【ドラマレビュー】「ザ・ウイルス」「世界の終わり」“ウイルス”感染に取り組む2本のドラマの姿勢

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「ザ・ウイルス」と「世界の終わり」(左から)、写真=CJ E&M、JTBC

OCN「ザ・ウイルス」とJTBC「世界の終わり」…同じ題材、違う雰囲気

似たり寄ったりな新種ウイルスによる無差別被害を取り上げた2本のドラマが登場した。OCN「ザ・ウイルス」と、JTBC「世界の終わり」である。

韓国で1日に放送がスタートした「ザ・ウイルス」は、「神のクイズ」「ヴァンパイア検事」「特殊事件専門担当班TEN」などに続くOCNのオリジナルシリーズである。16日にスタートを切った「世界の終わり」は、ペ・ヨンイク作家の「伝染病」という作品を「妻の資格」のアン・パンソク監督がドラマ化したものだ。

感染症をばらまく人間宿主を取り上げた両作品

1900年代にニューヨークでコックとして働いていたメアリー・マローン、本人は健康だったが、彼女によって多くの人が腸チフスにかかった。彼女は結局捕まり、世間から隔てられ一生を終えた。ここから、健康な保菌者で、歩きまわると感染症をばらまくことになる人を“腸チフスのメアリー”と言うようになった。

あいにく、「ザ・ウイルス」と「世界の終わり」は共に“腸チフスのメアリー”の出現による急激なウイルス性感染症の広まりでドラマのスタートを告げる。それだけでなく、目を始めとする全身から血を流したり、血を吐いたり、結局は壊死に至る程の凄まじい姿で急死する症状も似ている。これに対応し、特殊感染病危機対策班、または疾病管理本部が事件の主体として登場し、主人公らしき人物の周りがウイルスに感染、エピソードが発生し感情にハマらせるところまで似ている。

つまり、両ドラマともに既に私達が新型肺炎や新型インフルエンザを通じて経験しているウイルス性疾病による恐怖を、主な題材として借用しているのだ。そして、そのような災いのようなウイルスの襲撃は、まるでハリウッド映画によく登場するエイリアンの襲撃や、天災地変の襲撃と大きく違わない。

「世界の終わり」の一場面、写真=JTBC
「世界の終わり」は、ユン・ギュジン教授(チャン・ヒョンソン)を介して、「腸チフスのメアリーは、他人を殺す保菌者であるにもかかわらず、人々から追われ、隔離されることから、むしろ自分が被害者だと認識している」と説明する。しかし、2本のドラマの“腸チフスのメアリー”たちは、犯罪者も同然の姿で描かれている。また、“腸チフスのメアリー”に対する無知による被害者と、彼らを発見し追跡する過程にドラマ序盤の多くの部分を割り当てている。

既に広く知られている通り、ウイルスの大半は人間の手が届かない密林などで寄生しながら生きてきた病原体だ。そのようなウイルスが、人間が無差別に自然を開発し、蝕んで行くにつれ、人間を宿主として使うようになったのだ。

このようなウイルスの主体的な立場とは関係なく、現代社会におけるウイルスの存在は、映画でのゾンビにも似ている。生を強奪されるこの物体の登場は、互いに組織的に関連しているにもかかわらず、その中で最小単位に分割された個人や社会への被害を、まるで感染症のようにまるごと甘んじて耐えるしかない、現代社会の人間を象徴しているためだ。

ジョゼ・ サラマーゴの「白の闇」は、いきなりある都市を襲ったウイルスにより、崩れ落ちる人間群像の姿を黙示録的に描いた作品だ。しかし、まだ両ドラマで現代版の黙示録は見えず、それよりはハリウッドのパニック映画の匂いの方が強く感じられる。

「ザ・ウイルス」のオム・ギジュン、写真=CJ E&M

感情的な「ザ・ウイルス」 vs 探索的な「世界の終わり」

イ・ミョンヒョン(オム・ギジュン)とカン・ジュホン(ユン・ジェムン)は、「ザ・ウイルス」と「世界の終わり」でそれぞれ特殊感染病危機対策班と疾病管理本部の責任者として登場する。

イ・ミョンヒョンは数年前、愛する娘を感染で失っている。今度は妻まで謎のウイルス感染で死んでいく状況により、イ・ミョンヒョンはより感情的にウイルス性疾病に反応する。彼の切ない気持ちはそのまま画面に映り、宿主のキム・インチョル(24/7 ヒョヌ)を追う、息の詰まる追撃戦で「ザ・ウイルス」のリズムを牽引している。

反面、ホームズというアダ名通り、冷静に事件を分析することで有名なカン・ジュホンは、やはりウイルス性疾病によるトラウマを抱えている。しかし、逃げるウイルス保菌者を殺せず、他の人に感染してしまった苦い思い出を抱える彼は、より落ち着き、分析的に対象にアプローチしようとする。これにより、「世界の終わり」のカラーは、ウイルスによる災難があちこちから発生しているにもかかわらず、“探索的”と言える。

「ザ・ウイルス」は、“ウイルス対人間”という構図以外にも、“人間対人間”の構図を加えている。ウイルス疾病の危険性を知らせようとするイ・ミョンヒョンのチームと、社会的な物議を醸すことになろうかと恐れもみ消そうとする官僚たちの対立により、ウイルス保菌者の逮捕はことあることに失敗する。まだ明らかになってはいないが、保菌者キム・インチョルが病院から生体実験された結果ウイルス保菌者になったように、このドラマは結局、意図的にウイルスを生産した誰かと、それを明かし解決しようとする誰かの構図で展開する可能性が高い。

極めて感受性豊かなイ・ミョンヒョンのリズムと、それにより展開される都心での追撃戦は、見どころを提供する。しかし、これが果たしてウイルス性疾患を取り扱うドラマに共感させる適切な方式かは、再考の余地があると思われる。また、作為的に見える官僚との対立などの設定、ぎこちない登場人物の演技などが“陰謀論”の方へ進みつつある「ザ・ウイルス」の足かせとなっているのも、無視できない一面でもある。

反面「世界の終わり」では、政府はむしろ迅速にウイルスの拡散に対応している方だ。これまでの展開からすれば、ウイルス対人間の構図で展開される可能性の方が高く見える。

「世界の終わり」は、「根の深い木-世宗(セジョン)大王の誓い-」で恐るべき演技力を認められたユン・ジェムンが、落ち着いていながらも鋭いチーム長として登場し、ドラマの雰囲気を牽引しており、「妻の資格」を通じて“信じて使える”俳優になったチャン・ヒョンソン、まもなく登場するキム・チャンワンまで、登場人物の重々しい存在感だけでも圧倒的だ。そして、その隙間を埋めている助演たちの演技も、ただものではない。

暗すぎるようでもあるが、劇の全般的な雰囲気を率いるドラマのカラーは、“黙示録”のようにウイルスに染まる都市を象徴しているようで、垢抜けた雰囲気まで出している。これまで中長年階層の口に合うドラマだけを作ってきたJTBCの、一歩前進した成果である。

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記者 : イ・ジョンヒ