「新しき世界」パク・ミンジョンプロデューサー“イ・ジョンジェの再発見”を確信

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写真=サナイピクチャーズ
「先輩、待ってください。参りました!」

パク・ミンジョンプロデューサーは映画「新しき世界」の1次編集版を見て、俳優イ・ジョンジェにこんな言葉を残した。イ・ジョンジェが演じたイ・ジャソンは、犯罪組織にスパイとして入ってきた警察官だ。彼はほとんどのシーンで感情を隠さなければならなかった。イ・ジョンジェは「立っている」「苦悩に満ちる」などと表現されたシナリオを徹底的に分析し、イ・ジャソンとして生まれ変わった。一日中立ったままで撮影が終わる日には「今日もまた立っていただけでしたね」という冗談を言われたりもした。しかし、編集版で彼の正確な計算が明らかになり、パク・ミンジョンプロデューサーは「イ・ジョンジェの再発見」という確信が持てたという。

「新しき世界」で最も大変だったのは“緩急のコントロール”だった。完成版の順番通りに撮影していたわけではなかったので、紛らわしい時もあった。撮影序盤、カン課長(チェ・ミンシク)とチョン・チョン(ファン・ジョンミン)の心理戦を撮影したと明らかにしたパク・ミンジョンプロデューサーは「ジャソンが一人でいるシーンを後で撮ったが、『これって正しいのかな』と心配で非常に気をもんだ」と打ち明けた。実際に深みのある内面の演技をこなさなければならなかったイ・ジョンジェは、日に日に痩せていったという。パク・ミンジョンプロデューサーは「(イ・ジョンジェ先輩が)ストレスをたくさん受けたはず。吹き出物が出来たりもしていた。ポストプロダクション(撮影後の作業の総称)で消すこともできたが、ナチュラルな姿が良くてそのままにしておいた」と説明した。

特別だったスタッフ試写会…「家族から非難免除権もらった」

チェ・ミンシクとファン・ジョンミン、イ・ジョンジェなどの錚々たる俳優たちが一同に介するのは容易なことではない。これは観客だけではなくパク・ミンジョンプロデューサーにとっても同じだった。主役3人とも第1案でキャスティングが決まり「これって現実?」と思ったという。おかげでプレッシャーも大きかった。

パク・ミンジョンプロデューサーは「3人を1つのスクリーンで見る日がまたいつ来るか分からないと思ってとてもドキドキした。『今回はどのように準備したのだろうか』と見るのが楽しかった」と当時を振り返った。彼らの演技はプロだったが、日常は素朴なものだった。パク・ミンジョンプロデューサーは「俳優、スタッフが集まると久しぶりに家族に会うようだった。特に3人の俳優は3兄弟みたいだった。伯父と叔父、結婚できなかった叔父」と例えた。

「まず一番上の兄が一人明らかだと思う。先輩は後輩に見せるべき姿を見せ、後輩は先輩の気持ちに応えようとした。チェ・ミンシク先輩は現場の一番年下のスタッフの名前と故郷まで覚えて毎日名前を呼んであげたりしていた。ミスをしても後ろで悪口を言うのではなく励ます雰囲気だった。家族のような雰囲気の中、私たちが作る映画という感じで、クランクアップした日に『後10回撮りたい』と言うほどだった(笑)」

「新しき世界」でそんな“家族”のために特別なイベントを準備した。映画「ダンシング・クィーン」で“スタッフ試写会”を経験したファン・ジョンミンの提案によってVIP試写会の時にスタッフ館を別途設けたのだ。1つの上映館にスタッフと家族が全員集まり、ステージ挨拶を終えた俳優たちもスタッフ館で映画を見た。映画が終わり、俳優たちはスタッフたちをステージに呼んで紹介し、家族にも挨拶した。これまで「一体何をして歩き回っているのか」と不満だった家族の反応もがらりと変わった。パク・ミンジョンプロデューサーは「両親も反応ががらりと変わった。今後3年間は叱られない非難免除権をもらったということ」と話し微笑んだ。

女優への接し方に悩む監督…「60歳を過ぎても現場で働きたい」

「ARAHAN」(2004)のスクリプター演出部として映画との縁を結んだパク・ミンジョンプロデューサーは、その後「りんご」「いかさま師~タチャ」「チョン・ウチ 時空道士」「生き残るための3つの取引」「悪いやつら」を経て「新しき世界」で初の監督を務めた。女性監督だが恋愛よりはアクションと犯罪に興味を覚えた彼女は、主に“兄貴”と呼ぶ男性俳優たちと仕事をしてきた。「新しき世界」にソン・ジヒョがキャスティングされた時、制作部のスタッフと「女優にどう対応していいか」と悩み“女優カスタマイズド用の天使の形Tバー(俳優が立って演技する場所を表示する道具)を作ったが、結局緊張して一度も出せなかったという。

映画にハマってはや10年。いつもマイナスだった通帳はやっと0ウォンになり、同年代の女性の同僚はいないが、60歳を過ぎても現場にいたいという気持ちには変わりがない。先が見えない時もあるが、後輩たちに「頑張れば何かにはなっている」という希望を与えたくて歯を食いしばって我慢しているというのが彼女の説明だ。制作会社、投資会社を立ち上げるよりは現場で走りながら映画を完成させ、そうやって一本一本積み重ね、韓国映画の歴史を作りたいという。

「もどかしい時もある。スタッフの人件費や働く環境を改善したいけど、そう考えながらも新しく契約の話をする時に正当な金額を示せない現実がいつも辛い。依然として交通費がなくて現場に来れないスタッフもいるから。私も昨年から初めて貯金というのを始めたが、映画業界は構造そのものがそういうふうになっているよう。このような現実的な問題は結局夢を諦めさせる。商業映画をして資本主義社会で生きているが、少なくとも希望が消えることがないように少しでも変えていければと思う」

記者 : イ・ジョンミン、イ・オンヒョク