ハ・ジョンウ&リュ・スンリョン、いかにして“信頼できる俳優”となったのか?

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ハ・ジョンウ&リュ・スンリョン、イケメンを越えた成功戦略

芸能人にとって“外見”とは、強力な武器の一つだ。カッコよく綺麗だということは、それだけ人の目を引くことができるということで、カッコよく綺麗な外見のおかげでスターとなるケースも多い。しかし、優れた外見で周囲を圧倒するスターがいる一方、自分にしか出来ない分野で、自分の存在感をアピールしながら成功する人もいる。“外見”よりは“個性”を武器に、最高のキャリアを積んで行くと同時に、優れた演技力まで備えた人だ。

その中でもハ・ジョンウとリュ・スンリョンは、イケメンではないものの、自分の地位をしっかり築いた俳優だ。ハ・ジョンウは毎回平凡ではない役を演じて、30代の男性俳優としては断トツのキャリアを築いており、リュ・スンリョンは「王になった男」と「7番房の奇跡」の観客動員数が1000万人を突破し、“1000万俳優”というあだ名まで付けられた。もちろん、彼らは運が良かったとも思うが、彼らの成功の背景にあるのは、運だけではない。

2人の共通点はまさに演技の幅が広いということだ。映画で彼らは真面目な姿であったりコミカルな姿などを観客に披露する。もちろん“二枚目の王子様”キャラクターは不可能かもしれないが、王子様のイメージに囚われ、他の役を演じるのが難しいイケメン俳優とは違い、彼らは自分に出来るキャラクターを誰よりも上手く表現する。イケメンは溢れ出てくるが、ハ・ジョンウやリュ・スンリョンはその中の1人ではない。彼らには、他の人にはない、彼らならではの雰囲気がある。

ハ・ジョンウ、どのような作品でも彼だけは輝く

ハ・ジョンウのターニングポイントは、映画「チェイサー」だった。「チェイサー」以降、ハ・ジョンウへの評価は完全に変わった。以前のハ・ジョンウは注目すべき新人だったが、サイコパスで狂った殺人犯だが見た目は内気で軟弱に見える人物を完璧に演じた彼に対する賛辞は凄いものだった。ハ・ジョンウは「チェイサー」で一気にヒット俳優への可能性を認められた。

ハ・ジョンウが「チェイサー」を選んだのは、神の一手だった。独特で新鮮な役を上手に表現したことは、彼がそれ以後“イメージ”より“演技”に集中する基盤を作ってくれた。ハ・ジョンウはこれに留まらず、様々な役に挑戦した。その中で「ラブフィクション」は意外な選択だった。これまで陰鬱で強靭な役を演じてきた彼が、情けない平凡な男性キャラクターを選択したためだ。しかしハ・ジョンウは今までのイメージを完全に脱ぎ捨て、平凡な男に生まれ変わった。イケメン俳優であれば生かされなかったと思われる細かな部分まで、ハ・ジョンウのおかげで生かされたという評価が相次いだ。

ハ・ジョンウは出演したどの映画でも、演技力において一定レベル以上の成果を収める底力を発揮した。どの役を任せても“信頼でき安心できる俳優”ということは、ハ・ジョンウのイメージ作りにおいて最も重要な要素だった。

写真=サムゴリピクチャーズ・ファンタジオ、映画社ピダンギル
そのおかげで、今のハ・ジョンウの地位は誰にも真似できないものになった。彼だけが最高ではないが、彼のように暗く陰鬱な感情からコミカルに至るまで、様々な役を表現できる俳優はあまりいない。ハ・ジョンウの一番の長所は重みがあるということだ。スクリーンに映るだけで存在感をアピールできるという言葉は、映画俳優にとってこれ以上ない賛辞である。

ハ・ジョンウは、映画の成功や失敗によって彼のイメージに対しダメージを受けることはない。実際に「ビースティ・ボーイズ」や「哀しき獣」では、満足できる成果を収められなかった。しかしハ・ジョンウだけはいつも、出演した映画の中で話題となった。これは彼自身がブランドになったためだ。一定レベル以上の作品に出演すれば、成功の有無にかかわらず認められる地位を確立したという意味であり、スターではなく、俳優としてのキャリアを誰よりも上手く積んでいるという意味だ。

