「屋根部屋のプリンス」チョン・ユミ“セナによってコンプレックスから脱皮しました”

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写真=キム・ジェチャン
「セナは次にどんな計略を立てているのだろうか。パク・ハをいじめるために生きているみたい」

チョン・ユミはSBS「屋根部屋のプリンス」(脚本:イ・ヒミョン、演出:シン・ユンソプ、アン・ギルホ)で、欲張りで持っているものより大きなものを欲しがるホン・セナ役を演じた。誰が見ても可愛くて魅力的なホン・セナ。しかし、母の再婚で出会った妹のパク・ハ(ハン・ジミン)が気に入らず、出かけた時にわざと彼女を置いて行ってしまう。後にパク・ハが再び目の前に現れると、これまでの嘘がバレるのではないかと焦る。いつも明るいパク・ハと一緒にいると、自身がみずぼらしくなるような気分になり、腹が立つ。自身が求める富と名誉を得るためには、なりふり構わない。

前作であるSBSドラマ「千日の約束」(脚本:キム・スヒョン、演出:チョン・ウルヨン)で演じたノ・ヒャンギと相反するキャラクターだ。ヒャンギは「馬鹿みたい」と思えるくらい、愛する人の前では自身の意見はもちろんプライドも捨てることのできる人物。そんなヒャンギだった彼女が180度変わったのだ。

4日午後、ソウル江南区(カンナムグ)論硯洞(ノンヒョン)のあるカフェで、3か月もの間朝鮮時代と現代を行き来しながら大きな人気を博した女優チョン・ユミに会い、これまでの話を聞いてみた。


“優しい女”というコンプレックスから脱皮したかったです

最初、セナ役だと言うと周りから『何で悪役なの?ヒャンギのイメージをもっと維持してもいいじゃない……悪役するとイメージも悪くなるよ』とたくさん言われました。でも私はヒャンギのイメージから脱皮したかったんです。普通のキャラクターではその優しい女のイメージを捨てることは難しいと思いました。批判されても“悪役”にチャレンジすること自体が有意義だと思って選択しました。まずは周りの意見より、自分の意見を重視しました」

「初めは周りに怒りを撒き散らすので、ストレスもなくなって面白かったです。でも、中盤に進むと『果たしてセナの悪行はどこまで?』と感じ、私自身も全く分からない状態になりました。制作発表会の時に『妥当性があって納得のできる悪役をお見せします』と話しましたが、ただの悪役で終わるのではないかと怖くもありました。私はキャラクターに対する愛情があり『なぜセナがこうするしかなかったのか』と悩みましたが、限りない悪行を繰り返すセナの姿を見て、視聴者はもちろん私自身も、ただ悪行を繰り返すだけなのではないかと理解しがたい時もありました」としながら、彼女は「朝に送られてきた台本を読んで驚いたこともある」と打ち明けた。

「セナ役に愛情はあったけど、もどかしい時もありました。ジミンさんとJYJのユチョンさんとは冗談も言いながら楽しく撮影しているのに、私とテソンさんは常にどうすれば目的を達成することができるか陰謀を企て、不安が募り、さらには互いを騙そうとしているので、二人が羨ましかったです(笑)」

もし自分がパク・ハ役を演じたら?と聞くと「ジミンさんが明るく元気なパク・ハ役を上手に演じました。実際のジミンさんの性格がパク・ハみたいです」とハン・ジミンがパク・ハ役を自然に演じたと話した。続いて、「ジミンさんだけでなく、他の役も彼らではない人が演じることは想像もできません。その分、みんな自身の役に没頭していました」と出演陣を褒めた。

彼女が出演するシーンの80%以上は、テムとの恋愛より、ヨン・テヨン(ユチョン)とパク・ハをいじめることが大半であったと言っても過言ではない。ユチョンとハン・ジミンカップルの場合はキスシーンが数回あったが、テムとセナカップルはキスシーンさえ一度もなかった。残念ではなかったかと聞いてみた。

「そうですね。私は残念ではなかったんですが、多分テムはすごく残念だったでしょうね(笑) 実は私たちも『何で私たちカップルにはキスシーンがないのかな』と話したこともあります。テソンさんは、もしキスシーンがあったらどんな風にするかまで、前もって考えていたんですよ(笑) テムとセナは『恋人』ではなくて『悪行パートナー』と呼んだ方がいいと思います」

それでもテムは、ひたすらセナのことを愛してくれた。「はい、そうです。テムみたいな男性っていいですよね。イケメンで金持ちの息子で、何よりセナのことを愛してくれるんですから。ひたむきな男性はかっこいいです!私は心が通じる人がいいです。ある人に出会って、私が彼に影響を与えて彼を変えることは難しいと思います。本来の性格と好み、価値観が似ていて私と同じ方向を眺めている人がいいです」と確固たる男性像を語った。

