キム・ボムスからチョ・ジョンチまで…歌手たちは何故バラエティに出演するのか

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写真=MBC

歌手たちのバラエティ従属化現象から見られる不都合な真実

チョン・ジェヒョン、10CM、チョ・ジョンチ、MBC「無限に挑戦」を通じて注目を浴びた実力派ミュージシャンだ。チョン・ジェヒョンと10CMは2011年に放送された「無限に挑戦-西海岸高速道路歌謡祭」で知名度を上げ、チョ・ジョンチは2012年11月に放送された「無限に挑戦-モチンソ(ブサイクな友達を紹介します)フェスティバル」に出演し、ユニークな外見とバラエティセンスで注目を浴びた。

ヒップホップラッパーで、他の追随を許さない位置づけを確保したLeessangのキルは、3年半年ほど「無限に挑戦」のレギュラーメンバーとして活躍している。キルとともにLeessangで活動するケリもまたSBS「日曜日が好き-ランニングマン」の主要メンバーの1人だ。

「無限に挑戦」に出演する前も、チョン・ジェヒョンと10CM、チョ・ジョンチ、キルは、すでにその実力を認められたミュージシャンだった。しかし、音楽愛好家の間で有名だった彼らは「無限に挑戦」を通じて大衆が熱狂するスターとなった。「無限に挑戦」とは違い、音楽番組の性質が強いが、MBC僕らの日曜の夜-私は歌手だ」を通じて人気を得たイム・ジェボム、LENA PARK(パク・ジョンヒョン)、キム・ボムスも、バラエティによって実力派ミュージシャンが注目を浴びたケースだ。

それでは、何故アイドルだけでなく、テレビ出演とは距離があったベテラン歌手がバラエティに出演するのか。過去、バラエティの位置づけが今のように高くなかった時代、テレビで、それも音楽番組ではなく、バラエティ番組で歌手を見ることは、珍しいことだった。その当時もバラエティ番組を通じて新曲をPRする歌手はいたが、今のように必須ではなかった上、テレビに出演しなくてもCD販売と公演の収益だけで十分歌手としての生活が成り立った。

しかし、今は事情が違う。映像媒体の活性化と共に歌謡も“聴くこと”より“見ること”を重視するようになった。ここに2000年代半ばから後半にかけ、音楽性は劣るも、華麗な外見を持つアイドルがテレビ番組とポップチャートを占領し、“音楽”だけで生活していたミュージシャンの肩身が狭くなり始めた。

しかし、「盛者必衰」という言葉がある。ここ6~7年ほどでアイドルの歌に慣れた大衆は、聴く歌がないと吐露し始める。

一方、ここ数年のアイドルブームで少しずつ大衆の視野から離れていた歌手たちは、ミュージシャンとしての自身の名前と歌を宣伝するため、プライドを傷つけられる可能性があるサバイバル競争も拒まなくなった。音楽とまったく関係の無いバラエティに出演し、笑いものになるのも躊躇わない。過去に比べ大衆文化におけるバラエティの位置づけが高くなり、より多様な分野を発揮できるようになったことも、歌手のバラエティ出演ブームを巻き起こした主な原因の一つだ。

ミュージシャンの相次ぐテレビ出演を大衆は歓迎した。2010年、ケーブルチャンネルMnet「SUPER STAR K」が地上波放送を脅かす大ヒットを記録し、2011年MBC「ユ&キムの遊びにおいで-セシボン特集」「私は歌手だ」、KBS 2TV「不朽の名曲-伝説を歌う」「TOPバンド」が次々とヒットしたことも、更にはイベントソングに過ぎない「無限に挑戦」の音源が予想外の反応を得たのも、アイドル音楽への大衆の疲れと無縁ではない。

ある人は、テレビ番組を通じてやっと実力派ミュージシャンに熱狂し、聴く歌がないと言う一部の大衆の不満に対し「今も聴ける歌は多く、様々な音楽配信サイトを通じて聴く機会が十分に提供されているものの、大衆が自ら良い歌を発掘し聴く手間を掛けないだけだ」と評価したりもする。

一方、大衆はバラエティを通じてチョン・ジェヒョンやチョ・ジョンチ、またはキム・ボムス、TOXICなど、徹底してアイドル中心に動く歌謡界では後回しになるしかないミュージシャンが注目されるようになったと聞き返す。それもまた、自ら歌を探して聞く手間を掛けない大衆が招いた結果とも言えよう。

しかし、大衆が自身の音楽鑑賞水準を愛好家並みに高めるためのミュージシャンや新曲の発掘に、時間とお金を掛けないことを非難するわけにはいかない。大衆がより多様なジャンルの音楽を選んで聴けなくなった背景には、アイドルをPRするため、多数のミュージシャンを大衆の視野から外した現在の音楽業界やテレビ局の責任も無くはない。よって、長く主な番組、媒体を通じて、アイドルだけに接してきた大衆にとっては、従来の音楽番組と音楽配信チャートが出来なかった、隠れた実力派歌手に焦点を当てるバラエティ番組が嬉しいわけだ。

アイドルにより疎外されていたミュージシャンを積極的に迎え入れ、スターにすることに成功したバラエティ番組は、皮肉なことに、音楽業界を掌握したアイドルよりも音楽業界を脅かす可能性のあるテレビ局の力を強化させたことになる。

「私は歌手だ」「不朽の名曲」などの歌謡番組を目指すバラエティはともあれ、純粋なバラエティ「無限に挑戦」が、アイドルに押され立場を失っていたミュージシャンをスターにするという不都合な真実。歌手もバラエティで人を笑わせてこそ人気を得る事実をどう受け止めるべきか。単純にタレント性のある歌手が活動領域を拡大することとして受け止めるには、「無限に挑戦」の音源ブームに危機感まで感じなければいけない音楽業界の苦い現実が迫っている。

記者 : クォン・ジンギョン