BoA「人生の中で手放せない“Only One”は自分自身」

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写真=SMエンターテインメント

“少女から大人の女性に”というお決まりの表現を使うにはなぜか申し訳ない。
韓国で7月28日に放送されたSBS「BoA4354」は、BoAが初めてステージに立った2000年8月27日からショーの放送日である2012年7月28日までの時間を意味する。14歳の幼い少女がプロの世界に飛び込んでから12年、1人の少女がトップスターの座に上がり、その座に相応しい活動を披露するためにどれだけたくさんの汗と涙を流したかは、想像できない。しかし、「適当な曲でアルバムを出すわけにはいかないから、本当に良い曲を出すためにかなりの時間がかかった」と落ち着いて語る、歌手としてのプライドを持ち、7枚目のアルバム「Only One」をリリースしたBoAに会った。

―2年ぶりのフルアルバムである。いつから準備していたのか?

BoA:「K-POPスター」に出演する前から準備していたけれど、本格的な作業は放送が終わってから行った。「K-POPスター」は歌手になろうとする人々の熱意や情熱を見ながら、毎日が忙しく、忘れかけていたデビュー当時の心境をもう1度振り返ることができる良い機会だった。出演者たちの成長過程や挫折する姿を見ながら胸が痛くなったり感心したりしたけど、たぶん私のファンたちもそういう気持ちで私を見守ってくれているんじゃないかなと思った。そして、「The Shadow」はそういう感情を盛り込んだ曲。ファンたちのために書いた曲だけど、実はファンを見つめる私の姿であるかもしれない。非常に希望に溢れていて前向きというより、歌手という職業が持つ苦労を現実的に表現している。

「女戦士はもう止めると宣言した」

―これまでのタイトル曲たちはテンポが速く強烈なダンス曲がほとんどだったとしたら、「Only One」は甘いメロディーやピアノの旋律が目立つ曲だ。この曲を制作しリリースすることになった過程が知りたい。

BoA:テンポが早い曲を作りたくなかった。エレクトロニックダンスミュージックが好きではあるけど、最近はミッドテンポの曲をよく聞いている。それで、メロディーがあって良い歌詞の曲を作りたいと思ったし、アルバムにも収録したかった。しかし、それでも「Only One」がタイトル曲になるとは思わなかったのに、社長がその曲を聴いてタイトル曲にした方が良いと言ってくれたので意外だった。SMはビートが強く歌詞も強烈だから今回もそういう感じになるのかなと思ったのに。もちろん、最初から女戦士は止めると宣言していたということもある(笑) とにかく、「Only One」がタイトル曲になったのは意外だった。

―これまでのSMスタイルを捨てるという意味なのか?

BoA:タイトル曲はそう。ただ、アルバムを全体的に聴いたら、これまでのスタイルの曲もあり、バラードやソウルもある。演奏曲を除いたら7曲あるから、曲の数が少ないのではないかという話をする人もいるけれど、曲の数を増やすことは難しくない。だけど、私はそれより良い曲をアルバムに収録するのが重要だと思う。曲の数を増やすために、アルバムのクオリティを落としたくはなかった。

―“いい曲”とはどんな曲だと思うか?

BoA:非常に主観的な基準ではあるけど、私が聴いたとき、良いと思うことができて自信を持ってリリースすることができる曲が良い曲だと思う。私自身も聴きながらとばしてしまう曲があるけど、そんな曲をアルバムに収録したくはなかった。

―最近、7080(1970年代や80年代に若者だった世代)や8090(1980年代や90年代に若者だった世代)の感性を盛り込んだ曲が流行っているが、今回のアルバムもその延長線上にあるのか?