自身の性格について聞くと、「私は内向的です。家で本を読んだり、一人で本屋に行って買ってきたDVDを家で観ることが好きです。そのため、外向的な男性よりは無言で純粋な男性がタイプです」と話した。

そして彼女は、「2001年に放送されたドラマ『ピアノ』でコ・ス先輩が演じたハン・ジェスのような男性が好きです。無言で静かながらも、生意気なところもなく、純粋な人。もちろん先輩と個人的に会ったことがないので彼の気持ちがどうなのかは分かりませんが、コ・ス先輩の顔と、ジェスの性格をしている男性が私の理想のタイプです」と付け加えた。

出演者との呼吸はどうだったのかという質問に彼女は「シーンの多い少ないを問わず、すべての俳優との呼吸がぴったりでした。互いにうまく合わせてくれる感じですかね?でも、これといったエピソードもないくらい、撮影がハードでした。バトンタッチするようにところところ移りながら撮影し、シャワーを浴びる時間さえありませんでしたから(笑) それにもかかわらず私たちがこんなに親しくなれたことは不思議だと思います」とチームワークを誇った。

「あ!私がジミンさんをたくさんいじめてたでしょう?本気ではなかったんですよ。ビンタして水をかけるシーンがあったんですが、幸い1回で成功しました。『こんな角度で~』という撮影監督の指示に従って数回練習した結果、NGを出しませんでした。後で私がジミンさんに水をかけられるシーンがあったのですが、ジミンさんをこれまでいじめたことを考えて『気持ち良くばっとかけてください』と頼みました(笑)」


H.O.T.が見たくて事務所に行った時にキャスティングされました

チョン・ユミの子供の頃の夢は教師。保守的な親に「女性の職業としては教師が一番いい」と言われながら育った。チョン・ユミ本人も芸能人になりたいと思ったことは一度もなかったという。しかしそんな中、彼女の人生が大きく変わる運命の日が迫ってきた。

「2001年頃だったのかな?学校で遠足に行くという内容の案内文を自分で作って親に1万ウォンをもらい、釜山からソウルまで友達と遊びに行きました。釜山出身なんです。せっかくソウルに来たんだから、SM事務所の前まで行ってみようと思いました。当時私はH.O.T.のファンだったんです。

事務所の前で待っていると、メンバーの一人がビルの中に入っていきました。実際にH.O.T.を見て嬉しくなり、もっと見たくなりました。ガラスのに顔を突きつけながら中を眺めていました。するといきなり事務所の関係者が私に『ちょっと来てみなさい』と言ったんです。それで、突然練習室で歌って踊りながらオーディションを受けることになりました。歌を終えるとすぐに『歌手はダメだね』と言われました(笑) 代わりに『演技してみないか』と誘われました。親は最初は反対しましたが、結局契約することになり、芸能活動を始めました。」


イ・チャンドン監督の作品に脇役でもいいから出演してみたいです

「実は、今の自分の地位が信じられません。デビュー後に受けたほぼ全てのオーディションでは、いつも最終段階で落ちていましたからね。私はいつも仕事を探している立場でした。なので『誰がオーディションで合格した』という話を聞くと悔しかったり悲しかったりもしました。しかしもともと、私は一喜一憂しない性格です。私のことを元気で華やかで外向的だと思う人々もいますが、実際私は家にいる時間が好きで、前もって決めた約束ではないといきなり出かけることは好みません。でも最近は以前に比べて明るくなった気がします。私が先に誘うこともあります。疲れていても、知り合いに会ってくると気分が良くなるので」

前作「千日の約束」の場合も、オーディションを受けてヒャンギ役にキャスティングされたという彼女は、「最近『一緒に仕事をしてみたい』と言われると信じられません。もちろん嬉しいけど、何が何だかよく分からない気もして……もっと頑張らなきゃという思いが先立ちます」と謙遜した態度を見せた。

「最近はドラマ、映画を問わずに次期作を探しています。“1秒シルミド”という修飾語がついたほど、映画から活動を始めた私だし、撮影現場も好きですから、常に映画をしたい気持ちはあります。私はあるキャラクターをしてみたいというよりは、作品の中から静かなエネルギーを発散するキャラクターに憧れています」

彼女の大好きな映画はイ・チャンドン監督の映画「ポエトリーアグネスの詩」だという。

イ・チャンドン監督の映画ならどんなに小さな役でもいいから現場を体感したいという彼女は「ユン・ジョンヒさんのように静かながらも重みのある感じが好き」とし、「今はそんな役はできないけど、様々なキャラクターを演じながら半径を広めたいです」と女優としての姿勢を見せた。

記者 : キム・ボラ