「ウンギョ」の“動物的女優”キム・ゴウン、これまで知らなかった彼女の素顔に迫る

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女優キム・ゴウンと初めて会ったとき、彼女の口から出た最初の言葉は「こんにちは。お!」だった。挨拶とともに周りのものに興味を示す、20歳のナチュラルな女性、キム・ゴウンだけの魅力が十分に感じられた。

では、ウンギョはどこへ行ってしまったのだろうか。もちろん、まだキム・ゴウンの中からウンギョが飛び出すときがあり、友達から「可愛いふりはもうやめなさい」と言われることもあると言う。今は、ウンギョとキム・ゴウンが混ざっている感じだろうか。今になって話せることだが、スクリーンにデビューしたばかりの20歳の新人には理解し難いキャラクターを、彼女は立派に演じた。

そして、チョン・ジウ監督と個人的に会ったとき、監督が彼女について“本能的な演技、動物的な女優”と表現するほどだった。それだけ役柄を体すべてで表現したということだろう。

映画の話題を準備してはいたが、キム・ゴウンはすでに色々なインタビューで「ウンギョ」での演技に対する心境と、その過程について繰り返し打ち明けたはずだ。この生き生きとした20歳の女優の前でこれ以上露出シーンや、家族の反応などを尋ねることはできなかった。そして、同意を得て“雑談”を装ってキム・ゴウンを探求する時間を設けることにした。


監督が挙げた最高の演技、それに対するキム・ゴウンの解釈

映画公開直前にチョン・ジウ監督は「キム・ゴウンの演技の中で一番優れた部分は、教室で静かに筆箱を揺らす姿だった」と話した。ここでのポイントは、そのまま揺らしたことではなく、“静かに”だ。確かに筆箱を揺らすシーンは設定されていたが、具体的に演技をする中でおそるおそる静かに揺らしたのは、キム・ゴウンの解釈だった。

チョン・ジウ監督は「友達の多い教室でウンギョという子の性格と、老詩人イ・ジョギョに対する彼女の共感を見事に分析した演技」だと言う。確かにこれは、映画でイ・ジョギョを理解し、彼の姿に感動したウンギョを、キム・ゴウンなりによく解釈したと言える。

「監督がその演技について気に入ったと言ったけど、私にはウンギョが筆箱を揺らしたこと自体が感動でした。教室でひとりで筆箱を揺らしているのはノーマルな行動ではないですね。周りを意識する感じもあったし、学生たちが誰も気にかけていないとき、揺らしてみたんです。私だったらなかなか理解できなかったと思いますけど、ウンギョはおじいさんと一番長く話していたし、おじいさんが鉛筆がぶつかる音が悲しいと言ったとき、その悲しみを知りたかったみたいです。ああ、おじいさんはこのように悲しかったんだ、おじいさんはこのような感情だったんだ、と……」

監督の言葉に対する“キム・ゴウンの解釈ではない”解釈だった。「モダンボーイ」「ハッピーエンド」を通じてキム・ヘス、チョン・ドヨンという最高の女優を再発見したチョン・ジウ監督だが、彼との作業でプレッシャーを感じなかったのかと聞いてみると、まったくなかったと言う。ただ、作品が余りにも大きかったことと、ウンギョという役柄に対しての負担があっただけだったと言う。キム・ゴウン、彼女は本当に生まれつきの役者ではないか。逆にキム・ゴウンは、チョン・ジウ監督の作業スタイルに感謝していた。

「監督が私をとても大事にしてくれているという感じがしました。私は新人で、よく分からなくて戸惑うときもあったと思います。でも、監督は、私を女優として見てくれました。本当に些細なことでも、私の意見をきちんと聞いてくれました。『ゴウンさん、昨日の夜ずっと悩んだけど、これはどう?』と言いながら。新人には厳しい撮影だろうと考えて実は覚悟して行ったのに(笑)」


キム・ゴウンは、一人でもやっていける? 独立した“新女性”

好奇心の多い映画の中のウンギョとは違ってキム・ゴウンは、人の話をよく聞く方だと言う。自身のつらい気持ちや本音は、友達に言おうかと思いながらもほとんど自分自身で飲み込むという。

「泣くほど悲しくても、なぜ私が悲しいのかを考えます。後になって『あ、このためだったんだ』と気づいたりします。でも、友達に聞かれるとなかなか話せないんですね。辛いときは、他の人に頼らない方です。それで、『あなたはどうして全部を自分で解決しようとするの』と残念に思う友達もいます」

