「蒼のピアニスト」から「追跡者」が垣間見える理由

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加害者の立場を代弁する法律システム…真実をごまかす道具として悪用

SBS NeTV 画面キャプチャー

恩知らずとは、このようなケースを指す言葉だろう。ホン・スピョ(オ・デギュ)がユ・マンセ(チョ・ミンギ)の燃えている家の中に入ったのは、まだ中にいる息子を助けて欲しいとするミン・バンウォル(ナ・ムニ)の懇願を断れなかったからだ。ホン・スピョはユ・マンセとミン・バンウォルにとっては恩人だ。家事で死にそうになったユ・マンセの息子、ユ・イナ(キム・ジフン)を助けたからだ。

しかし、ホン・スヒョはユ・マンセ家から恩人扱いされない。夫を殺そうとしたチェ・ヨンラン(チェ・シラ)が電話線を切り、夫ユ・マンセの頭に怪我を負わせたことは、彼女を拘束するに十分な理由だ。夫ユ・マンセの殺害を助長した疑いであるためだ。

拘束の危機の中でチェ・ヨンランは一つのアイデアを出す。息子を救ったホン・スピョを無断進入犯として指名することだ。更にチェ・ヨンランは家の中にあった高価な品物がなくなったと偽りの陳述をする。警察がホン・スピョを容疑者として指名し家宅捜査をするとき、彼の家からはチェ・ヨンランが陳述した高価の品物がたくさん出た。

日頃ホン・スピョと親しかったチェ・ヨンランの姑ミン・バンウォルが、ホン・スピョをかわいそうに思い、ホン・スピョにチェ・ヨンランが使わないブランド物の服や鞄をホン・スピョの家に送ったためだ。

藪から棒のように、火事で夫のホン・スピョを失っただけでなく、今や警察からホン・スピョを放火窃盗の容疑者として責め立てられ、ホン・スピョの妻ソン・ナムジュ(チョン・ミソン)は拍子抜けしてしまう。警察はチェ・ヨンランの陳述だけを信じ、ソン・ナムジュの陳述には耳を傾けようとしない。

ソン・ナムジュは、死んだ夫が善行を施したにも関わらず、放火窃盗容疑者にされたせいで、ミン・バンウォルから感謝の意味でもらったブランド物の服や鞄、ダイアの指輪を全部奪われ、町の人から指差される中、お腹の子供まで失ってしまう。チェ・ヨンランに悔しい思いを訴えようとするが、ソン・ナムジュが乗り越えなければならないハードルは高い。

ここまで来れば、あるドラマとのデジャヴを感じると思う。多大な人気を集め終了したドラマSBS「追跡者 THE CHASER」(以下「追跡者」)の導入の部分での設定だ。人気歌手PKジュン(イ・ヨンウ)が起こしたひき逃げ事件で娘を喪ったペク・ホンソク(ソン・ヒョンジュ)は、法廷でとんでもない目に遭う。法廷での偽証によって、悔しい死を迎えた娘が援助交際の学生になっていくだけでなく、ペク・ホンソクの妻まで自殺で死んでしまう。現実の不調理が連鎖反応を起こす。
「蒼のピアニスト」から「追跡者」が垣間見える理由は、法律のシステムが、真実を明かす灯火になるどころか、真実をごまかす道具として悪用されているからだ。視聴者が思う常識的な法律システムなら、法律は国民の悔しさを晴らし、罪を犯した悪人には、それに相応する刑罰を下さなければならない。

しかし、二つのドラマでの法律システムは、真実を明かす灯火になっていない。むしろ加害者の立場を代弁する。「追跡者」では、ペク・ホンソクの娘が普段おじさんと援助交際をしていたとの偽証のせいで、死んだ娘が不良青少年に思われてしまう。ペク・ホンソクは死んだ娘に対し偽証をした悪の枢軸に立ち向かう。

「蒼のピアニスト」のホン・スピョの妻ソン・ナムジュも一緒だ。会長婦人であるチェ・ヨンランの罪が死んだ夫に被せられたからだ。今後の放送でソン・ナムジュは法律が明かせなかった夫の悔しい死を、ペク・ホンソクのように、自ら明かしていかなければならない。

「蒼のピアニスト」に興味津々になっていく理由は、ユ・ジホとユ・イナ兄弟の対立、ユ・ジホとチェ・ヨンランの対立構図と、ユ・ジホとホン・ダミ(チン・セヨン)の恋愛模様だけでなく、チェ・ヨンランの悪行に立ち向かい真実を明かすソン・ナムジュの活躍のおかげだ。“対立”と“ロマンス”だけでなく、ソン・ナムジュの“真実探し”という三つの柱が「蒼のピアニスト」のストーリーを豊富にしそうだ。

しかし、ソン・ナムジュの真実探しゲームに、我々がただ拍手するわけにはいかないのはなぜだろうか。ドラマの現実は、真実が勝つのではなく、むしろ真実をいつでも操作可能な不完全な世の中であることを我々に喚起しているからだ。

ドラマが現実とかけ離れていることではないということを肝に銘じておく必要がある。ドラマは我々の現実を全部もしくは一部でも反映しているからだ。

記者 : パク・ジョンファン