【コラム】INFINITE「また戻ってきて」から「DESTINY」まで、執着男の歴史 ― カン・ミョンソク

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振り返ってみると、INFINITEが歌ってきた歌の主なテーマは「執着」だった。別れた恋人に何度も戻ってきてと言い(「また戻ってきて」)、自身を愛してくれないあの人を絶対捕まえると誓い(「BTD」)、別れたあの人がどこにいても追いかけると決心した(「追撃者(The Chaser)」)INFINITEが7月16日にリリースした「DESTINY」もまた、運命を言い訳に自身を捨てた相手を引き止めようとする執着の歌だ。そこで、デビューから今日に至るまで、彼らが見せた執着の歴史を整理してみた。

「また戻ってきて」:幸せに終わる恋なんてない

写真=Woollimエンターテインメント
INFINITEはデビュー曲「また戻ってきて」から別れた恋人を切実に探した。彼女と別れてから振り返ってみると、夜も眠れないほど頭にきて、心の中は後悔と会いたい気持ちでいっぱいだ。愛する人を手放した自身に怒りを感じる。サビの「戻ってきて 戻ってきて/また戻ってきて」は、だらだらとした説明を省き、今言いたい言葉だけを繰り返すことで、男の切ない気持ちを強調する。そんな中、次第に「幸せに終わる恋なんてない」「時間が解決してくれる」と自身を慰めようとするが無駄だ。結局は「僕には君ひとりしかいない」と告白しながら少しだけ話そうと「一度だけチャンスが欲しい」と哀願する。良く言えばひとりの人だけを愛する純情、悪く言えば別れてからも未練を捨てられない執着の始まりだ。一方、INFINITEはメンバー全員が息ぴったりの群舞でチームのアイデンティティーをはっきりと刻み込んだ。

「She's Back」:“彼女が僕に来る来る来る”との催眠

「She's Back」もまた失恋した男子が主人公だった。しかし「また戻ってきて」のように必死に哀願したりはしなかった。そのかわり、自身の場所でただ頑張って暮らしていれば、彼女は戻ってくると自身に呪文をかける。「彼女が僕に来る来る来る」とのサビは現実ではなく、ただ男が自身に催眠をかける姿だ。相手の本心は知らず、とにかく帰ってくると信じている点で「She's Back」も執着の歌だといえる。皮肉なことにメロディは軽く軽快になったが、だからこそむしろ、切なさは極大化される。戻ってきてと言うことすらできず、その場で毎日黙々と待ちながら「君に恥ずかしくないように」生きると誓う、仕事しかできない男なのだ。しかし、このような歌詞とは違い、MVは海辺を自由に駆け回るINFINITEの姿を盛り込み、初々しい少年のイメージを描いた。

「BTD」:“僕の気持ちだけは執着じゃない”と繰り返すだけ

舞台の上でニコニコと笑っていた少年たちの姿はなく、INFINITEは再び別れの前で悲壮な男となって戻って来た。それでも変わらず続くのは執着だ。さらに今度は付き合ったこともない人だ。1人でその人の周りを付きまとい、一緒にいたい気持ちを伝えたが、相手は簡単に受け入れてくれない。そのように傷ついた心は怒りに変わり「散々だ」との言葉を吐き捨て、もどかしい気持ちを表現する。「もう、何もかも放っておいて」との言葉にも簡単に諦められないが、だからと言って勇気を出して彼女を引き止められるわけでもない。「僕の気持ちだけは執着じゃない」と繰り返すだけだ。しかし彼女の影を追い、彼女だけを見て「君がいくら僕を捨て、離れても僕は君を絶対逃さない」と強く誓う歌詞を見ると、その執着はなくなっていないことが分かる。INFINITEがうつ伏せの状態で一気に立ち上がる“さそりダンス”で少しずつ有名になり始めたのもこの時だ。

「僕のものになって」:INFINITEの直球勝負

いわば“直球勝負”だった。好きだとが、愛しているとシャイに告白するのではなく、ストレートに“僕のものになって”と叫んだ。何も言えず、その人の周りを付きまとうだけだった以前の姿を消してしまったのである。もちろん、今回も執着を振り払うことはできなかった。他の人を愛していたあの人の姿を昔から見守ってきており、「月のように君の周りを回っていた」と告白する。そして勇敢にもその全ての話を打ち明ける。今はその人を守る勇気ができたこと。同じ執着でも、過ぎ去った恋の跡を忘れられるように責任を取るとの男の告白には、誰でも心を奪われるしかないだろう。そのためかINFINITEはこの歌で初めて音楽番組で1位となった。デビューから1年3ヶ月でやっとファンを“僕のもの”にしたのである。デビュー初期に社長が約束した通り、宿所もまた「ドアを開けると直ぐ道路で、屋根からは水が漏れ、壁紙にはカビが生えている」所からラグジュアリーなところに引っ越すこともできた。

