【コラム】テレビ業界から映画業界まで…ほとんどのものが面白くなくなった2012年 ― カン・ミョンソク

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ユ・ジェソクとカン・ホドンにとって、2012年は奇妙な一年だっただろう。ユ・ジェソクが8年間MCを務めてきたMBC「ユ&キムの遊びにおいで」が打ち切りとなり、「無限に挑戦」は長期の放送休止となった。カン・ホドンは下半期にテレビ復帰し、SBS「スターキング」とMBC「黄金漁場-ヒザ打ち導師」のみを担当している。およそ10年間、毎週4つのテレビ番組を進行していた彼らにとっては、望んでもいなかった時間的な余裕ができた。しかし「無限に挑戦」の放送中断は、ストライキの結果であり、「ユ&キムの遊びにおいで」は、番組の全盛期を支えたシン・ジョンスプロデューサーがMBC「日曜の夜-私は歌手だ」の演出に移ったことで、番組が揺れ始めたためだ。そしてカン・ホドンが1年間テレビ活動を休止したのは、競争力のためではなく別の理由のためだった。

番組以外のことが番組を妨げ、バラエティの一軸を壊した。しかし、その代案はなかった。MBCは経営陣の不適切な運営により、「日曜の夜-私は歌手だ」から「ニュースデスク」までの全般的な番組が競争力を失った。ユ・ジェソクとカン・ホドンの空席も埋めることはできなかった。オーディション番組の数はさらに増えたが、Mnet「SUPER STAR K」とMBC「偉大な誕生」は、今シーズンが最も低調な反応を見せた。カン・ホドンが抜けたKBS「ハッピーサンデー-1泊2日」に対し、視聴者たちの関心が以前より低くなったことも仕方ない。tvN「Saturday Night Live Korea(SNL KOREA)」をはじめ、政治風刺コメディがそれなりに活発な様子を見せたが、新しい選択肢になるほど大きな反応を得たわけではない。本当に、2012年のエンターテインメント業界は本当に奇妙な一年を送った。望んでもいなかった空白は他のものでは代替できず、まるで業界全般に渡って一時停止ボタンが押されたかのように、新しい流れが消えた。

絶えず登場するアイドル、終わらない停滞期

今年、メディアが取りわけ“危機”や“陳腐さ”を取り上げたアイドル業界も同じだ。従来の人気グループの一部は、海外活動のために韓国で活動しなかったり、スキャンダルで打撃を受けた。一方、空白を埋める新しいアイドルを見つけることは難しかった。BIGBANGのようなグループは精力的に活動したが、アイドル業界全体がエンターテインメント市場をリードするような流れを作り出すことはできなかった。韓国国内に限定すれば、今年、人気アイドルグループたちは活動領域を拡張するよりも、既存の領域を守ることで精一杯だった。Busker Buskerとイ・ハイは話題の新人となったが、彼らの登場も音楽シーン全体の変化には繋がらなかった。むしろ、アイドル、音楽リアリティショー、ドラマOST(劇中歌)など、メディアと大手所属事務所がリードする従来の流れがさらに強化されることになった。

T-ARAに関するスキャンダルは、この停滞期がどこから始まったのかを示してくれる。T-ARAのメンバーがファヨンを本当にいじめたかどうか、はっきり分かる人はいない。ただ、所属事務所の代表であるキム・グァンスがファヨンを脱退させ、ファヨンに問題があったと彼女にその責任を負わせて、T-ARAの新曲発表を強行した。多くの人々は、この過程を見ながらT-ARAのスキャンダルを横暴だと感じ、キム・グァンス代表が大衆の意志に逆らっていると考えた。Wonder Girlsのソネは結婚をして、IU(アイユー)は誤ってSNSに1枚の写真をアップロードするミスを犯し、Block Bのユグォンは自ら熱愛中であることを明かした。アイドル業界を支えてきたファンタジーは壊れた。一般の人々とアイドルが考えることも過去とは違う。それなのに、所属事務所の対応は人々が認識している現実と大きく食い違う。ファンタジーは消え、それを埋める新しい動力を作り出すことはできなかった。残ったのは、からっぽになった空間と、作品の外にあるスキャンダルだけだ。

