Vol.2 ― 「ザ・ファイブ」キム・ソナ“ハ・ジョンウの大きな足でお腹を蹴られて気が遠くなった”

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暴漢に棒で殴られ、下半身が麻痺したウナ。目の前で夫が死に、娘が死んだ。この体を捧げてでも怪物のようなあいつを殺したいと、復讐のために不自由な体で銃を手に入れようとした。しかし、それも容易なことではなかった。体の臓器を売ってまで集めた4人の協力者はそんなウナのことを信じようとせず、裏切りを計画する。世界はこのか弱い女性にどこまでも容赦なく残酷だった。

スリラー映画「ザ・ファイブ」(監督:チョン・ヨンシク、制作:シネマサービス)でウナは世の中で最も不幸な女性だ。温かく抱きしめ、慰めてあげたい彼女を、女優キム・ソナ(38歳)が演じた。結婚はもちろん、子供も産んだことのない彼女が、見事に切ない演技をこなした。女優はやはり女優なのだ。

すでに何度も言及されてきたことだが、キム・ソナは「ザ・ファイブ」のキャラクターに完全に溶け込み、撮影中に涙を止めることができなかったという。まるで自分のことのように、娘が死亡した場所だけを見ても心の底から込み上げるものがあり、溢れ出る涙を止めれなかった。「ザ・ファイブ」を撮影する間、彼女はウナだった。公開を控えた今でもウナから離れられずにいる。

「本当に上手くできないのが、キャラクターから離れることです。不思議なことに、私はそれが下手なんです。音楽を専攻しているからなのか(キム・ソナはアメリカのボールステイト大学でピアノを専攻した)、耳がデリケートみたいで。今も街で私が出演したドラマや映画のOST(劇中歌)が流れると、その時の感情が戻ってきます。こういうのがどんどん激しくなって、本当に苦労しました。『ザ・ファイブ』でもウナの世界に完全に溶け込みました」

撮影現場でも集中度は相当なものだった。厳しい環境の中でも良い演技ができたのは、ウナに溶け込んだキム・ソナがいたためだった。そして、抜群の一体感を成し遂げた仲間たちとの呼吸があったためだ。キム・ソナは撮影当時の気分を思い浮かべ、突然インタビューのスタッフに席を外してほしいとお願いした。そして室内の照明を消し、一瞬にして静寂の状態を作った。キム・ソナは記者の目を見ながら「このような状況です」と説明した。

「今、私だけに完全に集中するようになりましたよね? 呼吸というのはこういうものなんです。こうやって相手の目を見て、相手を理解し、反応するんです。『ザ・ファイブ』は私にこのような環境を作ってくれました。照明、撮影、美術、俳優が一丸となって同じ場所へと走っていきました。そのような状況の中で私が役に溶け込めないわけがないですよね。本当に感動的でした。『ザ・ファイブ』に参加したスタッフや俳優たちはみんな私に感動を与えてくれる人たちでした(笑)」

死ぬほど辛かったというあの頃の記憶を振り返ると、まず顔をしかめるが、口元には微笑が浮かぶというキム・ソナ。デビュー以来初めての挑戦だったスリラージャンルも重要だったが、ジャンルを離れてスタッフと俳優の呼吸も大事であるという。「科学忍者隊ガッチャマン」顔負けのぴったりと合った呼吸でなければならない。

ところでキム・ソナは「唯一、息が合わなかった瞬間があった」と打ち明けた。キム・ソナの話す“息が合わなかったシーン”とは、暴漢を捕まえるために銃を密売するシーンであった。密売業者に手を踏まれるシーンで、実際に手を踏まれて指が痛かったという。すでに知られているが、キム・ソナは「ザ・ファイブ」を撮影しながら肩の神経を怪我するという事故にも遭った。

「相手は演技経験が多くない俳優でしたが、靴を履いたまま実際に私の手を踏みにじるんです。本当に痛かったです。この瞬間だけは集中することができませんでした。映画をご覧になれば分かると思いますが、密売業者に対して絶叫するシーンは本当に痛くて絶叫しているんですよ(笑) 以前もこのようなことが一度あったのですが、『恋の潜伏捜査』(2005年、監督:パク・グァンチュン)の時でした。あの頃はまだ新人だったハ・ジョンウさんとアクションシーンを撮影しました。ハ・ジョンウさんが私のお腹を足で蹴るシーンでしたが、本当に強く蹴飛ばされてしまったんです。すごく痛かったですよ。お腹だけ痛いのではなくて、もう胸の上まで痺れてきて『君、足は何センチ?』と叫んじゃいました。すごくショックだったんです(笑) ハ・ジョンウさんも驚いて『30センチです』と震えながら答えていました。その瞬間、スタッフたちが私の怪我を心配するよりも爆笑してしまいました。呼吸って本当に重要なんですね。本当にハ・ジョンウさんの大きな足で蹴られた時は、気が遠くなりました(笑)」

記者 : チョ・ジヨン、写真 : チョ・ソンジン