チョン・ジヒョン、花の蜜だけ口にする?“彼女が生きて動いた瞬間”

OhmyStar |

演技の花が、満開に咲いた。着実に新たな作品に挑戦し“女優”としての地位を固めようとしたが、10年近く“時代のアイコン”というイメージに留まっていたチョン・ジヒョン。その誠実さは、「10人の泥棒たち」(2012)に続き、「ベルリンファイル」(2013)でも輝いた。20代の彼女が“神秘主義の象徴”だったとすれば、30代に差し掛かった彼女は、さらに身近で人間的になった。

出演の意思「リュ・スンワン監督に先に提案した」

チョン・ジヒョンは、「ベルリンファイル」の背景である“ベルリン”とよく似ている。憂鬱な灰色の都市を、そのまま表現したようだ。子供を亡くした母親で、罠にはまって自分を疑う“共和国の英雄”ピョ・ジョンソン(ハ・ジョンウ)の妻リョン・ジョンヒを演じたチョン・ジヒョンを見て、なぜリュ・スンワン監督が「(海外ロケで)チョン・ジヒョンを寂しくしようとした」と言ったのかが分かるような気がした。

「監督は、『果たして、チョン・ジヒョンが痛みを持った人妻の演技をこなせるのか』という疑問をずっと持っていたようです。リョン・ジョンヒの雰囲気を維持してほしいと思ったようですが、私は新人でもないし、寂しさを感じたとしてもそれが演技に直結するのかと言えば、実はそれもよく分かりません。それは監督の方法であり、スタイルだと思いました。でも、ハ・ジョンウさんがとても面白かったです。現場ではとても騒々しく、監督が後悔するかもしれないと思ったほどでした(笑)」

リュ・スンワン監督の前作がそうであるように、「ベルリンファイル」でも女性であるリョン・ジョンヒの出番はそんなに多くなかった。この全てを知っていたにも関わらず、チョン・ジヒョンは、リュ・スンワン監督に「ベルリンファイル」に出演したい意思を先に伝えた。演出者としてはっきりした特徴を持つ人と一緒に働いた方が自分に合うということを知っていたし、リュ・スンワン監督のスタイルが気になったという。「実は、今も監督とぎこちない」と打ち明けたチョン・ジヒョンは、「私もすぐに近づける性格でないうえに、監督も表現が苦手だ。だが、すでに心のうちを知っているので、次の作品にも喜んで出演する意志がある」と語った。


悲惨なニュースを見ながらキャラクターに没入「確信と信頼があれば自信が生まれる」

チョン・ジヒョンに一番苦労したシーンを聞いてみた。葦畑を歩きながら、ずっと転んでいるピョ・ジョンソンのせいでおんぶされていたリョン・ジョンヒョンまで痛かったのではないかと気になったからだ。「代役はなかったが、痛いということより熱くて苦労した」という返事が返ってきた。感情が重要なシーンだったにも関わらず真夏に撮影し、汗がだらだらと流れたという。そして一番つらかったシーンは、韓国に戻ってスタジオで撮影した感情シーンだったという。

「海外ロケが肉体的につらかったとしたら、韓国に戻ってからは感情を表現するシーンが多くて大変でした。一言一言に意味があって、感情をよく伝えなければならなかったので、いつもプレッシャーがありました。ピョ・ジョンソンにナイフを突きつけ『過酷なら罰を受けます」』と言うシーンがあるが、それまで我慢していたリョン・ジョンヒの感情が爆発する重要なシーンでした。午前に撮って終わったと思ったが、午後にまた撮り直しました。とてもプレッシャーになりましたが、結果的には良かったです」

リョン・ジョンヒという人物を理解するため、繰り返し想像したというチョン・ジヒョン。「実際の経験に基づいて演技する俳優が何人いるのだろうか」としながら、想像力の重要性を力説した彼女は、「当事者でない以上、感情を100%理解することはできないが、確信と信頼があれば演技する時に自信が出る」と言った。ただ、リョン・ジョンヒを演じるため悲惨なニュースなどをたくさん思い出したと説明した。


結婚後うまくいく?「成熟した上に感情も躊躇せず表現」

CMの中の女神だと思っていたチョン・ジヒョンは、インタビューの間ずっと素直だった。慎重に一言ずつ言葉を選ぶより、思い出したことをそのまま話し、「女性は昼ごはんを食べても、こういうものを食べなければならない」と言いながらハニーブレッドにクリームチーズをたっぷりつけて食べた。「高カロリーの食べ物の代わりに、花の蜜だけ口にするのではないかと思っていた」と言ったら「そんな人がどこにいるのよ」と笑った。イメージとして固まっていた“人間チョン・ジヒョン”が生きて動いた瞬間だった。

「『結婚してから上手くいっているようだ』とよく言われます。時期的にも上手く合いましたね。実は、『10人の泥棒たち』と『ベルリンファイル』、全部結婚前に選んだ作品です。『ベルリンファイル』は、結婚後撮影しましたが、結婚したとしても世の中が一晩で変わるわけではありません。ただ、考えてみれば女性として一段階成熟したと言えるのはないでしょうか。自信も生まれて、躊躇せず感情を表現できるようになったし。結婚を通じて、大人らしい感性に足りないところはなくなったと自分では思っています」

劇中の状況や周辺の環境にも反応して変わるだろうが、チョン・ジヒョンは「観客が年を取って成熟するように、私も停滞せず違和感を与えず次の段階に進みたい」という希望を語った。「作品と縁を結ぶまでには、たくさんの時間がかかる」と言いながらも、ドラマであれ、映画であれ精力的に活動したいと言う。

「『猟奇的な彼女』以来、韓国映画の地位は低下してしまいましたが、K-POPやドラマはすごいです。どこに行っても韓国の歌が聞こえ、テレビでは韓国のドラマが流れています。素材が溢れているようです。役者なら当然いい素材に目を向けるでしょう。一つのジャンルにこだわりたくありません」

記者 : イ・ジョンミン、イ・オンヒョク、写真 : イ・ジョンミン