BoA:「K-POPスター」をやりながら驚いたのが、あの年齢の子たちがあの曲をどうして知っているのかと思うぐらい、昔の曲を沢山歌うという点だった。トレンドやスタイルも重要だけど、世代が変わっても愛されるのは歌詞やメロディーが残る曲だと思うようになった。私はエレクトロ系の音楽を主にやってきており、機械音がダンスのポイントになることは可能だけど、それが主になってはいけないとも思ったし。それで、今はメロディーが良い曲を作りたくなった。その時その時に追及するスタイルによってアルバムの雰囲気は影響を受けるけど、今回は特に私が望んだことが沢山盛り込まれていると思う。今回のアルバムにも名前は入っていないけど、共同プロデュースした。アルバム作業の最初の段階からそうした。

―エレクトロ系の音楽はやめたいと思ったきっかけは、年齢の影響もあるのか?

BoA:それも少しある(笑) 「Only One」を作りながら、誰もが1度ぐらいはこの曲をMP3プレイヤーに入れて聴いてくれたらいいなと思った。「Hurricane Venus」は沢山の方々に聴いてもらいやすい曲ではなかったと思うから。

―「Only One」は遠ざかっていく恋人を見て恋愛が終わったことを感じさせる哀情に関する内容だが、自分が書いた歌詞に自ら経験した内容も盛り込まれているのか?

BoA:残念だけど、それは違う。曲を書いた後、テーマを決めて小説を書く感じで書いたから、メロディーに合わせて歌詞を作り出す作業を行った。ストーリーが現実的に想像できるようにしたし、ミュージックビデオもさっぱりした感じにしようと努力した。

―「Only One」はダンスバージョンのミュージックビデオも公開したが、振り付けがかなり激しいのにヒールを履いていないためか、自由な動きでダンサーとしてより目立つ。パフォーマンスをそのようにした理由はあるのか?

BoA:今回は曲を作りながら頭の中に浮かんだ振付チームが「NappyTabs」だった。ハリウッド映画「COBU」を撮影しながら数ヶ月間一緒に仕事をしたから、誰より私のダンスをよく知っている人たちでもある。振り付け自体、ヒールを履いて踊ったら、その雰囲気をあまりうまく生かせないダンスだと思って、スニーカーを履いた。ヒップホップを基本にした振り付けが私は好きで、うまく踊れるスタイルのダンスでもある。アメリカで「Eat You Up」や「Energetic」を披露したときも、スニーカーを履いたけど、ダンスを引き立てるためには靴が重要だと思う。

―ライブステージではダンスバージョンのミュージックビデオで見せたダンスより、ダンスを少し本来の形式に戻すと言ったが、それは、決して簡単なことではないと思うが、どれほどの違いが生じるのか?

BoA:ライブをやる、やらないの違いは、ダンスを踊る、踊らないの違いが生じるものだと思えばいい。多くの人々が私をロボットのように思っているようだけど(笑) 今回の振り付けは踊ることだけでもかなり厳しい上に、私の動きよりダンサーたちが私を持ち上げて動く動作が多いから、ボーカルのコントロールができない。そのため、ライブでやるステージではまったく踊らないかもしれない。

―SBSで放送される「BoA4354」で東方神起 ユンホと「Only One」のスペシャルステージを披露する予定であるが、相手役としてユンホを選んだ理由は?

BoA:ダンスの実力が一番大きな理由だった。年齢もあまり離れてないから気楽にできるだろうと思った。1つ残念なのは、ユンホさんは背が非常に高くて「トムとジェリー」のような感じがするかもしれないということ(笑) だけど、私たち二人は可愛く見える(笑)

「今回の『K-POPスター』シーズン2では、口数を減らすつもりだ」

―11月からは「K-POPスター」シーズン2が始まるが、自分で後輩を育成するという計画はないのか?

BoA:ない。頭が痛くなりそうだから(笑) 会社でやっているのを見たら、決して簡単なことではなかった。それを見て分かっているから、後輩を育成するのは難しいと思う。

―SMエンターテインメントは「K-POPスター」シーズン1の参加者の中で、1人もキャスティングをしなかったが、特別な理由でもあったのか?

