「屋根部屋のプリンス」イ・ヒミョン脚本家が使った“魔法”はこれだ!

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“シンデレラ”にタイムスリップを混ぜ“白雪姫”のトレンドを加える

韓国地上波3社の水木ドラマがしのぎを削っている中「屋根部屋のプリンス」の奮闘が注目されている。

ドラマ放映前は、イ・ジェギュ監督の「キング~Two Hearts」が圧倒的に勝つと思われていた。しかし、いざ蓋を開けてみると、意外なことに奮闘したのは復讐劇の「赤道の男」だった。だがその中でも「屋根部屋のプリンス」は一貫して2位の座を守り続けた。その上、大詰めに向かっているこの頃は、一部の視聴率調査では1位を占める波乱も起こしている。

写真=SBS

「屋根部屋のプリンス」の成功、その出発点は脚本家のイ・ヒミョン

しかし、視聴率だけでは計りきれない。主人公JYJ ユチョンを、女心をくすぐる男主人公1位に押し上げた成果や、SNSでの反応が最高のドラマだという評価を見れば(特に最近はテレビの視聴権は中長年層に偏り、若者はワンセグ放送やダウンロードを利用する人が多いことを踏まえると)「屋根部屋のプリンス」が成功しているドラマであることを証明している。

それでは、「屋根部屋のプリンス」がこのように若者たちにウケるドラマになった理由は何だろうか。その第1に挙げられるのは、ストーリーの力である。

「屋根部屋のプリンス」の脚本家は、ラブコメディの脚本家としては稀である男性脚本家のイ・ヒミョン氏。彼は以前、キム・ヒソンとチャン・ナラを青春スターにした「トマト」と「明朗少女成功記」の脚本家でもある。

また、最近スター脚本家たちの帰還成績が依然として自己複製を続けているとの評価を受けている反面、イ・ヒミョン脚本家の場合は、冗談で「何かの中毒でハイになって書いてるんじゃないか」とネットユーザーたちに言われるほど、屋根部屋を取り巻いて描かれる毎話のストーリーは、視聴者たちを笑わせ泣かせている。

写真=SBS

もちろん、イ・ヒミョン脚本家の伝え方は古典的だ。しかし…

実は、イ・ヒミョン脚本家のストーリーは非常に伝統的だ。心優しい女と、彼女をいじめる悪い女、そして一途に心優しい女のそばで彼女を物心両面から支える、カッコイイ男。世界を貫くシンデレラのような古典の一貫した童話をそのまま再現している。「屋根部屋のプリンス」でも、過去でも現在でも、パク・ハ又はプヨンは、姉のセナ、またはファヨンにいじめられる。

このようなストーリーもマクチャン(日常では起こらないような出来事や事件が次々と起きる韓国ドラマ特有のストーリー)ではないかと首を傾げる人もいるだろうが、それは神話や説話について何も知らないから言える話だ。おとぎ話では、あらゆる残酷な内容は削り落とし、ただひたすら勧善懲悪の古典的モチーフだけを残しているが、一人の男をめぐっての姉妹の血生臭い対決についての説話や神話、昔話は、世界中に溢れている。

姉妹なのにどうして?しかし、そこを神話学を通して見れば、人間の両面性の象徴とも言えるし、あるいは聖書でもカインとアベルの悲劇のように、最も近い間柄であるほど、利益に関わる愛憎がかかっていれば水火も辞さないのが、人間の本性だということへの戒めだとも言える。

そのため、ドラマで心優しいヒロインのパク・ハが愛を勝ち得れば勝ち得るほど、姉のセナは悪の化身となって彼女のものを奪い取ることに没頭する。自ら自滅の道を歩くしかないのがストーリーのしかるべき展開であり、子供の頃読んだ昔話以来、このようなストーリーに本能的に魅了されるしかないのだ。

写真=SBS

古典的なストーリーを「タイムスリップ」でひねる

もちろん、イ・ヒミョン脚本家の「屋根部屋のプリンス」が人気を集めた理由は、ただ伝統的だからではない。他の脚本家たちが状況設定を変えても、依然として自身の前のスタイルから脱せなかった。反面、イ・ヒミョン脚本家はこれまで彼がやってきた古典的方式をひねり、そこに最近人気を集めている様々な興味深い要素を取り入れているのだ。

その一つがタイムスリップである。「屋根部屋のプリンス」の基本的な魅力は、過去の皇太子妃殺人事件を解決しようとする皇太子と、彼の臣下3人が偶然現代のパク・ハの暮らす屋根部屋に飛ばされた所にある。しかしここで彼らが経験した偶然は、後になってみるとやはり運命だった、ということになる。皇太子らは、現代でも過去のことをそのまま繰り返して経験するようになり、その過程で過去のすれ違った縁を悟り、謎を解いていく。

そのためタイムスリップという、ドラマとしては冒険的な工夫をこらしているが、過去と現在が首尾一貫するというコンセプトによって、視聴者はドラマへの論理的なアプローチに負担を感じなくなるのだ。

そして、ドラマのジャンルは基本的にラブコメディだが、毎回毎回、次の話を予測できないスリルと推理劇に、コミカルさまで加え、作品のさらなるファン要素を豊かに取り入れている。そのため、途中からの“新規取り込み”が難しいところはあるが、ドラマ的な面白さを求める人なら逃せない魅力を持ち合わせている。

写真=FOX

そして「Once upon a time」にも通じる

このようなイ・ヒミョン脚本家の方式は、最近アメリカのドラマと映画などで頻繁に借用されている方式でもある。FOXチャンネルで放送される「Once upon a time」は、童話の主人公たちが過去の事件のトラウマを解決できないまま、白雪姫を憎む王妃に呪われ、一つの村に集めて暮らしながら事件にぶつかるストーリーだ。

またCGVの「Grimm」は、童話の事件が現代版の殺人事件として再現され、その昔話を採集していたグリムの子孫が刑事になり、その事件を解決するストーリーとして展開されている。ドラマだけではない。先日韓国で公開された映画「白雪姫と鏡の女王」や、今月末の公開を控えるハリウッド映画「スノーホワイト」も、白雪姫の物語をひねったり再解釈した映画だ。

このように、世界的に人々に馴染みのある古典を再解釈する作品が続いて登場しており、「屋根部屋のプリンス」も大きな観点ではこのような“温故知新”の流れに乗っている。このような古典の再解釈は、とりあえずは観る人にストーリーに馴染ませるメリットを持ち、それが歪んだ再解釈をされた時に感じるカタルシスをさらに極大化させる長所がある。

知らない話を上手く物語るより、知っている話を新しく解釈した方が、受け入れる人には一層気楽であり、それが歪まれる時受ける刺激は、知らない話から受ける感動よりさらに大きくなるのだ。

映画やドラマがこれまでずっと実話を背景にした作品を作ってきたのと同じ脈絡で、それを私たちによく知られている古典という領域にジャンルを拡張させているのが最近のトレンドであり「屋根部屋のプリンス」は賢くその戦略を採用し、成功を収めているところだ。

写真=ヌリピクチャーズ

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記者 : イ・ジョンヒ