女優を渇望したソン・ヘギョ、そして「その冬、風が吹く」

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5年ぶりのテレビ復帰、ソン・ヘギョの挑戦は続く

SBSドラマ「その冬、風が吹く」の放送が韓国で始まった。厚いマニアなファン層を持つ脚本家ノ・ヒギョンが台本を書き、トップ俳優のチョ・インソンとソン・ヘギョが主演を務めることで、当初から2013年の最高の期待作として言われてきた作品であるだけに、演出、台本、演技の三つの要素がいずれも見事だった。特に、2008年「彼らが生きる世界」に続き、再びノ・ヒギョン脚本家のドラマに出演することになったソン・ヘギョの繊細な演技は、作品への期待を一層高めている。


“トレンディドラマの女王”ソン・ヘギョ

1996年、17歳で制服モデルとして芸能界に足を踏み入れたソン・ヘギョは、可愛らしい顔立ち、はつらつとした魅力の持ち主であって、業界関係者から大きな関心を受けた。1998年当時、ソン・ヘギョの可能性を見極めたキム・ビョンウク監督は、自身が準備していたシットコム(シチュエーションコメディー:一話完結で連続放映されるコメディードラマ)に彼女をキャスティングしたが、その作品がSBSシットコムのレジェンドと言える「順風産婦人科」だった。劇中、オ・ジミョンのお転婆な末娘「オ・ヘギョ」を演じたソン・ヘギョは、一気に視聴者を釘付けにして、スターに浮上した。

だが、彼女が本格的な人気を得始めたのは、2000年、KBS「秋の童話」のヒロインとしてキャスティングされてからだ。「秋の童話」は、「COLOR」「プロポーズ」「クァンキ」などを演出したユン・ソクホ監督と、「クァンキ」「イヴのすべて」のオ・スヨン脚本家がタッグを組んだドラマだった。このドラマでソン・ヘギョは、腹違いの兄と切ない恋をし、不治の病でこの世を去るキャラクターを演じて、がらりとイメージチェンジを試みた。従来のはつらつとした可愛いイメージが180度変わり、新たな可能性を披露したのだ。

視聴率もこの上ないほど良かった。当初の競合作品だったウォン・ミギョン主演のMBC「おばさん」に比べて弱いと言われていた「秋の童話」は、放送が始まってから口コミが広がり、放送2回目で視聴率が20%を超え、2週目には同時間帯1位の視聴率となり、逆転に成功した。その後からはトップの座を逃さなかった。6回目の放送で31.6%になってから、視聴率は引き続き30%台を維持し、最終回の16話では最高視聴率42.3%を記録し、華麗に幕を下ろした。ソン・ヘギョ本人も「信じられない」というほど、甚だしい成功だった。

「秋の童話」を皮切りに、ソン・ヘギョはチェ・ジンシル、キム・ヒソンに次ぐ“トレンディドラマの女王”になった。「ホテリアー」(最高視聴率38.6%)、「守護天使」(最高視聴率31.8%)、「オールイン 運命の愛」(最高視聴率47.7%)、「フルハウス」(最高視聴率40.2%)に至るまで、様々なトレンディドラマに出演し続け、全盛期を迎えた。

キム・ヒソンの全盛期並みの成績を記録し、ソン・ヘギョは当代の女優の中でもトップクラスに位置づけられた。芸能界全体を見渡してみても、当時のソン・ヘギョのスター性とヒット力は同級最強のレベルであり、誰も近づけないキャリアを誇った。わずか25歳で、誰にも見下げられることのないトップクラスに上り詰めたのだ。


女優を渇望したソン・ヘギョ、そして「その冬」

しかし、光が明るかった分、影も濃かった。一定の枠を超えないキャラクターと限界のある作品選択、ユニークさのない演技トーンは、ソン・ヘギョの不安点であり、人々も彼女を女優というよりもビジュアルの良いスターだと思っていた。20代中盤を越えてから、女優として認められたい渇望が強くなった彼女にとって、このような状況は無視できない現実であっただろう。

結局、彼女は2004年「フルハウス」を最後に、得意のトレンディドラマを諦めて、新たな活路を探し始めた。これまでの彼女のスター性、大衆性を脱ぎ捨て、女優として認められるための道のりを歩み始めたのだ。トップスターであったソン・ヘギョが、これほど極端な選択をするとは、誰も予想できなかったはずだ。

2005年を基点に、ソン・ヘギョの作品選択はがらりと変わってくる。憂鬱で悲劇的な雰囲気の映画「ファン・ジニ 映画版」を始め、マイナー傾向の映画に顔を出した。2008年「Fetish」、2010年「カメリア」、2011年「今日」に至るまで、大衆性よりは作品性を中心とする実験的な映画に出演し、20代の女優としてはかなりユニークなフィルモグラフィーを構築したのだ。2008年、ソン・ヘギョがドラマ復帰作としてノ・ヒギョン脚本家の「彼らが生きる世界」を選択したのも、このような側面から解釈できる。

勿論副作用がなかったのではない。興行収入が振るわないたびに「もう終わり」と非難されたり、愚かな試みをしていると酷評されたりした。しかし、我々が注目すべき点は、ソン・ヘギョがノ・ヒギョン脚本家、イ・ジョンヒャン監督、ウォン・カーウァイと作品をしながら、誰よりも着実に成長してきた点だ。スターとして全てを成し遂げたにもかかわらず、“女優ソン・ヘギョ”の価値を証明するために、これほど大きな努力を傾けてきたのは、本当にものすごい勇気だ。

このような意味で、2013年、ソン・ヘギョ脚本家の新作「その冬、風が吹く」は注目に値する作品だ。「彼らが生きる世界」に続いてソン・ヘギョ脚本家の作品に2度目の参加となる彼女は、第1話から成熟した繊細な感情を表現し、視聴者を入り込ませた。心に傷を負ったキャラクターの寂しさを十分に理解している上、これを効果的に伝える表現力も著しく発展した。これまで積んできた実力を十二分に発揮したようだ。

彼女ならではの切ない恋愛演技も期待を集めている。「秋の童話」から着実に進化してきた彼女の恋愛演技は、30代に入ってからもっと深い感性を誇っている。パートナーのチョ・インソンとの相性も良く、演技に集中する力も徐々に強くなると予想される。多様な作品を通じて基礎から実力を積んできただけに、著しく成熟した演技を期待しても良いだろう。

今のソン・ヘギョは、新たな実験台に乗っている。30代初の作品として選択した「その冬、風が吹く」は、彼女がこれまで駆けずり回って学んだ多くのものを十分に見せられる見事な器だ。この器を一杯に満たしていくのは、彼女一人の役目だ。寂しくて大変だが、女優として当然耐えなければならない十字架だ。

自身の限界を誰よりもよく知っていて、その限界を超えるためにキャラクターと作品に入り込んだこの女優は、果たして「その冬、風が吹く」を通じて女優としての転機を迎えることができるのだろうか。今はっきりと言えるのは、“女優ソン・ヘギョ”が美しい挑戦を続けているということ、そして、一ヶ所にとどまらない賢さで着実に進化していることだ。彼女の健闘を祈る。

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記者 : キム・ソンギュ