきた。これ以上にない優しさとセクシーさの代わりに、恐ろしさと冷徹さが漂う北朝鮮の特殊要員チ・ドンチョルへと変身した。期待しなくても常に期待以上のものを見せてくれたコン・ユ。この男の変身は今回も噂通りである。

「僕にこの作品を背負えるだけの資格があるのか疑問だった」

―「サスペクト 哀しき容疑者」の公開が目の前に差し迫って来た。気持ちは?

コン・ユ:毎日緊張してドキドキしている。監督の言葉を借りれば、心臓がバクバクする気分と言うべきだろうか。心配と期待が半分半分だ。

―コン・ユのアクション、ここに制作費100億ウォン(約9億9千万円)の大作。自身にとっても素晴らしい挑戦だったと思う。

コン・ユ:その通りだ。「サスペクト 哀しき容疑者」は本当に大きな挑戦だった。作品のオファーを受けた時、最初は断った。理由は僕にこのような大きな作品を背負えるだけの資格があるのか疑問だったからだ。もう一つは似たようなアクション映画に対する偏見を持っていたからだった。その偏見をウォン・シンヨン監督が破ってくださった。

―ウォン・シンヨン監督の説得が通じたのか?

コン・ユ:僕は出演の有無を変えたりしないタイプだが、それを覆すほどウォン・シンヨン監督の話が心に響いた。監督が積極的に勧めてくれたこともあるが「殴打誘発者たち」を見ながら、いつかは監督の作品に是非出演してみたいと思っていた。監督は「サスペクト 哀しき容疑者」が決してアクションだけを見せる作品ではないとして、「アクションというジャンルであることは確かだが、派手なビジュアルに偏ることなく本当に観客に伝えたいことはストーリーである」と話してくれた。そのため、毎瞬間きつくて大変だったが、感謝する気持ちで撮影をした。初めて足を踏み入れたアクション演技で良いキャプテンに出会うことができ、一つ学んだ気がする。

―コン・ユと言えば思い浮かぶイメージはどうしても“優しさ”だ。「サスペクト 哀しき容疑者」を選択したことは、イメージチェンジに対する悩みによるものか?

コン・ユ:作品を選択する時に「自分は今こんなイメージで固まっているよな?だから、今度はあれをやってみないと」などと考えながら決めたりはしない。華やかなアクションやイメージチェンジだけを考えていた場合、あえて「サスペクト 哀しき容疑者」を選択しなかったはずだ。この作品は俳優として出演したい作品だったから選択したもので、1歳でも若い時に選択して良かったと思う(笑)

―「サスペクト 哀しき容疑者」チ・ドンチョルは北朝鮮のスパイだ。アクションだけでなくキャラクターの面で気をつけたことがあるのか?

コン・ユ:正直に言うと、これまでに撮影した映画と比べて、何も考えずに演技をした。冷徹なチ・ドンチョルになるには最も良い方法だと思ったからだ。実質的に悩んだ部分は訛りだ。観客を完全に排除することはできないが、作る側の立場ではディテールを気にする必要があった。チ・ドンチョルはスパイを素材にした他の映画のように、現役のスパイが派遣されたわけではなく、元スパイということだ。出発点自体が違うため、話し方から違うキャラクターを作り出す必要があった。

―撮影が長引いただけに、コン・ユの姿はほとんど見ることができなかった。長期戦で難しかった部分は?

コン・ユ:マラソン撮影と言うべきだろうか。体力の消耗が激しかった。口癖のように言っている言葉だが、1歳でも若い時に撮って本当に良かった(笑) 映画を撮影をする間、「サスペクト 哀しき容疑者」に没頭して集中するしかなかった理由には、いわゆる“よそ見”をしていて怪我をしたり、体調を崩せば、それが直ちに映画に支障を及ぼすためだ。撮影が長期戦になるほど、僕が崩れると撮影回数が増え、多くのスタッフたちが僕一人のために待つ必要がでてくると思い、見た目の管理よりも、体力を養うために地道に運動をした。

―運動の結果、上半身の露出写真で話題を呼んだ。

コン・ユ:確かに期待してくれても良い(笑) 体を鍛えるしかない、運動をしようとしなくてもするしかないシナリオだった。あれを読んだら誰でもジムに駆けつけたはずだ(笑) 公開された映画の写真は、チ・ドンチョルを説明するモンタージュである。3%という熾烈な競争を勝ち抜いて最精鋭特殊要員になるため、凄絶になるしかならず、顔もそれに合わせる必要があった。正直なところ、僕はもう少しやつれたメイクをして、顔の肉ももう少し落としたかったが、周りからモンタージュシーンは映画全体の1%にしかならないとして引き止められた。もっと強烈に見せられなかったことが残念だ。僕がこのシーンにこだわった理由は、一瞬で通り過ぎるイメージカット一つでチ・ドンチョルという人物が説明されるからだ。その後展開されるチ・ドンチョルのアクションシーンに説得力を持たせるシーンでもあった。だから個人的に好きなシーンでもある。

―その姿は、映画で女心を揺さぶる一撃ということなのか?

コン・ユ:自分の口でいうのは恥ずかしいが、女性ファンには数秒間のサービスになるのではないだろうか(笑) 予告編ですら使えないシーンで、映画を通してだけ見られるシーンだ。プリプロダクション(撮影前の作業期間)の段階で、監督に「コン・ユさん、この瞬間、観客の息を止めて欲しい」と言われた。全力を尽くして撮影をして、撮影後はほぼ気絶した状態で家に帰った。目から血が出そうな気がするほど、目が充血したシーンである(笑)

―海外ロケはどうだった?特別なエピソードはあるのか?

