ホン・アルム「年を取って見える?私にはむしろ有難い」

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一瞬にしてスターになることを夢見るよりも、真心をアピールする女優がいる。ゆっくりと歩くことの意味を、適切に認識しているホン・アルムがその主人公だ。欲を置いて、より深みを目指した彼女は、女優としてのフィルモグラフィーを着実に積み上げている。

KBS 2TV朝ドラマ「TV小説 少女サムセン~漢方医の夢~」(以下「少女サムセン」)のヒロイン、ホン・アルムに会った。初々しいルックスに、真剣な話し方がとても印象的だった。


ゆっくりと歩く道を選ぶ

ホン・アルムは、大きな夢や芸能人に対する幻想を抱いて芸能界に足を踏み入れたわけではない。演技を専攻しながら、自然と仕事を始めるようになり、活動の範囲を広げながら徐々に“本当の女優”になろうと考えた。だからこそ、急がなかった。ホン・アルムは目標に向かってひたすら疾走するよりも、ゆっくりと歩く道を選んだ。

「個人的には、(スターになるために)急ぎたくない。急ぐと副作用がどうしても発生するからだ。一つずつ段階を踏んでいくのが、本当に好きだし、私は、すべてのことが状況に合わせて流れていくと考えている」

ホン・アルムは、芸能人に対する幻想をなくしたいと思っていた。芸能人も所詮は、同じ人間だと強調した。いつも飾られた華麗な姿を見せるまでには、スタッフの苦労、俳優たちの努力が伴っているはずだと。

「俳優は、一人でできるものではない。スタイリング、メイクアップはもちろん、照明、カメラ、音響など一人も欠かすことができず、私が演技に集中できるようにしてくれる方々だ。今は、周りのスタッフの方々の苦労が目に見えることで、もっと上手くやらなければならないと思う。そんな感謝の気持ちを、今回の作品を通じてとりわけ大きく感じている」


初の主演、欲の大きさだけプレッシャーも大きい

ホン・アルムは、役者というものがいつもエネルギー溢れる職業だと話す。タイトな撮影スケジュールの中で大変だと思うより、むしろ人々にエネルギーを与えることのできるこの仕事に満足感を感じている。ホン・アルムは、「演じる時は、精神的、体力的にも疲れるが、人々が私の演技を通じて元気付けられるなら、それだけで満足だ」と話した。

「少女サムセン」を選んだ理由もそこにあった。ホン・アルムは、サムセンのエネルギッシュな姿が自分に似ていると自負していた。似ているからこそ、“もっと上手くできる”という自信が持てた。何よりも「少女サムセン」のサムセンだったから。

「少女サムセン」は、初めての主演作だ。欲の大きさの分だけ、プレッシャーも大きかった。自分でやらなければならない分量も多く、なによりも、サムセンがしっかりと中心を作ってこそ、ほかの人物も活きて耀くことできる。ホン・アルムは台本を手放さず、どうしたらよりサムセンらしく見えるか深く悩んだ。

「サムセンをしっかり表現するために、漢方病院に行って脈を測る方法と鍼を学んだ。専門的な知識はないが、今は脈拍を測れる程度にはなった。患者に接しながら、基本的な穴(精気の集まる所)も知るようになって、体のどこが良くないかが分かるようになってきた。少し医者になったような気分だ」

この日、ホン・アルムはサムセンの子供時代を演じたヒョン・スンミンにも感謝の気持ちを伝えた。ヒョン・スンミンの熱演は、ホン・アルムにとってプレッシャーであり、自らより集中して熱心に取り組むようになるきっかけとなった。


年を取って見える?私にはむしろ有難い

役柄のためか、人々はホン・アルムを実際の年齢より上に見る。そう言われると普通は落ち込みがちなのに、ホン・アルムは「良いですね」と笑って見せた。

「年齢がバラバラに見えるよりはましだ。人間的にもより率直になる。いつも先輩方と作業しているので、現在ではなく未来を考えるようになった。年上に見えたって別にいいじゃないか。どうせ、時間が過ぎれば自然に年をとるようになるし」

黙々と自分の道を歩いていたホン・アルムにとっても、ブランクは怖い時間だったようだ。ホン・アルムはMBCドラマ「武神」の撮影前に、1年間近くブランクの時間を過ごした。当時、ホン・アルムの頭の中は毎日数々の考え事で埋め尽くされ、飽和状態に達した考えは、彼女に重くのしかかった。

「スランプだった。特別な理由はなかったが、その時期にドラマや映画に縁がなく、職業について再び考えるようになった。この職業が自分に合っているのかどうか、真剣に悩んだ」

悩んだ分だけ気持ちはしっかりと固まり、今はデビュー6年目に入った。「初心を忘れず、謙遜する」というホン・アルムの目には真心が込められていた。そして、「今が一番幸せだ」と強調した。

「誰かが私を見つけてくれることに、感謝している。私が社会に必要な人間だという意味ではないだろうか。現場で私を生かせてくれるすべての方々の努力に応えたい」

記者 : シン・ナラ 、写真 : ムン・スジ