ペチギ ― ラップは英語の専有物?「99.9%ハングルで歌う」

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写真:YMCエンターテインメント

ペチギ、“劣等感”と“被害意識”を盛り込んだ新曲を披露

3年と1ヶ月の間で、数十グループが登場しては消えていく、とりわけサイクルの早い韓国の音楽業界の“時計”に慣れているせいか、グループのペチギ(タク、ムウン)のブランクは特に長く感じられた。しかし、時間は彼らを変えることは出来なかった。その間ペチギは、MC Sniperの元を離れ、新たな場所での再出発を試みた。それだけではない。“ペチギならでは”と言われる、辛辣な風刺を盛り込んだ音楽も、このときから見られるようになった。

「Sniper Sound(MC Sniperが立ち上げた会社)で過ごした時間が10年です。音楽を始めてから、ずっとそこで過ごしたといっても過言ではありません。そしていつからか、枠から抜けだせていないような、そんな考えが浮かんできたんです。これ以上何ができるかとも思いました。苦労はするだろうけど、一度抜け出してみようと思って、大胆に挑んでみました。『僕らだけで音楽をやってみる』と言って、何も考えずに出てきたんです」(タク)

ペチギの新しい事務所は、フィソン、Ailee、シン・ボラなどの所属するYMCエンターテインメント。「音楽は勝手にしろ。音楽以外の部分をサポートする」と自分たちを信頼してくれるチョ・ユミョン代表の言葉に、心が傾いたという。続いて、「以前は、俗に言う“大ヒット”への願望がそれほどなかった」と話し、「今は信頼に応じなければならないと思うようになって、さらに責任感を感じるし、期待と負担を同時に抱えている」と話した。


“人間らしく生きたい”という渇望を「二匹」に盛り込んだ

タイトル曲は「二匹」。ペチギの音楽全般を貫く“劣等感”と“被害意識”をそのまま表す曲名だ。就職や金銭面のことを心配し、「いつになれば人間らしく生きることができるか」「いつになれば成功するか」と嘆く同世代の若者の人生を歌ったという。けだるい姿を、助数詞“匹”を使うことで表現した。ペチギは、「歌詞は憂鬱でも、どこかユーモアを含ませたかった」と話し、「楽しいが、聴いていると考えさせられる歌」と紹介した。

一方、収録曲の「よろしく」では、ありふれてつまらない、と思っていた恋愛の曲を歌うことに挑戦した。「みんなが歌っているような恋愛の曲は歌う気がなかった」と言っていたぺチギが、初めて披露する“ペチギの恋物語”になる。ペチギは、「『こんな僕だけど、よろしく』という内容で、恋愛を始めた頃の新鮮さが感じられると思います」と話した。

ペチギの歌には、ハングルと英語が混ざっていない。99.9%の歌詞がハングルで、曲名も同じだ。特にラップの場合は、英語を使用せずに書く方が難しいほどだが、今後もこのスタイルは貫くそうだ。「(ハングルと英語の混用で)おかしい単語がいっぱい作られた」と話し、「簡単ではないが、誰かがこのスタイルを守らなければ」と所信を表した。


ヤン・ヒウン、イ・ムンセ、キム・グァンソク…“レジェンド”の足跡を辿りたい

ブランクは、二人をさらに結束させることとなった。岩寺洞(アムサドン)の自宅から地下鉄で弘大(ホンデ)の練習室に向かっていた時代、公演のためのグループ「ペチギ」を作ったその頃から今まで、二人はいつも一緒だった。変わらぬ関係を続かせたのは、“ほどよい距離感”だと言う。プライベートは尊重しあい、音楽においては“一人だけの想い”はあり得ない。「ペチギ」という名前でリスナーが聴く音楽は、二人の趣向とセンスがどちらも盛り込まれた曲だ。

2011年、Leessang(リッサン)とDynamic Duo、Buga Kingzなどが活動し、それに続くのがこのペチギだ。ペチギは自分たちならではの武器は、との質問に対し、「メッセージと歌詞」と答えた。ヤン・ヒウン、イ・ムンセ、故キム・グァンソクの歌を通じて、“歌詞に盛り込めないテーマはない”ということがわかったため、そして自分たちもそれに励まされたため、ペチギとしても「他人を励まし、共感を得る歌が作りたい」と語った。

「ヤン・ヒウンさん、イ・ムンセさんの歌を聴いて、1曲1曲が時代を抱えているような感じがしたんです。僕たちが生まれてもいない時代の歌なのに、今聴いても励まされます。僕たちがあの方たちのように“レジェンド”になることはできないと思いますが、音楽の方向や足跡を辿ることはできると思います。以前は、ポップやトレンディーな音楽を聴いて楽しみましたが、近頃は1970~80年代の歌、または1990年代の歌を聴いて、名曲だと感じるんです。今では到底真似できない、その時代の感性が盛り込まれているんです」(ムウン)

「ステージが懐かしく感じられた」という二人。彼らは、「いつしかデジタル音源だけを発売する時代になったとしても、僕たちはそれでもCDを出すグループでありたい」と話した。5曲を収録したミニアルバムに続き、夏が過ぎたらもう1枚アルバムをリリースするとも言った。「探してみれば、弘大でも、仲間の公演でも、僕らを見かけると思います」との言葉と一緒に。

記者 : イ・オンヒョク