BoA:元々、1位になった人は自分が行きたい会社を選んで行き、2位からはあえて選ばなくてもいいけど、各会社が自由にキャスティングするようになっていた。だから、キャスティングをしなくてもいいことなのに、そんなふうに浮き彫りになって少し慌てた(笑) だけど、私が後輩を養成するというよりそれは会社がやることだし、今の私にとっては私自身をプロデュースすることがより重要だと思う。

―同じ時期にアルバムを出したPSY(サイ)と何故か対決構図が作られているが、どう思うか?

BoA:PSY兄さんの方が、強い(笑) プロモーションビデオも作品性があるし。どうやって乗馬に行くことを考えたのかな?(笑) 馬ダンスを踊りながら「兄さんは江南(カンナム)スタイル」と歌っているのけど、おじさんはもちろん、全韓国民が聴くはず。仕方なく、夏に新曲をリリースするときが多いけど、そうすると夏を狙った強烈な曲が沢山リリースされる。「Hurricane Venus」はDJ DOCの「俺はこんな人間だ」と対決したけど、実はその曲も作曲はPSY兄さんが作ったらしい。

―PSYは8月からMnet「SUPER STAR K4」の審査委員として出演するから、バラエティ界での対決構図もあるが。

BoA:それは、私との対決というよりヤングン(ヤン・ヒョンソク)兄さんとの対決になると思う(笑)

―「K-POPスター」で涙を流す姿をとりわけ多く見せた理由はあるか?

BoA:参加者たちは練習する時間があまりない。生放送が始まってからキャスティングのオーディションを受けて、その後、練習する。編曲をなるべく早く仕上げたり、水曜日に曲が完成したりしても、毎日、一日中練習できるわけでもないし、録画映像を撮る時間も必要である。だから、参加者たちは限られた時間でストレスや疲労がかなり溜まり続けると思う。そんな中、私がその参加者たちの年齢のときに海外活動をしながら大変だったことや、ステージが怖かったときのことを思い出して泣くことが多かった。でも、少し涙もろくなったかな(笑)

―シーズン2を控えて、パク・ジニョンさんは絶対顔に感情を出さないと言ったが、BoAさんも今、先立って考えていることはあるか?

BoA:まず、口数を減らすつもり。感情の起伏も少し抑えたいし。でも、審査委員がこうしようとか、ああしようと言うのは別に重要じゃないと思う。オーディション番組を作り上げていくのは、私たちの審査評ではなく、参加者たちの成長過程だから。

「家、仕事、ドラマ…それ以外は退屈な暮らしをしている」

―撮影を終えた映画「COBU」の作業はどこまで進んでいるか?

BoA:追加撮影や後半作業を終えたと聞いた。来年初めに公開を予定している。最初から「演技をやろう」と考えるよりダンスをちゃんと見せたいと思って始めた映画だから、映画の前半はダンスに気を遣って、演技にはあまり気を遣わなかったと思う。しかし、映画の中盤から後半にかけては演技がとても面白いと思った。いい世界を経験したと思うので、できるなら他の作品もやってみたい。

―それで、最近ドラマをよく見ているのか?Twitterにドラマの感想をよくつぶやいているようだが(笑)

BoA:元々ドラマが好き。家、仕事、ドラマ…それ以外は退屈な暮らしをしている。人間関係は深く狭い方を好むけど、現実は浅くて広い。あ、お酒はもう飲まない。(シン・セギョンさんがSBSの芸能ワイドショー「SBSテレビ芸能」で一緒にお酒を飲んでかなり大変だったと話したけど…)セギョンは自分でかなり飲んで家に帰るとき、「姉さん、私は大丈夫です。全然平気です!」と言ったくせに、私にそう文句を言う。私は無理やり飲ませなかったよ(笑)

―ドラマを見ると、そろそろ恋愛をしたいと思わないか?

