「野王」スエ vs 「花を咲かせろ!イ・テベク」ハン・チェヨン…異なる評価の理由とは?

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“イメージ”だけで“演技力”のない女優という視聴者の厳しい評価

ドラマにおいて悪役は、トラブルを増やしストーリーを展開させる重要な役割を担う。もちろん、悪役が登場しないドラマもあるが、いつもトラブルメーカーは存在し、そのトラブルメーカーによる事件が起こるときに視聴率が上がる相関関係は未だに通じる。

現在放送中のSBSドラマ「野王」とKBS「花を咲かせろ!イ・テベク」にもトラブルメーカーが登場する。「野王」では史上最悪の悪女と評価されているスエがその役割を果たしており、スエほどではないが、「花を咲かせろ!イ・テベク」では、主人公の昔のガールフレンドとして、主人公を裏切ってお金と野望を求めるハン・チェヨンがトラブルメーカーの役割を担っている。

この二人は必然的に何らかの非難を受けざるを得ないキャラクターだ。役そのものが好感を呼ぶキャラクターではないためだ。だからなのか、この二人は非難を浴びているが、その非難には決定的な違いがある。

「野王」というドラマは全体的に欠陥の多いドラマだ。ストーリーの中できちんとした説明のないキャラクターの行動や設定は、しばしば筋が通っていない感じを与えドラマ全体の完成度を下げている。緻密でない構成のせいで視聴者はキャラクターを理解できず、さらにはストーリー全般に対して疑問を持たざるを得ないのだ。しかし、幸いにも「野王」はMBC「馬医」と視聴率で首位争いをしながら好調を見せている。


「野王」の好調背景にはスエがいる?

このドラマの立役者は悪女を誰よりもうまく表現しているスエだ。チャンネルを変えたくなる瞬間でさえ、視聴者はスエが演じるチュ・ダヘの没落を期待する気持ちで耐えることができる。お粗末なストーリーでも、スエの優れた演技力のおかげで乗り越えているのだ。

「野王」では唯一チュ・ダヘに対する反感だけが視聴者を夢中にさせることができる。スエが悪質になればなるほど、ドラマへの没入度が強くなるためだ。スエは夫や家族はもちろん、恋まで道具として使う悪女だ。最終的に彼女は野望を成し遂げて、ファーストレディーというトップの座に上がる予定である。悪女にも理由や過去を設定する最近のトレンドとは正反対に、単に男のために主人公を苦しめるという在り来たりな悪女キャラクターから脱して、自分の欲望を加減することなく見せた悪女キャラクターを最大化することで、かえって新鮮な感じを与える。

スエの演技は、視聴者をこのキャラクターに夢中にさせ続けることができるほど安定的だ。演技だけでなく、スエが出す雰囲気はこのキャラクター作りに大きな貢献をしている。スエは史上最悪の悪女を演じながらも、浅ましかったり毒々しい感じを与えない。行動そのものはこれ以上ないほど悪質だが、その悪女を表現するスエならではの雰囲気によって、“女”であることを利用してトップの座まで上がる悪女キャラクターにより説得力がついた。悪質であっても、上流階級を夢見る女性として遜色のない優雅さも持っているのである。

スエはデビュー当初から上品で清楚な魅力で注目された。ただ、今までスエが選択した作品を見ると、単純に純粋で受身なキャラクターではない。上品なキャラクターで演技の第一歩を踏み出したが、自分のイメージに閉じ込もることなく、多様な役に挑戦した。テレビでは「9回裏2アウト」で、周りでよく見られるような、平凡でありふれたキャラクターを演じた。言葉遣いも荒く、時には身を投げて演技する必要のある役だったが、スエはこれまでの清楚な姿にこだわることなく、自分自身を丸ごと投げて演技した。

「野王」以前には、キム・スヒョン脚本家のドラマ「千日の約束」に出演し、アルツハイマー病にかかって死んでいく女性を見事に表現して、主人公としての役割を十分に果たした。強い語り口調が特徴であるキム・スヒョンドラマのヒロインになったということは、彼女が単なる“イメージ”ではなく、“演技力”を中心に作品を選択しているという証拠だ。