スターは映画の成績に泣いたり、笑ったりする。しかし、俳優は映画の成功の有無にかかわらず、様々な役に挑戦しキャリアを積むことができる。もちろん俳優にとっても、最終的に重要なのは映画の成績だ。しかし1、2回失敗しても俳優はダメージを受けず、その中でも賛辞を受けられる。ハ・ジョンウはまさにそういうキャリアを積んでいる。

リュ・スンリョン、演技のキャリアから醸し出される尋常でない存在感

このようなプロセスは、最近映画の成功で主演級としての地位を確立したリュ・スンリョンからも見ることができる。リュ・スンリョンは「王になった男」に続き「7番房の奇跡」で“1000万俳優”というあだ名を付けられた。しかし「王になった男」と「7番房の奇跡」は成功の本質が違う。「王になった男」はイ・ビョンホンというスターが全面に登場し、多くの予算をかけ、誰にでも受け入れられるストーリーを基盤にしている。マーケティングもまた、多大なコストをかけて行われた。

しかし「7番房の奇跡」は最近制作されている映画に比べると、その規模が大きいとは言えない。更に、成功を保証するスターが1人も登場していない状況で収められた成果だ。そのため「7番房の奇跡」が観客動員数1000万人を達成したのは「王になった男」より重要な意味がある。単純にリュ・スンリョンが主演だったからではない。

実は、リュ・スンリョンのキャリアで最も輝く位置を占める作品は「王になった男」ではなく、「僕の妻のすべて」だ。「僕の妻のすべて」でリュ・スンリョンは、今まで見せてきたキャラクターの中で最も強力な存在感をアピールした。伝説のカサノバ(プレイボーイ)であるチャン・ソンギを演じたリュ・スンリョンは、その役においてリュ・スンリョン以外の俳優を思い浮かべることができないほど、完璧に演じてみせた。リュ・スンリョンは、気持ち悪いと感じながらも目で追ってしまうカサノバのキャラクターをしっかり捉え、笑いまで担当した。「ダーティー・セクシー」というあだ名もその時に付けられたものだ。

写真=NEW
リュ・スンリョンは自分にしか出来ないイメージ作りと演技力を通じて存在感をアピールした。その役を演じたのが偶然であれ戦略であれ、自分の長所をしっかり把握しているのである。その後彼は「王になった男」で、慎重で深い考えを持ったホ・ギュン役を演じた。注目すべき点は、リュ・スンリョンが180度異なる演技をしながらも、全く抵抗感を与えなかったことだ。俳優のイメージはさて置き、キャラクターをそのまま受け入れる力は、かなりのキャリアに基づいた演技から生まれるものだ。リュ・スンリョンという俳優が持つ独特なイメージと存在感で、彼は様々な役において自分の力量をアピールすることができる。

「7番房の奇跡」のイ・ヨングは「僕の妻のすべて」と「王になった男」の間の妙な接点にいる。知的障がい者のキャラクターで笑いを誘うのはもちろん、最後は感動まで導き出す。現実と乖離を感じさせる刑務所の雰囲気と状況には首を傾けてしまうが、映画は終盤に向かうほど涙を誘い、その疑問が解消される。この涙のレベルは、どの映画に比べても強力なもので、新派のコードを最大化し、観客の涙腺を緩くした戦略は功を奏した。またこれを通じてリュ・スンリョンは強力なヒット俳優となった。これから更に存在感のある役を演じられる土台を築いたことになる。

2人の俳優は今、成功軌道に乗っている。しかし、成功に向かう峠で彼らは“スター”を目指さなかった。これからも彼らが“自分にしか出来ないもの”を極められれば、成功だけではなく、誰も真似できない独自の領域までも確保することになるだろう。そしてそれは、彼らが長く大衆のもとに留まることができる強力な力になるだろう。

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記者 : ウ・ドンギュン、写真 : イ・ジョンミン