BoA:切実に思っている。でも、外に出て会うのは…実を言うと、会うチャンスがない。「紹介してください」と言ったら、「君は理想が高いね」と勝手に思ってしまうから。理想のタイプは優しくハンサムな人だけど、人々から難しいと言われる。結婚情報会社に加入したほうがいいかな(笑) それで、「いつかは現れるだろう」と思ってドラマを見ていたら、ファンたちが下の兄さんのTwitterに「BoAさんがドラマを見ないようにして、外に出してください」とコメントを残すらしい (笑)

―最近見たドラマの中で最も理想のタイプに近いキャラクターは?

BoA:SBS「紳士の品格」のチェ・ユン(キム・ミンジョン)と言ったほうがいいかな?「『紳士の品格』の登場人物の中で1人を選ぶとしたらキム・ドジン」というインタビューが報道された後で撮影現場に行ったら、ミンジョン兄さんが少し拗ねたようだった。「いくらこんなふうにインタビューを受けても、結局はキム・ドジンでしょう!」と言われた(笑) でも、ミンジョン兄さんは本当に好き。実際、非常に優しくて、最高。空港でチェ・ユンがイム・メアリ(ユン・ジニ)の手首を掴むシーンも本当にかっこよかった。

―自分で演じてみたいキャラクターはあるか?

BoA:見るのはよく見るけど、キャラクターに感情移入してみたことはない。飛び回る剣客とかやったらよく似合うかな?実際、やってみたいのはラブコメディだけど、イメージがこうだからできないだろうね(笑)

―仕事、家、ドラマといった単調な生活をしていると言ったが、それが真実だとしたら実は、デビューしてから10年以上、そのような生活をしてきたことになる。だとしたら、作業するとき、必要なインスピレーションや活力はどうやって得ているのか?

BoA:家にいたらとても忙しい。みんなはただ遊ぶと思うだろうけど、家で音楽を聞いて本を読んで映画も見てドラマも見るのがかなり勉強になる(笑) そうやっているうちに、インスピレーションが浮かび上がるときも多いけど、一番重要なのは、曲というのは自分で楽器を弾いたり時間を投資したりすることでできあがる。

―今後、活動を通して今までと違う姿を見せたいとは思わないのか?

BoA:バラエティで活動することはないと思う。私とはあまり合わないようで、とても難しいから。SBS「ニュー!日曜日は楽しい」の「ランニングマン」に出演したときも、なるべく面白く編集してくれたのにあの程度だった(笑) あの“ユヌ様”(ユ・ジェソクのニックネーム)でさえも私が何かを言ったら少しぎこちなく感じているように見えた。私が何か言うと少し静かになり雰囲気をダウンさせる不思議な魅力があると言われた(笑) 兄が2人いるからか、性格が親しみやすい方ではなく、かといって活発な方でもないと思う。もし、他の活動をすることになったら、ドラマぐらいかな。ドラマなら作品を通して私の違う姿を見せることができると思う。

―長い間、活動をしてきて経歴が重なり、得たものもあるけれど、失ったものもあると思う。ある瞬間、肉体的に「私も歳を取ったな」と感じるときがあるか?

BoA:以前はあまり眠れなくても別にたいしたことではなかったのに、今は寝ないと大変。アルバムを出して練習が続き、ショーの収録の後からは何日もちゃんと寝ていないせいか、今もあまり健康的ではなく、目の下のクマが濃くなっているのを感じる(笑)

―人生の中で逃せない「Only One」を選ぶとしたら?

BoA:私という人間そのものだと思う。昔は、「一体何歳まで歌手をやれるんだろう?」といったようなことを考えたりもした。でも、韓国は1度芸能人になったら、一生芸能人でいるしかないと思う。それがとても怖い。だからといって、今すぐ歌手をやめるわけにもいかないし、やめようとしてもやめられない。結局、こんな自分自身を手放せないのだと思う。

記者 : チェ・ジウン、翻訳 : ナ・ウンジョン