「Dr.JIN」のジャンルは“恋愛・メディカル・近代歴史物?”

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写真=MBC

ソン・スンホンの役作りがドラマ成功のカギ

最近、テレビドラマで“タイムスリップ”が題材として扱われていることが多い。仁顕王后時代の士大夫が現代に来たり、朝鮮時代の皇太子が屋根部屋に迷い込んで来たりする。そして、このようなドラマがタイムスリップをする、究極の目的は“愛”であるようだ。

先月、最終回が放送されたドラマ「屋根部屋のプリンス」の視聴者たちが、結局は“別の時代の人間”という障壁を乗り越えられず消えるしかなかった皇太子を忘れずに涙を流しているように、もう私たちの時代では“真の愛”は時代を超えてこそ得られるものだと、タイムスリップを題材にしたドラマに訴えかけられているかのようだ。そして、このことに同意するかのように、もう一つの“タイムスリップ系ドラマ”が登場した。今回のドラマは、現代の医師が過去の時代に迷い込み、愛する女性と出会い、物語が始まる。

長期ストライキ中のMBCの週末ドラマ「Dr.JIN」は、村上もとかが10年間連載した漫画「JIN-仁-」を原作に制作された。最近、日本では同名ドラマがシーズン2まで放送され、日本の視聴者からも大きな反響を得た。そうして韓国バージョンとしてリメイクされた「Dr.JIN」だが、同ドラマが韓国で置かれている状況は厳しい。

「Dr.JIN」は、“タイムスリップ系ドラマ”だ。そして第1話で、現代を生きている医師ジン・ヒョクが、恋人が脳死状態に陥った状態で過去にタイムスリップすることとなる。ここでのタイムスリップは、このドラマへの視聴者の関心を引く最初のアプローチだと言える。しかし、視聴者たちは他のドラマを通じてすでにタイムスリップを味わった状態だ。

このような状況で「Dr.JIN」のタイムスリップは、ドラマのアプローチとなるよりは、陳腐な設定になりかねない。第1話の視聴率を見ると、それほど不評ではないとしても、視聴者にはこれと言って新鮮な設定として映らなかったようだ。現在、固定視聴者層を確保しているKBSが時代劇を放送していない状況ではあるが、日曜日の夜に放送される人気コメディ番組「ギャグコンサート」や、“視聴率の女王”あるいは“ラブコメディの勝者”と呼ばれる脚本家キム・ウンスクの「紳士の品格」がSBSで放送されるなど、「Dr.JIN」が置かれた状況は厳しいものだと言わざるを得ない。


すでに新鮮ではなくなったタイムスリップに代わる切り札が「Dr.JIN」にあるか

第三話では、たった一話のうちに主人公のジン・ヒョクが三人の命を救う。刑場の露と消える危機に瀕していたジン・ヒョクは、倒れた左議政(チャイジョン:高位の役職)の脳を開いて血腫を発見し、彼を救い、これとともに自身の命まで守る。また、水に落ちた妓生(キーセン:朝鮮時代の芸者)チュンホンを人工呼吸で命を救い、馬に蹴られて頭からの出血が止まらない人物も助けた。

このストーリーは、日本の原作ドラマでは数話に渡って描かれた内容だが、「Dr.JIN」ではたった一話の間に三人もの人物を助け、朝鮮時代に迷い込んだ医師ジン・ヒョクの冒険談に重きを置いている。ストーリーも適度にスキップし、“愛のためにタイムスリップしたドラマ”以上の可能性を見せている。

第一話の緊迫した救急室でのシーンと交通事故、そしてタイムスリップまで、緊迫した場面の連続にもかかわらず、それらが視聴者からの大きな関心を集められなかったように、原作、あるいは日本版の興味深いストーリーだけを羅列することで“題材の羅列”を克服できない可能性もいまだに残っている。だが、“新派劇”になった日本版の、貧しい母子のエピソードに父という存在を加え、貧困のために治療を拒否するしかない状況をもう少し劇的に描いたように、原作と日本版のストーリーをどれだけ韓国の歴史や情緒に合わせてドラマ化するのかが、韓国ドラマ「Dr.JIN」の成功のカギになると思われる。

放送前から話題になった韓流スター、ソン・スンホン、JYJ ジェジュンの出演や、“視聴率俳優”イ・ボムスまでが加わった、キャストの顔ぶれだけでも十分に見る価値はある。だが、まだ“セッティング中”という印象が強い序盤の「Dr.JIN」が、韓国で国民的ドラマとして愛されるためには、満たさなければならない条件がある。

現代で利己主義だったジン・ヒョクというキャラクターには、さらに深いアプローチが必要だ。日本版の主人公を演じた俳優、大沢たかおは、その存在だけで苦悩する医師の典型のように描かれた。今までは、イケメン俳優という認識が強かったソン・スンホンが、演技派俳優が演じたその役を跳び越えることができるかは、俳優自身の力量もそうだが、結局はドラマでジン・ヒョクの苦悩と葛藤を、どれだけ共感を呼ぶように描き出せるかにかかっているだろう。

また、日本版の「JIN-仁-」の坂本竜馬役を、韓国のイ・ハウンに置き換えたことは、優れたアイディアだった。内野聖陽の風変わりで愉快なイメージを越え、存在だけでも威圧感を与えられるイ・ハウンの活躍が、イ・ボムスを通じてまともに描かれるかが「Dr.JIN」の勝負所になるだろう。

それだけでなく、日本のドラマと違ったヒロインの設定と、新しく登場したキム・ギョンタクなどの人物の個性を生かしながらも、全体のテーマの中で散漫にならないように調整して行くこともまた「Dr.JIN」の課題である。

タイムスリップ、時空を超越したラブストーリー、メディカルストーリー、近代歴史物など、「Dr.JIN」が持ついくつかの要素の中で、果たしてどこに重点を置くのか。そこにトップスターたちを登場させ、いかに絶妙にバランスを取っていくのか。「Dr.JIN」の成否はその点にかかっていると言える。

記者 : イ・ジョンヒ