【ドラマレビュー】イ・ボヨン「いとしのソヨン」を“極悪人”から救い出した女優

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写真=KBS

KBS 2TV「いとしのソヨン」演技歴10年目のイ・ボヨンに存在感を与えたドラマ

KBS 2TV週末ドラマ「いとしのソヨン」が、大きな感動と余韻を残して幕を閉じた。

40%台の高い視聴率を記録し国民的な人気を博したこの作品のヒロインは、誰がなんと言おうともイ・ボヨンだった。デビュー10年目になって、まさに“狂ったような存在感”を見せつけ、最も注目される女優に生まれ変わったのだ。

“存在感のない女優”だったイ・ボヨン

2003年SBSドラマ「フリーター脱出」でデビューしたイ・ボヨンは、これまでの10年間、休みなく活動してきた女優だった。「愛情万々歳~ブラボー!マイ・ラブ~」「張吉山」「ラストダンスは私と一緒に」「美しいあなた」「薯童謠(ソドンヨ)」「ゲームの女王」「セレブの誕生」「赤道の男」など様々なドラマに出演し、「マイ・ブラザー」「卑劣な街」「ワンス・アポン・ア・タイム」などで映画にも進出し、良い成績も挙げている。

このように、イ・ボヨンのフィルモグラフィーは、同年代の女優たちと比べても、全く遜色のないものになっている。いや、正確に言えば、同年代の女優たちよりも際立つキャリアを誇っている。ドラマと映画で活躍し、相当のヒット作に出演しているだけでなく、様々なジャンルに挑戦し、様々なキャラクターをうまく演じてきたためだ。まさに“誠実な女優”という賛辞に値する。

しかし問題は、これだけのキャリアを積んでいるにもかかわらず、人々はイ・ボヨンという女優に大きな魅力を感じていなかったという事実だ。申し訳ない話だが、これまでイ・ボヨンは“無色無臭”の女優として残っていた。男性主人公の存在感に隠れたサブキャラクター的な機能のみをこなしてきただけで、彼女ならではの存在感を発揮する機会は得られなかった。「赤道の男」でも「卑劣な街」でも、イ・ボヨンは男性主人公の影に過ぎなかった。

結局彼女は、ヒット作はあっても代表作はない、皮肉にぶつかることになった。彼女が中心となって能動的に作品をリードした経験がないだけでなく、人々の脳裏に残る印象深い演技を披露した作品も皆無だったからだ。安定した演技力を元に誠実に演技を続けてきたが、手にした結果はいつも惜しかった。これが、演技歴10年目を迎えた女優イ・ボヨンが置かれたジレンマだった。

当時イ・ボヨンに必要だったのは、“強力な一発”だった。これまで着実に積み重ねてきた力を一気に爆発させ得る作品。誰からも手伝ってもらわず、専ら自分の力だけで人々を魅了させることのできる、そんな作品がいつよりも切実なタイミングだった。そして結局2012年、10年を待った末、イ・ボヨンは“運命のドラマ”1本に巡り会えた。それが、「いとしのソヨン」だ。

写真=KBS

イ・ボヨン“狂った存在感”を持つ女優になる

「いとしのソヨン」は、イ・ボヨンの元に本当に運命のようにやってきた作品だった。当初ソヨン役にキャスティングされた女優チェ・ジョンウォンが、スケジュール調整を理由にドラマから降板し、いきなりイ・ボヨンが「いとしのソヨン」に出演することになったのだ。それもタイトルロール。徹底的にイ・ボヨンが中心となって作り上げていく、彼女の“ワントップドラマ”だった。デビュー10年目になって初めて、ドラマの実質的な主人公の座に上ったのだ。

ソヨンの姿でイ・ボヨンは眩しく輝いた。作品そのものもよかったが、イ・ボヨンの演技も非の打ち所がないほど完璧だった。心に苦しみと寂しさを抱えるソヨンの傷を絶妙に掴んだだけでなく、1回の嘘により苦しむ一人の人間に対する憐憫を、あまりにも切なく表現しきった。イ・ボヨンでなかったら、果たして誰がこれほどに表現できただろうかと思うほど、完璧な演技だった。

キャラクターの解釈力も素晴らしかった。冷たいながらも気弱なソヨンのキャラクターは、まるでイ・ボヨンのために生まれたようだった。イ・ボヨンはソヨンの行動一つ一つにそれなりの説得力を与え、視聴者の共感を引き出した。複雑微妙な感情を細かく表現し、一歩間違えば非情な極悪人になってしまいがちなソヨンを、説得力あるキャラクターに変貌させたのだ。「いとしのソヨン」の成功は、他でもないここからスタートしたと言える。

手堅い演技力と優れた人物解釈をもとに、イ・ボヨンは6ヶ月間という長いドラマを力強く牽引してきた。張り詰めた緊張感を維持しながら、しっかりとドラマの中心の役割を果たした。大変な撮影スケジュールにもかかわらず、疲れた気配もなくドラマ全般に渡って存在感をアピールした。初のワントップドラマで全50話という長い展開は負担にもなったはずだが、イ・ボヨンは誰より信頼出来る姿で、最終回を迎えるその瞬間まで作品を守り抜いた。

結局イ・ボヨンのこのような努力の甲斐あって、「いとしのソヨン」は前番組「棚ぼたのあなた」を超える人気を集め、全国民から愛される作品になった。ようやくイ・ボヨンにも、自信を持って言える代表作ができたのだ。いまや誰でも“イ・ボヨン”と言えば“ソヨン”を思い浮かべるほど、彼女と「いとしのソヨン」は切っても切れない関係になった。

ここ6ヶ月間、イ・ボヨンは俗に言う“狂った存在感”の女優だった。10年間の物足りなさを晴らすかのように、お茶の間を一気に静まりかえらせ、女優としての自身の価値と可能性がどれほどのものだったのかを、皆に証明して見せた。天は自ら助くる者を助く。彼女も、怠けず誠実に演じてきたからこそ、今の光栄を授かることができたのかも知れない。

これでイ・ボヨンは、女優として“第2の人生”を迎えることになった。「いとしのソヨン」を通じて、演技力、興行力、存在感ともに徹底的な検証を受けた彼女は、果たしてどのような作品でまた人々の前に立つことになるだろうか。一つ確実なのは、私たちはイ・ボヨンという良き役者と同時代を生きていること、そして今後も彼女の演技に笑い、涙することが多いだろうということだ。彼女の次の作品が、改めて待ち遠しくなる。

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記者 : キム・ソンギュ