スエは映画「炎のように蝶のように」で明成皇后役にチャンレンジして強いけれども悲運の女性を表現し、映画「ミッドナイトFM」ではスリラーに挑戦した。二つの作品とも、彼女の上品なイメージだけを考えると選択しにくい役である。スエが出演した作品の成績がいずれも良かったわけではないが、スエは演技の幅を多岐に広げたのだ。

「野王」の中で悪役を選択したのも、このような選択の延長線上と考えられる。この役は叩かれるしかない悪いキャラクターだ。スエより、共演する中堅女優のキム・ソンリョンのほうに好感が持てるほどだ。だが、スエはそのようなことを分かっていながらも「野王」を選択した。

実際、「野王」のスエが「千日の約束」のスエより、はるかに優れた演技力を見せているわけではないが、「野王」でスエが演じるキャラクターは「野王」の中の誰よりも目立つ。自分の従来のイメージを活用しながらも、新たな役を演じるスエの選択が輝く瞬間だ。スエはこれからも非難を浴び続けるだろうが、これはスエ本人ではなく、チュ・ダヘというキャラクターへの非難であり、スエの演技キャリアにはプラスになることである。


残念なハン・チェヨンの役、これを補おう

一方、「花を咲かせろ!イ・テベク」のハン・チェヨンは事情が異なる。ハン・チェヨンが「秋の童話」で演技に挑戦してから、すでに10年をはるかに超える時間が過ぎた。これまでハン・チェヨンは「快傑春香」「花より男子~Boys Over Flowers」「恋の花火」「神と呼ばれた男」などのドラマ、「ガールフレンズ」「今、愛する人と暮らしていますか?」などの映画に出演してきた。

この中でハン・チェヨンのキャリアとして残るほどの作品は、視聴率30%を超えた「快傑春香」だけである。ハン・チェヨンを代表するキーワードは、女優に関連するものではなく、バービー人形、腹筋、美脚など、容姿に関するものがほとんどだ。ハン・チェヨンが自分を浮上させることができなかったのは、単純に作品の失敗だけが理由ではない。演技者としてのハン・チェヨンに輝かない残念さがあるためでもある。

「花を咲かせろ!イ・テベク」は題材を展開する方式において物足りない部分がある。“広告”という題材を扱い、広告にカタルシス(解放感)を与える主人公の魅力を最大化する必要があるにもかかわらず、「キャンディ・キャンディ」のように、明るく前向きな少女が周りの偏見に負けず成長するという陳腐なストーリーであり、主人公が男に変わっているだけというような印象だ。もちろん、それなりの長所もあるが、視聴率が4%ということからも分かるように、人々が見たがるポイントをキャッチすることができておらず、かといって優れた作品性で勝負することもできていないのだ。

このような物足りなさの中でハン・チェヨンはやや残念な演技を見せている。ドラマの中で基本的な発声や表情に対してしばしば指摘されるということは、明らかに彼女自ら直していくべき部分である。

ハン・チェヨンは美しい女優だ。基本だけでもできれば非難は受けないはずだ。非常に優れた演技力がないとしても、自身が演じるキャラクターを魅力的に表現する能力も不足している。また、ハン・チェヨンが演じるコ・アリは、心理描写が複雑で大変な役とも言えない。ハン・チェヨンが演技するコ・アリでなく、女優ハン・チェヨンの演技に対する批判が続いているだけに、彼女自身も変わる姿を見せるべきだ。“イメージ”とともに、テレビで視聴者を夢中にさせられる“演技力”を向上させていく姿のことだ。

スエとハン・チェヨンは二人とも最初は美貌で注目されたが、キャリアを積んで行く方式は違っていた。そのキャリアを構築するときに容姿が決定的な役割をしたのは事実だが、容姿を活用する方法が異なっていたため、彼女らの演技への評価も異なってきたのだ。“イメージ”だけの“演技力”が不足している俳優には、視聴者の評価はしばしば厳しくなるためだ。

記者 : ウ・ドンギュン