ちょっと心配になって、ひとりぼっちではないか、と聞いたら、彼女は「友達といろいろ話はしますよ!」と言いながら大きく笑った。映画の中の“ウンギョ”と比べ、実際の高校生活はどうだったのか聞いた。制服姿であちこち走り回るお転婆少女だったのか。

「友達ともよく話しましたけど、一人で何かすることが好きでした。女子中高生は、トイレに一緒に行ったり、売店にも一緒に行ったりしますよね。それが理解できなかったんです。売店も、私は授業が終わって食べたいものがあれば、一人でさっさと行ってきたりしました。でも、それって、おかしいですか(笑)」


実はキム・ゴウンは“職人”? ハンマーとドリルでステージセットを製作

キム・ゴウンは、まだ学ぶべきことがたくさんある学生でもあった。わずか一年前には、今のように映画の主人公になって多くのメディアのインタビューに応じることは想像もできなかったという彼女であった。これまで、演技の練習は本当にたくさんやったのではないか、という質問に予想外の答えが返ってきた。

「1年生のときは、演技をした記憶より作業した記憶の方が多いです。“劇場実習”という授業があります。公演のためのステージセットを作る授業ですけど、私はその作業がうまいらしいです(笑) 『学校に美術課が別にあるのに、演劇院に両手でドリル作業をしたり、リズミカルにハンマーを打ったりする人がいる』と、そこまで噂になったようですけど、それが私です(笑)」

軍隊で作業した記憶を辿りながら、ハンマーとサンドペーパーについて話すと、キム・ゴウンは、よく分かる、と喜んだ。サンドペーパーでの作業だけは、高校時代からうんざりするほどやったと言う。これは確かに20歳の大学生が共感するような話ではなかった。それにも関わらず、このように“作業”の話で盛り上がるとは。インタビューをしながら、妙な気分になったのも事実だった。

認めよう。女優キム・ゴウンは生まれつきの“職人”でもあった。


実はキム・ゴウンは、“プライド”が高い?

おいしい物が大好きだと言うので聞いてみた。この頃はまっている食べ物は何か。それは、他でもない辛いチャンポン(韓国風中華料理に分類される麺料理)だと言う。キム・ゴウンは、辛くて塩辛い刺激的なものが好きな典型的な韓国人の舌を持っていると、そっと恥ずかしげに言った。でも、辛いチャンポンを食べて汗を流す彼女に、親切に牛乳を与えることはしないでほしい。“プライド”があって牛乳は絶対飲まないと言うから。

中国で暮らしたことがあるだけに、火鍋(フゥオグゥオ:中国式シャブシャブ)と羊肉の串も大好物だと言う。火鍋を食べてみた、と言ったら、キム・ゴウンは「発音が間違っている」と指摘し、正しい声調の発音に直してくれた。火鍋の中国式発音は“フオゴォ”に近かった。

食べ物に対する真剣な気持ちがあったのか。自ら本場の味を追求すると言ったキム・ゴウンは、仁川(インチョン)のチャイナタウンに本場の調理法を活かして料理する店があるという、耳寄りな情報も聞かせてくれた。後ほど一緒に食べに行く約束もした。


実はキム・ゴウンは、高いところが好き?「本も高く積んで読む」

憂鬱な気分だったり感情を整理したいとき、キム・ゴウンは上を向いて歩くと言う。自分は高いところが好きな習性があると言い、家の屋上、学校の屋上、建物の屋上など多様な屋上の例を挙げた。

好きな本もいつも多く積んで読むタイプだ。実は、小説「ウンギョ」もキャスティングされる遥か前から、純粋な読者の一人としてすでに読破したと言う。

また、人が多い江南(カンナム)中心街には絶対に行かない。代わりに平日の三清洞(サムチョンドン)の小路、雨の日に桜の花が落ちたばかりの路上などを散策することが好きだと言う。女優キム・ゴウンに会うためには、ひとまず各建物の屋上、あるいは平日の三清洞(サムチョンドン)付近を探せばいい。

インタビューの最後に、身辺雑記に終わらないよう真剣な質問をした。これからどのような女優として人々に記憶されたいのか、と。

「今“ウンギョ”を演じたばかりでしょう。 一生演技したいです。ひたすら熱心にするだけでなく、たくさん壁にぶつかって壊れたりすれば、それだけ成長できるだろうという覚悟もあります」

自身の内面と世の中に対する好奇心が強かった少女は、いつの間にか確かな女優、キム・ゴウンに戻っていた。

記者 : イ・ジョンミン、イ・ソンピル