現在を励ましたり、現在を忘れたり…

今年のファンタジーが仮想のストーリーの中で、初恋とレトロの結合を通じて描かれたことは意味深い。MBC「太陽を抱く月」、映画「建築学概論」、tvN「応答せよ1997」、映画「私のオオカミ少年」など初恋とレトロの結合は、ドラマや映画のヒットとともに、キム・スヒョン、miss Aのスジ、ソン・ジュンギなどをいわゆる“旬のスター”へと変身させた。過去のある時点での初恋が一つのトレンドになった理由は、今年、韓国映画界の他のヒット作品からも見ることができる。「折れた矢」「26年」「王になった男」「10人の泥棒たち」がその代表的な作品だ。これらは、現在の行動を促す政治的な意味を込めた作品、もしくは、時代性を取り除き、現在を忘れさせて大ヒットした映画だった。しかし、一本ずつ見ればいい作品ではあったが、新しい未来を期待させるような作品ではなかった。そのため、それぞれができることは、各自の領域でできることを最大限にやることだけだった。韓国映画はそのようにして1億人の観客を動員した。また、KBS「ギャグコンサート」は完全に新しい時代を開くことはできなかったが、ブラウニーやゲスト、「そうなの~」や「気になるなら500ウォン」のような流行語など、様々な方法で番組の位置を守った。BIGBANG、Busker Busker、ヒップホッププロデューサーのPrimaryなども、自分が活動するシーンの中で意味のある成果を収めた。しかし、誰も自分の外側の領域にまで大きな影響を及ぼして、流れを変えることはできなかった。

未来のために必要な動力は内部にある

そのため、PSY(サイ)が2012年のエンターテインメント業界のすべて、さらには社会現状の一部になったことは、素晴らしい偶然であり巨大な必然のように思える。韓国産業の流れを引っ張る領域の外側にいる人物が、韓国ではなく全世界で人気を集めた。特に「江南(カンナム)スタイル」は、音楽シーンの他の話題を埋めてしまうかのように、海外に進出するK-POPスターたちはすべてPSYと比べられた。そして、アメリカを含める欧米地域は、韓国歌手たちが夢と希望を探しに行かなければならない理想郷となった。業界を引っ張っていく力が弱くなり、システムを動かす人々はむしろ業界に悪影響を与えた。その結果、エンターテインメントの創作者たちは、新しい流れをなかなか見つけられず、現状の維持と過去への回帰の間で彷徨っている。そして、そんな時に登場した海外での巨大な成功は、市場の方向性まで決める。PSYとキム・ギドク監督のように世界で成功すれば、韓国では何でも可能になる。過去10年間、韓流ドラマ、または映画とK-POPスターたちが作り続けてきたいくつかの法則が、もはや市場の標準のようになってしまった。

産業は躍動性を失い、日本のオリコンランキングやビルボードのシングルチャートが韓国国内の音楽チャートの代わりに成功の指標となった。そういった意味で、2013年は創作者や制作者、そして、すべての人々にとって重要な選択の一年になるだろう。私たちは内部の動力を失ったまま、過去もしくは海外に行って成功することを望むべきなのか。それとも、コンテンツの中でもう一度新しいエネルギーを探すべきなのか。もちろん、1000万人の観客動員数やシングルチャートの成績は重要だ。しかし、それよりも新しいパフォーマンスを見せてくれる一つのステージを、人々の後頭部を打つような歌一曲を、気が狂ったように作られた映画一本を探し出し、その作品の価値を知らせることがより重要な時がある。そして、2013年がまさにその瞬間になるだろう。なぜなら、この不思議な一年は、有名だったほとんどのことが面白くなくなった一年だからだ。

文:コラムニスト カン・ミョンソク

「NAVERコラム - カン・ミョンソク編 -」では、今話題の人物にクローズアップし、コラムニストのカン・ミョンソク氏が執筆。韓国で注目が集まっている人物や出来事についてお届けします。

記者 : カン・ミョンソク、翻訳 : ナ・ウンジョン