「屋根部屋のプリンス」うまく笑いを取るユチョンの演技

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「千年の愛」との決定的な違い…課題も残る

写真=SBS
通常ならこそばゆく聞こえるセリフも彼が言うとどこかが違う。「サイダーください。いくらですか?」という愛嬌のある言葉も、「口を引き裂けば、その口を閉じるのか」という怒鳴り声も妙な説得力がある。300年を超える“タイムスリップ”というファンタジー・ジャンルで、キャラクターたちの現実にはありえない感情をそれらしく伝えるのも俳優の役目である。

JYJのユチョンが出演するコメディドラマでの演技は、まさに水を得た魚である。朝鮮時代での皇太子イ・ガクから現在のヨン・テヨン、過去から現代にやってきてドタバタ騒ぎを繰り広げるイ・ガクまで、それぞれ違う個性を表現するユチョンの演技が軌道にのり、SBS「屋根部屋のプリンス」の視聴率も上がりつつある。

初日の放送こそ9%(AGBニールセン・メディアリサーチ全国基準)でスタートした視聴率は、29日の放送では11.4%となり着実に上昇している。期待されスタートを切った裏番組の「キング~Two Hearts」が16%代でスタートして14.6%で低迷し「屋根部屋のプリンス」との競争が本格化している。

その中心には、もちろん主役のユチョンの存在がある。彼は、皇太子妃の死に嗚咽する姿や恋愛とコメディを行き来する多彩なキャラクターを、難なく演じ分けている。では、ユチョンの存在感をさらにアップさせるこの“タイムスリップドラマ”の魅力はどこにあるだろうか。


「屋根部屋のプリンス」にはない「千年の愛」の荒唐無稽さ

「私が南扶余の姫プ・ヨジュである」

いまだにガールズグループGirl’s Dayのメンバーがパロディをする伝説の名台詞を覚えているだろうか?今から9年前、ソ・ジソブがソガンジ(ソ・ジソブのソにかっこいいという意味のガンジをつけたソ・ジソブのあだ名)と言うニックネームを得る前のあの時代。SBSの「千年の愛」というファンタジー・ドラマで、まだあどけない演技のソン・ユリが吐いた名セリフである。

このドラマも“タイムスリップ”して古代の扶余時代から現在のソウルに不時着してしまったお姫様をめぐる愛とアクションを交えたファンタジー・ドラマだった。しかし、90年代に流行していたコメディ番組にも及ばない描写や、当時としては克服しがたかったファンタジーへの馴染みのなさにより、斬新な試み以上の足跡を残すことはなかった。もちろん、ソン・ユリの美貌は論外であるが。

それから10年が経った今「屋根部屋のプリンス」を見て、タイムスリップから生まれる様々なエピソードに「これはとても見られない」という人はそうはいないだろう。それもそのはず、日本のドラマ『JIN-仁-』がソン・スンホン主演のドラマでリメイクされる予定であり、チ・ヒョヌ、ユ・インナ主演の「イニョン王妃の男」も朝鮮時代を背景に過去と現代を行き来する設定である。

20~30年を超えるファンタスティックな設定は、これまで映画「お姉さんが行く」やドラマ「人魚姫」のような映画などでしばしば題材にされてきた。その分、現実的な傾向が強い韓国の観客や視聴者も、ファンタスティックな設定の“タイムスリップ”を題材にしたドラマを抵抗感なく受け入れるほどの多様性が出来たという意味でもある。もちろん、ファンタジーやフュージョン時代劇の全盛期がひと役買ったことは否めない。

折を見て登場した「屋根部屋のプリンス」はこのような雰囲気を先取りしたと言える。しかも、時空を超えた登場人物が経験する混乱は、ジャンル的にコメディとなる。「屋根部屋のプリンス」の脚本家イ・ヒミョンはこれに満足せず、皇太子妃の死と輪廻というミステリーの要素を混ぜてドラマをさらに斬新なものにした。意図せぬコメディとなった10年前の「千年の愛」には時代の流れを感じるほどである。


俳優ユチョン、お膳立てされたドラマにうまく乗る

このようにきちんとお膳立てされたドラマに、そのご飯とおかずを美味しくいただく主人公は欠かせない。「トキメキ☆成均館スキャンダル」「ミス・リプリー」で確かな演技力を披露したユチョンのイ・ガクとヨン・テヨンのキャラクターは、外見だけを見ると、前作の時代劇の貴公子と財閥2世を連想させる。

しかし、ここにタイムスリップという前提が加わると、ユチョンが演じるイ・ガクは、子供のようにヨーグルトや生クリームに熱狂する一方で、皇太子特有の堅苦しい語り口が妙な“化学反応”を起こす。おかげで、イ・ガクのキャラクターは韓国ドラマ史上で唯一無二の存在感を得ることとなった。

さらに、第4話の終わりのころには、ヨン・テヨンとしての自覚と変身が予告された。パク・ハ(ハン・ジミン)とのロマンスとともに、自分の運命をめぐる秘密を自ら解き明かしていく姿が期待される。複雑な設定による第1話の混乱ぶりがコメディに転じる頃、さらなるどんでん返しを予告されたのである。

「屋根部屋のプリンス」の関係者も「朝鮮時代からタイムスリップして現代にやって来た皇太子というキャラクターは現実味がなく、心配していた部分だった」としながら「ユチョンがいい演技をしてくれて、視聴者が皇太子イ・ガクの状況についてより共感して親近感を持ち、それが視聴率の上昇につながったのではないか」と分析した。


イ・ガクがプ・ヨジュにならないことは確か

その分「屋根部屋のプリンス」はファンタジー・ジャンルとしてのドラマティックな展開が充実している。ユチョンの安定した演技が好評を受けているのはもちろんである。“タイムスリップ”を題材にしたドラマが相次いで出ている中、スタートを切った「屋根部屋のプリンス」の成功のカギを握るユチョンが「トキメキ☆成均館スキャンダル」ほどの人気を確保できるだろうか。

確かなのは、彼が演じるイ・ガクが「千年の愛」のプ・ヨジュになる可能性は高くないということである。同じ題材のドラマで、過去へとタイムトラベルをする医師役を演じる俳優ソン・スンホンは今緊張しているのかもしれない。

ただ、ヨン・テヨンとパク・ハのライバルであるヨン・テム(イ・テソン)とホン・セナ(チョン・ユミ)の典型的な悪役キャラクターが回を重ねるごとに強くなるということが、まだ課題として残されている。「キング~Two Hearts」との対決で、このファンタジードラマの成績表はどんなものになるか期待したい。

記者 : ハ・ソンテ