映画「ザ・タワー 超高層ビル大火災」ハラハラさせたあの炎、本当 or 偽物?

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※この記事には映画「ザ・タワー 超高層ビル大火災」の結末に関する内容が含まれています。

1年間、「ザ・タワー 超高層ビル大火災」のCG作業を手がけたDIGITAL idea社を訪れる

映画「ザ・タワー 超高層ビル大火災」で、消防隊長カン・ヨンギ(ソル・ギョング)は向かい火作戦を狙い、火元に向かって酸素ボンベを投げる。そして斧でガラスを割り、火の手を建物の外へ誘導する。さあ、ここで問題だ。CG(コンピューターグラフィックス)で作ったものはなんだろうか。火元へ思いっきり投げた酸素ボンベも、建物の外へと方向を変える火の手も全てCGである。

写真=CJエンターテインメント
撮影当時、カン・ヨンギの投げた酸素ボンベは火元まで到達できず、NGカットだった。しかし安全上、撮り直すことは厳しいと判断し、酸素ボンベが火元へ向かったようなCG加工を施した。観客の胸を締めつけた最後の通話のシーンでもCGが使われた。撮影当時は携帯電話の画面が光っていたが、ディテールを活かすためにCGで携帯電話の画面を暗くした。このシーンには、約1ヶ月の時間を費やした。

2012年1月から11月までの11ヶ月間に渡り「ザ・タワー 超高層ビル大火災」のCG作業を担当したVFX(視覚効果)会社DIGITAL ideaを訪れ、“CGのすべて”を調べた。「ザ・タワー 超高層ビル大火災」のステージである超高層ビル“タワースカイ”が、100%CGで作り出した超高層ビルということは既によく知られている。CGは平穏な砂漠に砂風を吹かせることも、険しい山に吹雪を起こすこともできた。

「スタッフと俳優たち、現場で疑念と心配が多かった」

「ザ・タワー 超高層ビル大火災」は、全分量の3000カットのうち約1700カットがCG加工を施した作品だ。人物さえ撮影していない状態で、全てをCGだけで作り出したカットも150カットに達する。3D担当70人、FX担当15人を始め計150人のアーティストが1年間「ザ・タワー 超高層ビル大火災」に没頭した。撮影前、3ヶ月間に渡って会議を行い、40分~1時間に及ぶ撮影用のイメージ映像を作り、スタッフと俳優はこの映像を見てスペースを理解してから撮影に臨んだ。

写真=CJエンターテインメント
写真=CJエンターテインメント
「航空撮影したような冒頭の建物のカットや背景も全てCGです。建物の中を歩く人まで丁寧に表現しようとしました。私たちの目では、ここまで見ることはできませんが、ディテールが崩れると一気に『おかしい』と気付くんです。ヘリが衝突するシーンも同じです。3次元で作った建物にカメラを仕掛け、ヘリに生命力を与えて、目線を分散させました」

「ザ・タワー 超高層ビル大火災」を演出したキム・ジフン監督よりも撮影現場に多く出向いたというチェ・ジェチョン視覚効果監督は、「現場でグリーンスクリーンを使って撮影した後にCG加工を行ったので、現場では俳優とスタッフたちがクオリティなどに対する疑念と心配をたくさんしていたが、うまくいったのでほっとしています」と語った。何よりタワーが崩壊するシーンに最も手こずった。このシーンは昨年3月、ミニチュアで撮影してからCG加工を行った。高架橋が崩れるシーンもまた、ガラスに感情を入れようとしたので大変だったシーンの一つだ。

「CGの素となる撮影が本当に多かったです。そのため、必ず現場に行く必要がありました。CGスーパーバイザーが撮影をどのように進行するかによって後半の作業が大きく変わってきます。僕は現場で結構妥協する方でした。例えば俳優の後ろにクロマキー(Chroma key:複数の画像を合成する手法)を当てると工程が随分減ります。しかし、撮影しやすいように、クロマキーを当てずに撮影してからCG作業に取り掛かりました」

「『アバター』のような映画は無理…アーティスト同士の1対1では自信がある!」

写真=CJエンターテインメント
DIGITAL ideaは最近ジャッキー・チェンの「ライジング・ドラゴン」のCGを60%担当した。ツイ・ハーク監督の「ドラゴンゲート 空飛ぶ剣と幻の秘宝」(2011)もDIGITAL ideaがCGを担当した。ハリウッドのCG技術とのレベル比較について質問すると、チェ・ジェチョン監督は「さあ……」としばらく躊躇ったが、「アーティスト同士、1対1で対決すれば、韓国が勝つでしょう」と話した。歴史と規模などのシステム的な面が違うだけで、アーティスト個人の実力は対等なので、70~80%くらいはハリウッドに近づけたというのが彼の説明だった。

「正直韓国で『アバター』のような映画を作るのは厳しいです。環境が違いますからね。アバターは100%CG映画です。でも、続けてアップグレードしていけば『アバター』のような映画を作ることもできるのではないでしょうか。わずか4~5年前までは『ザ・タワー 超高層ビル大火災』のような映画も厳しいと思われていましたから。結局はお金です。もう少し発展するには予算がたくさん必要であり、投資し続けてCGツールそのものを開発しなければなりません」

写真=CJエンターテインメント
「ジュラシック・パーク」を見て視覚効果監督を夢見たというチェ・ジェチョン監督は、「ザ・タワー 超高層ビル大火災」を5回くらい見て、やっと映画そのものを鑑賞できたという。各シーンに集中して評価したためだ。他の映画を見るときも同じだという彼は、「以前はCGと実写がすぐ見分けられたが、最近はなかなか見分けられません。勉強しながら見ています」と付け加えた。

DIGITAL ideaは今後、本格的に海外市場に進出する予定だ。韓国映画の約60%のCGを担当しているが、150人あまりの従業員を稼働させるには韓国の映画産業の規模は不十分です。「『ザ・タワー 超高層ビル大火災』で150人のアーティストが韓国のCGの歴史を変えたと思います。今後の映画に対し、明らかに大きな影響を及ぼすでしょう」

写真=CJエンターテインメント

記者 : イ・オンヒョク