【映画レビュー】「ハート泥棒を捕まえろ!」ヒット作「建築学概論」「7級公務員」の長所を取り入れたが…

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写真=ソネットエンターテインメント、シムエンターテインメント、ロッテエンターテインメント
彼、または彼女の全てを知り尽くしていると思ったのに、本当の正体は予想もつかないものであったというストーリーは、映画で珍しいものではない。

トップクラスの殺し屋夫婦の殺伐とした夫婦喧嘩を描いた「Mr.&Mrs.スミス」や、国家情報院(韓国の情報機関)社員のハラハラするロマンスを描く「7級公務員」などは、このような題材の代表作と言える。一方身分を隠す設定としては、映画「キス&キル」「甘く、殺伐とした恋人」「トゥルーライズ」「ザ・スパイ シークレット・ライズ」が思い浮かぶ。完璧に知り尽くしていると思っていた恋人が、実は“他の何か”であるという設定は、それ自体で興味深いものだ。

検挙率100%を誇る専門プロファイラーと、彗星のように現れたルーキーの泥棒。正反対な二人が出会う映画「ハート泥棒を捕まえろ!」も、お互いの隠された正体を活用している。そこに“初恋”がそっと加えられ、映画は捕まえることを生業としている男性と、盗み出すことを生業としている女性の再会に変わる。「あなたの初恋は今何をしていますか」と質問していた「建築学概論」から借用すると、「ハート泥棒を捕まえろ!」は「あなたの初恋は今何を盗んでいますか」を問う、「犯罪学概論」とも言える。


泥棒になって現れた初恋相手?…ユニークな発想がもったいない、お粗末なキャラクター

犯罪者の心理を把握し事件を解決する完璧なプロファイラーイ・ホテ(チュウォン)は、調査していたひき逃げ事件の容疑者ユン・ジンスク(キム・アジュン)に出会う。しかし、ジンスクは10年前“イ・スクジャ”という名前だったホテの初恋相手だ。ホテはジンスクに再会したという嬉しさもつかの間、ジンスクの正体が1つずつ明らかになるにつれ、事件は手におえないほど大きくなる。無免許のひき逃げ犯だと思われていたジンスクの本当の正体は、朝鮮の青華白磁とイギリス王室のダイアモンドなどを盗んだ、窃盗犯であった。

「ハート泥棒を捕まえろ!」には、警察のホテと泥棒のジンスクの危険極まりないロマンスが与える、予測不可能な笑いがある。犯罪者の心理を見抜けるプロファイラーと自負していたが彼女の気持ちだけはわからなかったホテ。全てを盗むことができると思っていたが、彼の心だけは簡単に盗めなかったジンスク。この二人が見せるすれ違った愛は、心を切なくさせるところもある。しかし「ハート泥棒を捕まえろ!」のユニークな力は、ここまでだ。

「ハート泥棒を捕まえろ!」は、偶然と飛躍を絶えず乱発し続ける。ホテが追っていた事件に、偶然ジンスクがひき逃げ犯として紐づくのは、二人の再会のために必ず必要ではあった。問題はそれからだ。ひき逃げ事件は、ジンスクの性格と行動につながる。なぜ完璧を追求する大物泥棒が無免許運転をしたのかという質問に、ただ「つまらなかったから」という答えが返ってくる。また、ジンスクは自分の過失による事故に対してはあまり反省もしない。そして映画では、そのような部分に対してあまり深く考えていない。

ひき逃げ事件で警察に簡単に捕まるようにしているのも、ジンスクが泥棒を働くときに追求する慎重さや完璧性とは程遠い。警察の追っ手が近づいているにもかかわらず、平然とクレジットカードで決済し携帯で何ごとも起きてないように話しており、「どうぞ捕まえてください」とでも宣伝しているかのようだ。泥棒のジンスクと普段のジンスクの設定があまりにも違いすぎる。

盗んだものをそのまま返せばいいんじゃないという無邪気な発想をするジンスクを見ていると、果たして考えるということをしたことがあるのか気になるほどだ。このような中で映画は、ホテとジンスクの初恋の時代を見せながらジンスクの違う姿を観客に突きつける。一貫性など見つけようがない。


お粗末な展開だが、俳優たちのコミカルな演技は見もの

注目すべき部分は、ジンスクに扮したキム・アジュンのコミカルな演技だ。すでに「カンナさん大成功です!」「マイPSパートナー」などで検証された彼女のコミカルな演技は、複数の才気あふれるシーンを作り上げた。お腹は空いてないかという質問に、「(刑務所に)入ったら豆ご飯一杯食べられるはずだから」と答えたり、街中に貼られた手配ポスターを見ながら「手配ポスターもカップルね」という台詞で彼女の一風変わった魅力は光を放つ。

キム・アジュンの全力投球にもかかわらず、「ハート泥棒を捕まえろ!」はあまり面白くない。チュウォンは似合わない役で手に負えなく、特別出演したパク・チョルミンやチャ・テヒョンはいつものイメージで出て来るだけでつまらない。ホテのライバルであるオ警衛(ペク・ドビン)は、まるで「Two cops」のイ刑事(キム・ボソン)を連想させるパーマに服装、ましてや手袋まではめて笑わせようとするが、ぎこちなさの方が大きい。一人だけ突飛で、かえって不自然に感じられるのだ。

「ハート泥棒を捕まえろ!」を制作したロッテエンターテインメントは、これまで「7級公務員」や「建築学概論」のような良い映画を作ってきた。しかし、「ハート泥棒を捕まえろ!」は初恋の思い出を呼び起こさせた「建築学概論」と、互いの正体を知らないコミカルな状況である「7級公務員」の長所を適当に混ぜてもう一つの作品を作ろうとしているような安易さが残念な作品だ。

「僕は、僕のプロファイリングを確信しています」というホテの自信が「ハート泥棒を捕まえろ!」のシナリオにあったならば、それ以上言うことはない。そのような自信があったからこそ出てきた映画なのかもしれない。映画でホテは、他の警察に「犯人を捕まえるとき、一番重要なことは何でしょうか」と質問する。「ハート泥棒を捕まえろ!」の制作陣にとって、映画を作るとき一番重要なものは何だったのか、気になるところだ。

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記者 : イ・ハクフ