Vol.1 ― f(x) ルナ「耳の不自由なファンから受け取った手紙は……」

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髪の毛をポニーテールに束ね、ホワイトのワンピース姿の少女がステージの中央にある小さな壇上に立った。マイクの前に立ち歌い始める。

1000日間の愛と1000日間の思いに関する歌を淡々と、時には切なく歌う。依然として10代の姿が残っているこの20歳の少女はまるで自分の思い出を歌うようにすべての感情を表し、観客たちは少女の訴えに集中した。KBS 2TV「不朽の名曲2~伝説を歌う」で6番目のステージに立ったf(x) ルナの一番目の曲は「千日の間」であった。

インタビューで会ったルナは思ったより小さかった。落ち着いた声は少ししゃがれたようにも聞こえたがはっきりしており、彼女は紛れもなく正直な目つきをしていた。「『千日の間』の舞台は感動的でした」と話した。「最初の舞台は正直に言うと、とても緊張しました」と彼女は伝えた。

「出演する前は『f(x)の活動のようにすればいいや』と思っていましたが、違いました。『千日の間』を歌う時はとても緊張しました。その後、まだ練習不足だなと思いました」

しばらく息を止めたルナの声は、以前とはトーンが違っていた。「2番目の舞台を終えてからが本当に幸せでした。このような舞台に立てるということ、私だけではなく他の歌手たちも望んでいる舞台、立ちたいと思う舞台に私が立てたことに感謝しました。それを自分自身が忘れてしまっていたようです」

ルナは2番目の舞台でチェ・ソンスの「同行」を歌った。原曲者であるチェ・ソンスも賞賛した。原曲とはまったく違うミュージカル形式の舞台で、歌を終えたルナの顔には満足感に満ち溢れていた。曲の始まりから最後まで時々変わる舞台が驚くほどだった。練習時間がわずか3日しかなかったと聞いていたため、より驚いた。ルナ自身も今回の経験を「いいチャンスだと思いました。2ヶ月間という短い期間でしたが、私が歌手として成長するのにいい機会となりました」と話した。

6番目の舞台のうち、ルナの記憶にはユン・ヒョンジュの「バカ」が一番深く残っている。曲を理解することも、舞台を表現する方法も全く道が見えないほど大変な時だったからだ。涙ばかり流しながら己の限界にぶつかったルナを再び立ち上がるように励ましてくれた人物は、子供の時から声楽を教えてくれた先生だった。

「ソニョン、私はあなたが中学生の時、初めて私の前で歌った、その時の姿をまだ鮮明に覚えている。だけど、あなたが歌いながら辛くなっている所を見ると、むしろ歌わなければいいと思う。もちろん歌は学ぶほど大変だが、私はあなたに楽しみながら歌ってほしい」

先生の話を聞いてルナは涙を流した。「あ、私は心配だけして、悲しんでいたんだなと思いました。そのような心構えなら聞き手も楽しくないはずなのに……その時から新たに歌の方向性を決めました」とルナは話した。

「バカ」を歌うルナの声は震えていた。ルナは友人から別れ話を聞いたように「バカ」を歌ったと放送で告白した。その歌を準備する際に、長年の友人から連絡をもらったからである。

「学生時代の頃は、友人が少なかった。そんなに親しい友人もいなかったが、一人、中学生の時に出会えた友人がいます。しかし私がデビューした後、距離感が生まれたのです。私は違うと思っていましたが、友人はそう感じていたようです。『バカ』を準備する大変な時期に連絡をもらいました。『あなたが歌手として成功したらいいな。私はあなたと違う道を歩いているけれど、あなたの友人として自慢できるよう、熱心に勉強して、いつか成功した姿であなたの前に立つ』そのSMSがあまりにも悲しくて申し訳なかったんです。いつも私の傍にいてくれる友人でしたが、その友人がこんなに悲しんでいるとは知らなかったのです。頼る人が私しかいなかったのに、私は自分のことだけを考えていたんだなと思います。いつもその友人から与えられるばかりでした。それを今になって初めて知りました」

友人を想いながら本音を込めて歌ったルナ。そしてソン・デグァン編では「太陽が昇る日」を手話で歌った。それは、耳の不自由な一人のファンのための舞台だった。

SMTOWNのコンサートのために移動していたルナは一通の手紙を受け取った。その手紙は日本人のファンが書いた手紙だった。ルナのファンという手紙の送り主は耳が不自由だった。手紙には、送り主のあるコンサート会場で経験した痛みが盛り込まれていた。TVで見る時は字幕を見てどんな曲か、どんな内容なのかが分かるが、字幕のないコンサート会場では何をやっているのか知ることができなかった。聞きたくても聞くことができない痛みを実感したのだ。そこで、手紙の送り主はルナにあるお願いをした。f(x)が日本で公演する際、1回だけでもいいから手話で歌ってくれないかと。

「感動と同時に、とても申し訳ない気持ちになりました。どうやったら恩返しができるのかと思って手話を学びました」ルナはそのファンに向かって「悲しみも苦しみもみんなどこかへ行ってしまえ/不可能なことはない/努力すれば良い日が来る」という歌詞を手話で歌った。

「歌詞を一つ一つ解釈し手話にして歌ったが、歌いながら同時に手話をすると、ミスをたくさんしてしまった。しかし私がありがたい気持ちと申し訳ない気持ちを込めて準備したことだけでも分かってくださったらいいなと思います。ちょうど収録現場で私に手紙で伝えて下さった方がいらっしゃったんです。現場から出た時にお会いしましたが、私を見て泣きました。私も泣きそうになりました。私だけではなくその手紙をもらった歌手なら誰でもそうしたと思います。そのファンも私のステージを見てくれたことでしょう。ぜひご覧頂ければと思います」

記者 : イ・スンノク