コン・ユ:一言で言うと驚きの連続だった。最も驚いたのはプエルトリコで現地の人たちが僕のことに気づき、応援してくださったことだ。「中南米で関心を持つ人はいないだろう」と思っていたが、夜明け前から僕の広告写真がプリントされたTシャツをお揃いで着て、人形に僕の写真までつけて撮影現場に来てくださった。撮影場所は観光地だったが、昼過ぎになるとものすごい人だかりができて、みんなで慌てたことを覚えている。

―中南米で有名になった理由は?

コン・ユ:ドラマ「コーヒープリンス1号店」から映画「トガニ 幼き瞳の告発」までVOD(ビデオ・オン・デマンド)で見たそうだ。本当に不思議だった。現場に来たファンたちに片言の韓国語で「愛しています。結婚してください」と言われ、知らぬ間に浮かれた気分になっていた。南米の感性が韓国と似ていて、韓国ドラマや映画の感性が彼らと合うようだ。そこにいる間、韓国人俳優というプライドを感じることができて、幸せだった。

―現地のスタッフもびっくりしたと思うが。

コン・ユ:プエルトリコ現地のプロダクションは「ブラック・スワン」のようなハリウッド映画の有名作品を数多く制作した会社である。代表が女性の方で、お世辞だと思うが「ジョニー・デップ、ジェニファー・ロペスもここに来たことがあるが、こんなに熱狂的な歓迎はなかった」と言ってくれた。また、僕が実感できずにいると「どうしたの、世の中は狭いものよ」とも仰った。胸に響いてくる言葉だった。アメリカのスタントチームもそこでは本当に有名だったが、僕たちに写真に握手まで頼みながら「SNSをしているのか。韓国に帰ってから連絡しても良いのか」と興味を示した。韓流の力は本当に凄いものだと実感した。

―最近、「サスペクト 哀しき容疑者」の広報の途中で女子大学が大騒ぎになったことがあるそうだが。

コン・ユ:このような広報が初めてで慣れてないこともあり、嬉しくてありがたく、とにかく妙な気分だった。二十歳の学生たちがおじさんの歳である僕に「オッパ」(兄の意。女性が親しい年上の男性やスターを呼ぶ呼称)と呼んでくれたのでありがたく、特にソウル女子大学は僕の母親の母校なので他の大学とは違ってまた格別だった。そのため、綺麗な妹たちだと思って、本当に下心なくぎゅっと抱きしめた(笑) 型にはまった広報というよりも、実際にファンと会うイベントのような広報だった。

―コン・ユがSBS「ニュー!日曜日は楽しい-ランニングマン」(以下「ランニングマン」)に出演とは、予想できなかった。

コン・ユ:僕も自分が「ランニングマン」に出演するとは、夢にも思わなかった。本当に面白かったが、それだけ大変だった。午前6時30分に家を出て、深夜0時近くに帰った。改めて「ランニングマン」のレギュラー出演者たちがすごいと思った。ユ・ジェソクさんがタバコを止めたと聞いていたが、その理由がはっきりと分かった。体力の消耗が想像以上だった。アクション映画を撮影した僕でさえゼイゼイ言っているのに、彼らはその中でも笑いを失わない。「バラエティ番組を見るときに簡単に見てはいけないな、簡単にチャンネルを変えてはならないな」と思うようになった出演だった。そして、実際にやってみるとリアルそのものだった。キム・ジョングクさんは唇が切れて、僕は額と鼻にあざができた。僕にとって新世界だった。

―30代半ばだが、恋愛や結婚はしないのか。

コン・ユ:最近、“4大公共財”と言われた。芸能界の独身俳優の中で僕とカン・ドンウォン、ソ・ジソブ、ヒョンビンさんが含まれていた(笑) 歳のせいかもしれないが、恋愛にどんどん鈍くなっているのは事実だ。一人でいることに慣れている。さらに、僕は誰かを探し求めるほどアクティブな人間ではない。若かった頃は好奇心でトライすることもあったが、今は完全に受動的な人間になってしまった。縁は自然に結ばれるものだと思う。先日、実家でお見合いの話が出てびっくりした(笑) 計画を立てたりとか、この辺りまでには必ず結婚しようという時期を決めたわけではないので、まだ心だけには余裕がある(笑)

―「サスペクト 哀しき容疑者」がチョン・ドヨンの「マルティニークからの祈り」、ソン・ガンホの「弁護人」と一緒に上映される。

コン・ユ:なぜよりによって!嘘ではなく、ソン・ガンホ、チョン・ドヨン先輩は僕が最も好きな俳優だ。一方では僕の映画はもちろん、2つの映画とも本当に見たくて、成功して欲しい。映画を愛する観客にとっては12月はかなり楽しい月になるのではないだろうか。全部見ていただきたい。

―「サスペクト 哀しき容疑者」の観客にどう評価されたいのか。

コン・ユ:同情に訴えたくはない。このようなアクションスパイ映画はハリウッドの「ボーン・アイデンティティ」シリーズの前後に分けられる。「ボーン・アイデンティティ」シリーズと比べられるのは光栄だが、韓国の映画市場で、マット・デイモンの出演料の半分にも至らない制作費で作った作品であることを考えると、我々の映画は独立映画に近い。「あれ、ボーンシリーズで見たことあるんだけど?」と言われれば何も言えない。あれこれ言い訳や、惨めな訴えは悪影響を及ぼすだけだと思う。我々の方式と、我々ならではの情緒を感じていただければ幸いだ。色眼鏡をかけずに映画を見ていただきたい。

記者 : チョ・ヨンギョン