「Paradise」:彼女の夜食に慣れてしまう

やっとハッピーエンディングを迎えるのかと思いきや、また彼女が離れてしまった。男は彼女に君がいないと生きていけないと言う。男にとってこの世界と人生の意味は、ただ愛するその人がいてこそ完成されるものだからだ。信じがたい現実のなかで、男は彼女が自身のことを愛してはいるが仕方なく離れたんだと、無理やり自分自身を説得させる。そしてどこかに隠れていつも彼女を見守り、彼女もまた自身を見守っていると信じる。もちろん実際はそうでないことを知りながらも、今のこの状況を避けたいのである。結局彼にできることは、彼女と愛し合った時間の思い出を振り返ることだけだ。「毎晩君で満たされていた僕/そう、なれた体を今は涙で満たすtime」とのラップの歌詞について末っ子のソンジョンは「彼女が毎晩夜食を作ってくれることに慣れてしまい、彼女が自身を離れてからは夜食を食べられず涙が出る状況」と可愛い解釈を披露したこともある。

「追撃者(The Chaser)」:執着もまた恋だろう

「気の毒に思わないで/酷く僕を捨てて離れてもいい/君が望むのであれば、そうgoodbye」冒頭部分だけをみると別れの前でとてもクールな男のように見える。しかしタイトルからして既に「追撃者」だ。執着しないわけがない。彼女にいくらでも離れていいと言うのは、本当に大丈夫だからではなく、どこにいても探し出せるからだ。別れるからと言って自身の気持ちまで抑えられるわけではなく、ついには自身の恋が彼女の心変わりに勝てると確信している。「執着もまた恋だろう」と呟いてみたりもする。しかし別れた後、男の心の中でも少なからずの悩みがあったようだ。別れに傷ついたり、彼女を諦めようともしたが、結局は彼女への恋のせいで「僕の恋人のいる所まで行く」と誓うことになったのだ。アルバムのショーケース当時INFINITEはヘリコプターに乗って全国を回ることで「どこにでも探しに行く」との「追撃者」のメッセージを強くアピールした。

「Man In Love」:片思いも恋

恋に落ちた男と聞いて、今度こそ本当に幸せになれると思った。しかし良く聞いてみると、これもまた両思いではなく、一方的な片思いであることが分かる。興味のなかった恋の歌を口ずさみ、世の中のロマンスドラマは全部自身の話のようで、したこともないおしゃれをして外見に気をつける。コーヒーの苦い味にも目覚め始める。恋に落ちてどんどん大人になっていくのだ。さらには自身の隣にいる彼女を想像しながら自身だけの映画を撮る。まだ叶ったことは何もなく、お互いの気持ちも確認できなかったが、片思いをしているその感覚だけでも十分幸せでいられるのである。もちろん、彼なりには引き続き信号を送っているが、彼女はなかなか気付いてくれず、時間だけが過ぎて心は焦ってしまう。つまり「Man In Love」もまた片思いの相手に消極的に執着する歌と言えよう。

「DESTINY」:INFINITEの変わらぬ純情

1人だけの想像は甘いとはいえ、結局どんな恋であれ、ハッピーエンディングを迎えることはそう簡単ではない。さらに「DESTINY」は愛する人を一度捨てた経験のある男の話だ。二度とそうしないと誤っても彼女は後ろ姿を見せ離れようとする。男は「僕が頑張る/離さないから」と哀願したり、君が僕の運命だから僕から逃れられないという言い訳で強がりを見せたりもする。しかし、結局プライドなんかは捨て、跪いてまたチャンスをくれとお願いする。デビューから約3年目。INFINITEは今や莫大な制作コストをかけてMVを撮影し、ワールドツアーを開催できる位置にまで立った。最初とは比べ物にならないほど成長したが、依然として彼らは執着し、しつこい男の恋を歌う。もしかするとINFINITEがファンの心を変わらず掴める理由も、そのような純情のためかも知れない。

文:カン・ミョンソク(ウェブマガジン「ize」編集長)

「NAVERコラム - カン・ミョンソク編 -」では、今話題の人物にクローズアップし、コラムニストのカン・ミョンソク氏が執筆。韓国で注目が集まっている人物や出来事についてお届けします。

記者 : カン・ミョンソク、文 : ファン・ヒョジン